「子どもにお金をかければ経済はよくなる。日本社会は子どもに冷たすぎる」不払い養育費の立替などで脚光を浴びる泉房穂・明石市長
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 不払いとなっている養育費を立て替える制度など、子育てに関する独自政策で注目を集めている兵庫県明石市の泉房穂市長(57)。

 「理由はシンプルだ。三十数年前の教育学部生の頃、“日本ほど子どもにお金を使っていない国はない、子どもを応援しない国に未来はない”という内容のレポートを書いたことがあるが、その状況は今も変わっていない。私たちが暮らす日本社会は、子どもに対して冷たすぎる。だから私は市長就任後、子どもにかける予算を倍以上、子どもに寄り添う職員を3倍以上にした。それでも、他の国並みになっただけだ」。

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 現在3期目を務める泉市長はNHK職員、国会議員秘書を経て弁護士・社会福祉士となり、2003年には衆院議員に初当選、2011年には明石市長選に初当選を果たした。ところが昨年2月、道路拡幅工事をめぐる“暴言騒動”で辞職。しかし市民の後押しもあり、出直し選で圧勝したことが話題を呼んだ。

 2日の『ABEMA Prime』では、子ども政策に情熱を燃やす泉市長が生出演、その想いを語った。

■「泣いている子どもがいるなら、泣き止むようにしてあげるのが行政の役割」

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 泉市長は就任後、子ども部門の予算を倍増させる一方、下水道整備計画の予算を大幅に削減、職員給与も一律4%カットするなどの大胆な措置を講じている。

 「当初、市にお金はないものだと思い込んでいたが、それは誤解だった。無駄遣いをやめれば、子どもや家族、困っている方々への支援は十分にできる。優先度を決め、残ったお金でハード整備を行えばいいだけで、難しいことは何もない。1年目には市営住宅の建設を全て中止したし、ゲリラ豪雨対策でもある600億円の下水道整備計画を150億円にする代わりに、要配慮者が早い段階で避難できるような支援策を充実させることにした。結果、私が市長になったら黒字財政になり、70億まで減っていた貯金額を115億にまで積み増した」。

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 去年11月には、全国平均で不払いが75%以上に達している養育費について市が最大5万円まで立て替え、同時に取り立てを行うという条例の制定を表明した。すでに7、8月で25人の子どもたちを対象に、試験的に導入されている。

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 「泣いている子どもがいるなら、泣き止むようにしてあげるのが行政の役割だ。職員が取り立てを行うことになるが、もともと市営住宅の滞納に対する差し押さえなどを行っているので、難しくはない。市が“払ってくださいよ”と言っただけで支払いが始まったケースもある。市には弁護士資格を持つ職員が12名いるので、裁判も得意だ(笑)。粛々とやればいい。全てを回収するのは無理だろうが、一定程度は回収できると思う。こういったことも、ほとんどの国ではすでに行われていること。韓国でも立て替え払いがあるし、アメリカでは罰則も設けられている」。

■「6年連続で税収増だ。子どもにお金をかければ経済は良くなる」

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 それだけではない。「すべての子どもたちをまちのみんなで本気で応援すればまちのみんなが幸せになる」を掲げ、“5つの無料化”も推進している。「対象者に所得制限は一切かけない。親にお金があろうがなかろうが、子どもは街の子だからだ。将来の税収の担い手になるし、クサい言い方だが、みんなで応援することが街の未来につながるからだ」。

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 このような施策もあいまって、泉市長の就任以来、市の人口は右肩上がり。中でも子育て世代の人口が大きく増加。合計特殊出生率(2019年)は全国1.36、兵庫県1.41に対し、明石市は1.70を記録している。

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 「最近では関西一円からお越しいただけるようになった。2人目、3人目を生みたい方も来られるので、出生率も一気に上がった。“住みたい街ランキング”でも急上昇中だ。明石市には大学も企業も多くないので、進学や就職で一旦離れてしまうのはやむを得ない。それでも結婚後、子どもを1人作った後に帰ってきてもらって、家族が4人、5人と増えていくようなストーリーを描いている。よく“歳出額が増えるでしょう”と聞かれるが、選ばれる街になり、人口、赤ちゃんが増えれば経済が回り始める。おかげで6年連続の税収増だ。子どもにお金をかければ経済は良くなるということだ」。

■「困っている市民に手を差し伸べるのが行政の使命・役割」…コロナ禍でも

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 明石市は、コロナ禍への素早い対応も評価されている。緊急事態宣言の全国拡大が決まった4月16日には「3つの緊急支援策」を発表。個人商店に100万円、翌週には賃料2カ月分の緊急支援。ひとり親家庭にはさらに5万円を5月分の児童扶養手当に上乗せするなど、施策を相次いで打ってきた。

 「私はいつも市役所の近くの商店街などで昼食をとっているが、“3月分の家賃が滞納になっている。4月も払われへんかったら店を閉めなあかん”など、行く先々で悲鳴を聞いた。何とかしないと、と思った。4月20日に臨時議会を開いてもらい、おかげさまで、全会一致で補正予算を通していただいた。翌日21日には受付と審査を開始し、3日後の24日には現金100万を振り込んで、4月分の滞納を解消できるようにした。通常では3月議会のあとは6月議会だが、4、5、7月も臨時市議会を開き、その度に補正予算を通していただき、次々政策を打ってきた。溺れかけている市民がいるのだから、国に“助けていいか?”と聞く必要はない。浮き輪が無かったとしても、近くにあるものを投げてでも命を助けるのが政治。“4月の家賃を間に合わせる”という目的のために議会を開いていただき、職員を配置して手続きをしただけ。やろうと思えばどこでもできる」。

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 その間、政府は定額給付金をめぐる議論が紛糾するなど、対応の遅れも指摘されていた。「明石市では家賃支援を100万にしたが、国は金額も少ないし、遅い。しかも要件が厳しいので、国民のニーズには合っていないと思う。やっぱり、どっちを向いて政治をやるかだ。明石では市長への意見箱がある。紙でもいいしメールでもいい。私は全て目を通している。最近も、“あそこのトイレの石鹸がない”というのが来たので、すぐに置いてもらった」。

■「やりたいことがまだ2割も実現できていない」

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 先月19日には、国民民主党の前原元外務大臣らと共に「新しい国のかたち協議会」にて、「地方でもできることはあるし、むしろ地方からスタートした方が望ましい。新しい政治を地方と共に」と、地方分権、地方の力について熱弁した泉氏。“明石モデル”とも言うべき子ども政策は、他の自治体にも広がりつつある。

 「おかげさまで、明石周辺だけでなく、他の自治体からの視察も殺到している。国の方でも幼保無償化が実現したように、議論が始まった。明石の政策を、全国の政策にしてほしいと強く願っている。それが実現すれば、出生率は上がるに決まっている。2人、3人と生みたい方はたくさんおられるわけで、自然にしておけば出生率は上がるはずだ。それができないのは、お金の問題と、自分や子どもが病気になるなど、“もしも”の時の不安があるからだ。それを政治が解決してあげればいいだけだ」。

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 衆院議員も経験した泉市長。再び国政に戻るという考えはあるのかと答えると、「私は子どもの頃から市長になりたかったので(笑)。子ども施策以外にも、障害者が全ての市内の飲食店に車椅子で入れる店作りや、認知症の診断費用の完全無料化などを進めているが、やりたいことは他にもいっぱいある。まだ2割も実現できていないくらいだ」と話した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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