「コロナに感染した生徒が退学」
「(陽性だった)店員は依願退職した」
これは新型コロナウイルスの影響についてSNS上で調べるとヒットするツイートだ。事実であれば見過ごせない内容。そこで事実かどうか確かめるため、『ABEMAヒルズ』はいくつかのツイートを追跡し、投稿者そして現地を確認した。
「保育士が自殺した」と名指しされた群馬県内の保育園を現地取材。投稿の真偽について園長は「今は元気で現場復帰しましたので、それは大丈夫です」と話す。さらに、その家族が自殺したという話も聞いてみると、「それもないですね。幸い、保険所や医療従事者の方などいろいろ方が手厚く補助してくれたので。そういう意味では、すごく心強く立ち直れてきたと思うんですよね。話を聞くと、そういう心のケアも含めて関係する人たちがすごくフォローしたんです」とのことだった。
普段から一生懸命、保育にあたっていたという保育士。復帰の時は、同僚だけでなく保護者も「待っていたよ」と迎え、元気に働いているという。園では消毒液だけでなく、玄関に画面認識型の体温計や消毒のための自動おしぼり機を設置するなど、感染対策を強化している。
「(陽性だった)店員が依願退職」という別のツイートについても調べてみた。投稿された百貨店に事実を確認すると、「(退職は)してないですね。いろんな噂が出ているということを聞いておりますけど、今私が聞いている範囲ではすべてが噂の中でしかないのかなと思っております」という回答。その従業員は現在、退院し自宅療養中で、退職もしていなかった。「(SNS上の話は)デマに近いかなと思います」。
「コロナに感染した生徒が退学」という投稿についても、学校からの回答は「退学は全く違う。元気に学校に来ている」というもの。退学の事実はなかった。
横行する“デマツイート”。なぜ投稿したのか、実際にツイートした人物に話を聞こうと試みたが、ほとんどのアカウントからの反応はない。取材拒否の中、1人だけ話を聞くことができた。「まさかデマだったなんてびっくりした。感染者が出た場所をよく知る人から、当事者から直接聞いたかのように聞いた。本当だと信じて、不憫だなと思いツイートした」。投稿した女性はしばらくしてツイートを削除し、今では反省しているという。
取材で見えてきたのは、ツイートよりも前に地元で広がった“噂”だった。社会心理学が専門の東京大学大学院の関谷直也准教授は、こうした噂が広がる背景について感染者本人が責められる風潮があると指摘する。
「この問題はただ単に噂を止めるとかそういうようなことがポイントではなく、ある意味感染してしまった人を非難するような社会の状況をいかに止めるか、いかに辞めさせるかということが大きな課題だと思う」
さらに、関谷准教授はメディアなど報道の在り方についても警鐘を鳴らした。
「感染した人に対する情報をどうやって公開していくのか、行政やメディアがどういう風に情報を出していくのかというところも、もう1回考え直す時期に来ているんだろうと思う」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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