悲願を達成した勝利の瞬間、深々と頭を下げた。負けた時は潔く、勝った時は相手への敬意を表し、より深く。藤井聡太新棋聖(17)は対戦相手に、そして将棋に対して礼を尽くしてきた。通算185回目となった勝利のお辞儀。目の前にある盤よりもさらに低い位置まで下げた頭は、日本中を驚かす最年少タイトル獲得へと導いた謙虚さを示す、何よりの証拠だった。
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 世の中の負けず嫌いが集まった、と言ってもいいようなプロの将棋界。当然、藤井棋聖も筋金入りだ。幼少期から、将棋に負けると大泣きして悔しがったというエピソードは、これまで何度も語られている。プロ入りしてからも、あどけなさが残る中学生時代は、対局中に自らの太ももを強く叩いたこともあった。今でも自身の劣勢、敗勢を悟った時は、がっくりと肩を落とす。プロ入り4年目で、わずか34敗(185勝)しかしていないが、がっくり過ぎるほど“がっくり”する様は、ファンにはお馴染みにもなっている。また、はっきりと敗勢になってからも、すぐに投了することはない。むしろ長い。大逆転を狙うというよりも、敗戦も受け入れるのに時間がかかるのだろう。詰将棋でも随一の能力の持ち主であることから、最終盤で自分が負けていることは、一目見ればわかる。それだけ「負ける」ことが受け入れ難いのだ。