「自由民主主義はアメリカに追従することではない」TikTok“制限案”、米中対立に巻き込まれる日本
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 自民党の議員連盟が、中国企業が手がけるアプリなどの利用制限を政府に提言する方針を固めた。名指しされた中国の動画投稿アプリ「TikTok」は声明を出し、個人情報を中国政府などに渡すことはないと主張している。

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 「TikTok」は、累計ダウンロード数約20億4300万を超える世界的に有名な動画投稿アプリ。IT企業「バイトダンス」(本社・中国北京市)によって運営されている。

 TikTokを巡る世界の状況を見てみると、インドは今年6月末にTikTokの使用禁止を発表。ダウンロード数約1億8500万のアメリカでも、中国へのデータ流出懸念から使用禁止を検討している。また、ダウンロード数約2900万の日本では、現在、政府は静観しているものの、米国に協調を求められる可能性もある。

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 今回、法改正も視野に中国発のアプリ利用の制限検討を進めようとしている自民党。ITジャーナリスト・三上洋氏は「TikTok自体の情報収集は、例えば、位置情報やWi-Fi、それからアドレス帳や電話番号、SNS情報などが収集される。問題は使っているアプリの企業の中で済むものなのかどうかということ。中国企業の場合、そのアプリを運営している企業だけではなく、国家情報法に基づいて中国政府側が情報を知る可能性があるんだということは認識しておくべき」と語る。なお、TikTok側は「中国政府にユーザーデータを提供したことはなく、また要請されたとしても提供することはありません」と情報流出を否定している。

 『情報武装する政治』(角川学芸出版)の著者でもある東京工業大学准教授の西田亮介氏は「中華系企業と中国政府の距離が近いのはその通りだろう。また、アメリカと日本の距離が近く、アメリカの対中姿勢の変化に合わせて、日本もアメリカへの追従を求められているか、自発的に追従しようとしているようだ」と日本の現状を示唆する。

 悪化の一途をたどっている米中関係。米トランプ政権によるヒューストンの中国総領事館の閉鎖を受け、27日、中国も四川省成都の米総領事館を閉鎖。新型コロナを巡る騒動をはじめ、東シナ海や南シナ海でも軍事的覇権を争っている。

 米中関係を踏まえ、西田氏はTikTok制限の動きに「いきなり規制を法制化したり、政府が直接個別のアプリの妥当性を、しかも実際に問題を起こす前に判断するのではなく、まずは適切な在り方をきちんと示したり、第三者委員会や審議会のような場で妥当性を精査する仕組みを考えるのが良いのではないか」と自身の見解を述べる。

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「TwitterやYouTubeなど、アメリカ発のアプリは政府から距離を取っていると言われているが、エドワード・スノーデン事件などを見ると、同盟国を含む世界的な監視網を構築しているようだ。今、中国発のアプリはたくさん存在する。ソフトだけではなく、スマートフォンなどのハードや部品にも関わってくるだろう。ここのサービスが本当に人々にとって好ましくないものなのかどうかは、さまざまな観点や有識者、企業等で議論しながら、妥当性をきちんと検討すべきではないか。安全保障上の問題と、表現の自由、営業の自由との兼ね合いはどうなのか等、慎重に精査しないと、日本が権威主義国家になってしまいかねない」(西田亮介氏)

 西田氏は、政府の判断で好ましくないサービスを停止できてしまうことについて「個人的には好ましくない」とコメント。中国が香港市民の基本的人権に制限を加える「香港国家安全維持法」の規制を挙げ、「自由民主主義が世界中で揺らいでいる。このとき、自由民主主義の礎(いしずえ)をしっかりさせておくことはとても重要。それは、単にアメリカの国益や動向に追従することではないはずだ」と語った。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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