SNSで増幅する“共感”、“いいね” テクニックやフォロワーを追求する社会で失われるものとは
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 「ウチの旦那も同じことします(笑)」「めっちゃ共感してストレス解消」「あるあるあるあるある」。

 片付けが苦手な夫への鋭いツッコミの数々を投稿が共感を呼び、フォロワーが85万人に達したInstagramのアカウントが書籍化された。「ただの一般人なのにこんななるんだと思ってびっくりだ」(gomi_suteroさん)。

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 近年、こうした“共感”をベースにしたSNS発の企画や商品が相次いでいる。マーケットリバー株式会社の市川祐子代表取締役社長は、エピソードや理念への共感を軸にした消費が加速すると予測する。「特に共感が増幅されやすいソーシャルメディアが物心ついた頃からあったZ世代(16~24歳といわれている)は、消費においても共感を軸にする。フェアトレードのコーヒー豆を好んで買ったり、プラスチック製品を減らしている企業で洋服を買ったりと、2020年代は共感が社会の軸の一つになっていくと思う」。

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 クラウドファンディングで多くの共感を得て開発されたという電子マネー「eumo」も、そうしたサービスの一つだ。決済後、店に対しギフト、つまりチップが送れるのが特徴で、特徴で、5カ月間の実証実験では、4分の1のユーザーが支払額よりも多くのeumoを店に払ったのだという。

■「世間のみんなが求めているのは僕ではなかった」

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 共感を追い求めることで、「助け合うことができる」「自分だけではないと安心できる」「結束が強まる」といったメリットがある一方、「様々な分断を生む」「SNSで他者との共感がズレると疎外感を感じる」「SNSでは共感されることに執着してしまう(されないとつらい)」といったデメリットも存在する。

 3年前に“モテたい・人気者になりたい”という動機からTwitterを始めたエッセイストでYouTuberのニャンさん(21)は、恋愛系のツイートを投稿してみたところ、「共感し救われた」と感謝された。「ぶっちゃけ“すき家”とか“サイゼリヤ”で充分楽しめるような人と付き合いたい。」「【速報】今年は“平成最後の夏”らしい。今年くらいは好きな人と夏祭りと花火を楽しみたい。」など、“1人でも多くの人から共感される投稿”を追究。フォロワーは68万人、書籍化は2冊になる。

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 主語をなくす、小学3年生が分からない漢字は使わない、“イライラ”“ムカムカ”などわかりやすい表現を使う、ネガティブ要素を入れる…。しかし投稿を続けていく中で、疑問も感じるようになっていった。「醒めた心もありつつ、人気者になりたいからやっていたのかもしれない。みんなのイメージと、本来の僕とのギャップが苦しい時期があった」。

 考えた末に、ニャンさんはSNS投稿の方針を変更、“1人でも多くの共感を得ること”から“自分のファンを増やすこと”を目指すことにした。その結果、Twitterのフォロワーは68万人から63万人へ、Instagramは26万人から19万人へと減少してしまった。「共感される文章で人気が出て、褒められることは確かに嬉しかった。だけど世間のみんなが求めているのは僕ではなく、癒される文章だと思った。僕は僕自身を求めて欲しいと思って、今はあえて主語を入れ、自分の意見を言うように変えた」。

■「見せ方、切り取り方が上手い人ほど勝ちやすい世界」に?

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 就活サイトワンキャリア取締役の北野唯我氏の『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)の中で、“共感性はウソをつく”。「“感情移入”こそが共感性の罠」「共感するかは“物語のどこを見せるか”によって決まる」と指摘している。

 例えば万引きという行為そのものについては“悪い”と感じても、貧乏で食べるものがなく、止むを得なかったという背景を知った途端、“共感”してしまう。つまり、物語のどこを見せるのか、見せ方、切り取り方が上手い人ほど勝ちやすい世界でもあるということだ。

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 普段からクラウドファンディングで共感したサービスを支援しているという池澤あやかは「クラウドファンディングは、“お金が返ってこなくもていいや”くらいの気持ち。ただ最近では広告代理店の資料にも、起用する候補者のSNSのフォロワー数が入っているし、“こうやったら増える”というノウハウを学んで、増やすことに執着している人を見かける」と話す。

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 ドワンゴ社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「共感をベースにしてサービスの利用者が決まっていくというのがインターネット時代だと思う。動画サービスが典型だが、バズって一時的にアクセスは増えたとしても、多くは居着かず、演者への共感がある人だけが残っていく。それは現実社会でも同じで、ネットビジネスはそれを“見える化”しただけだ。逆に言えば、悪口も同じだ。みんな悪口を言うのが大好きで、いろんなとこで言っていた。ただそれが見えなかっただけだ」と指摘する。

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 一方、作家の乙武洋匡氏は「テレビ番組のキャスティングでも、SNSのフォロワー数が重要になっているらしい。しかしそっちに引っ張られてしまうことで、本当に自分が伝えたいことを飲みこまないといけなくなることもあると思う。そして僕の場合は障害者として生きてきたので、健常者の方とは見ている景色が全く違うし、価値観の面で相入れないこともあるので、僕の考えていることが必ずしも多くの方に共感されるわけではない。だから“共感されることが大事だ。それがビジネスで必須だ”という社会になってしまうと、マイノリティとしてはしんどいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

"共感"が新規ビジネスの柱に...SNSで「いいね」を稼ぐメソッド
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