withコロナで田舎暮らしへの関心が高まる? 移住に失敗しないために自治体、希望者に求められること
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 「感染リスクが低そうだし、リモートワークでいいなら田舎に住みたい」「時給自足できれば人との接触もなく穏やかに暮らせそう」「地方は理想だよね。理想郷。計画してみるか」。新型コロナウイルスによって、これまでと同じ生活がままならない中、田舎暮らしを真剣に考え始めている人たちが現れ始めているようだ。

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■「ワークライフバランスを見直すきっかけに」

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 「都会の男性は大阪にいた頃の自分だ。どっちが良い・悪いではなく、仕事に不満がなくても“果たしてこれって幸せなのかな”とかふと思う時があると思う」。

 総務省の地域力創造アドバイザー・泉谷勝敏氏は、画面を2分割し、ある男性が都会と田舎で暮らす一日を同時進行で描いた動画『回帰』を制作した。都会暮らしの男性がコンクリートジャングルをあくせくと外回りしている頃、田舎暮らしの男性は畑でのんびりトマトを収穫、自宅でリモートワーク。日が暮れ、都会暮らしの男性がオフィスで残業と悪戦苦闘している頃、田舎暮らしの男性は友人と釣り上げた魚で悠々と晩酌を始める…という内容だ。

 自身も都市部から人口約2万人の山口県・周防大島へ“回帰”、移住希望者のサポートや移住フェアなどを手掛けてきた。最近では、コロナの影響で相談者が増えているという。「暮らし方、生き方、ワークライフバランスを見直すきっかけになっていると思う」。

■「大きな流れにはならない可能性もある」

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 一方、一橋大学大学院で地方移住を研究、移住促進団体KAYAKURAの代表も務める伊藤将人氏は「総務省の調べによると、今回と同じような社会的危機だった東日本大震災が起きた2011年には地方への転入者が増加したが、その後は逆に地方から東京圏から地方への転出者数は減少、むしろ転入者がなだらかな増加傾向にあるという状況がある。今回の場合、コロナが落ち着くまでは、そもそも地方へ足を運んで移住先を探すともできない。今は熱が高まっていると思うが、冷めてしまい、一部の人が移住しても大きな流れにはならない可能性もある」と話す。

 事実、「東京都在住者の今後の暮らしに関する意向調査」(2018年10月)で、実に38.4%が「移住する予定・検討したいと思っている」、61.6%が「移住を検討したいと思わない」と答えている。「いつごろ移住したいか」との質問には、1.2%が1年、6.1%が5年以内、9.4%が10年以内と答えているが、理想と現実は違うようだ。

 「実際に行動できる人は少ないということだ。各都道府県が大都市から入ってくる人の数は調べているが、出ていく人の数はあまり見ていないので、“成功”が何割か、ということもわからない。また、“地方”と一括りにしてしまうと現実を見誤ってしまう。中核都市とかいわれるような大きな都市から条件の不利な過疎地や限界集落もあるし、一度都市に移住し、さらに限界集落的なところに移動する人もいれば、逆に田舎暮らしに憧れたが無理だと感じ、でも東京は嫌だということで都市にいく流れもある」。

■「移住前に交流する機会を作ってくれた」

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 では、移住に成功した人はどのように考えているのだろうか。

 東京都千代田区出身のウェブコンサルタント・ちなつさん(36)は昨年、夫(36歳)、長男(7歳)、長女(4歳)と共に愛媛県西条市に移住した。目的は“のびのび子育てするため”。住まいは築60年の古民家。7LDKだが、家賃1万円だ。マスクなしで出歩くことができ、猿の群れに遭遇するような山の中で子どもたちと思う存分に触れ合う生活。その模様を、YouTubeチャンネル「5人家族の移住ライフ」で発信している。

 “withコロナ時代”に暮らしついて、「ライブやイベントなど、東京でしか見られなかったものがコロナウイルスで無くなってしまったので、住んでいるメリットもほぼ無い気がする。そういう意味では、地方回帰が進むのではいか」と話していたのが、2ちゃんねる創業者のひろゆき(西村博之)氏だ。

 ひろゆき氏が「若い人が地域の作業や雑用を手伝うのが当たり前になっていて大変という話も聞くし、村八分にされたということもあるようだ。伊藤さんの周りではどうか」と尋ねると、「ありがたいことに、そういうことはない。市が移住前に交流する機会を作ってくれたこともあって、皆さん、最初からすごく優しい。小学校や幼稚園のお下がりをたくさん頂いた。地域の集まりや掃除は出るように心がけているが、嫌々出ているという感覚はないし、出られない時は“すみません”と言えば済む」と答えた。

■「個人主義では難しい」

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 東京と出身地の福井に拠点を持つ若新雄純・慶應義塾大学特任准教授は「他人に干渉されない東京は、個人主義的な人にとっては生きやすい場所だと思う。しかし、100年ちょっと前までは、ほとんどの人が農民。田舎では共同体の意識が脈々と受け継がれていて、ゴミ捨てなどは行政と集落が役割分担をしていたりする。消防団もそうで、その飲み会のために区費を払っている。僕が生まれ育った集落に大阪から一人で移住してきて農業をしている人がいるが、とにかく消防団の雑用を全部やり、地域に溶け込んで成功できた。そういう文脈が理解できないと、“そんなの法律で決まっているのか?となってしまう」と話す。

 「今までの行政は、コミュニティーを作るというよりは、具体的な条件を提示して、ただ“来てください”というだけだった。しかし、移住者は新たなコミュニティーに入らなければいけないし、人間関係を作っていくことから逃れられない。僕が移住政策に関わる中で成功した例を見ても、収入や家の問題よりも、住民が“移住者も面白いんだよ”と言ってくれるような土壌がある場所かどうかだったと思う」。

■自治体、希望者に求められることとは?

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 宮城県七々宿町では「20年住めば土地・住宅を無償譲渡」、鹿児島県三島村では「一世帯に30万円または子牛1頭、夫婦世帯に50万円または子牛1頭、3年間の生活助成金」など、地方自治体は様々な移住・定住支援を用意しているが、前出の伊藤氏は「こうした取り組みがあまり知られていないし、国が主導している地方創生起業支援事業、地方創生移住支援事業もあるが、移住直前で10年間、通算5年以上東京圏に住んでいなければならないとか、申請後5年以上継続して自治体に住む意思があること、移住先で指定の企業に就職するか自ら起業することなどの縛りがどこもある。そのため、なかなかマッチしていないということもあると思う」と指摘する。

 また、移住希望者の心構えとして「どうしても人と関わらなければ生きていけない部分が多いので、いわゆる“コミュ力”は確実に求められると思うし、苦手な人にとっては苦痛だと思う。ただ、今後はそこがリモートワークやテレワークで、という話にもなっていくのではないか」と話す。「リモートワークができる職種があることがわかれば、移住に興味を持ち、行動する人も出てくると思う。ただ、それは主に若者層だ。その点、地方自治体としてはリモートワークのできない職種で来てもらって、人口減少による人手不足を補ってほしい。そこにミスマッチングが起こってくるかもしれない」とアドバイスする。

 「最近では国が制作したものも含め、移住に関するウェブサイトが整備され始めているので、まずはそういうところで条件を元に自治体を絞り、移住体験ツアーなどを利用し、一度でもいいから行ってみることが重要だ。自治体が予算を取ってやっているので、先輩移住者の話を聞けたり、泊まりなどがなければ無料だったりと、基本的に受け入れ態勢は万全というところも増えている。また、リスクを減らすために家は建てないとか、定住を前提としないような移住を考えている人も増えている。そこで“お試し住宅”みたいな制度や一時的に住んでみて、うまくいくと思ったらどうぞ、というような態勢を整え始めている自治体はうまくいきやすい」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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