「プロ」と名がつく世界は数あれど、毎年新たにプロ入りできるのはわずか数人という、とりわけ狭き門なのが将棋界。現役棋士は160~170人ほどを推移するが、アマチュアから見ればその誰もが天才レベルの強者だ。ただ、そんな棋士の中でも突出した成績を上げる者がいる。9月19日、将棋界のレジェンドとも言われる羽生善治九段(49)が、タイトル100期の大記録を達成すべく豊島将之竜王(30)への挑戦権を獲得した。この事態に若手棋士・阿部光瑠六段(26)は思わず「将棋界は人間が少ない」と口にした。もはや人にあらずといった強さを持った棋士たち。これを知ったファンからは早くも“名言認定”された。
【動画】将棋界の新名言「将棋界は人間が少ない」(11時間47分ごろ~)
阿部六段が「将棋界は人間が少ない」ともらしたのは、羽生九段が挑戦権を獲得した竜王戦挑戦者決定三番勝負の第3局を解説していた時のこと。同じく解説の深浦康市九段(48)と対局後の感想を語り合っていた。歴代最多のタイトル99期を記録し、まもなく50歳を迎える羽生九段がタイトル100期のかかるタイトル戦出場を決めたことに、深浦九段は「本当に人間なんでしょうかね」と、その強さについてユーモアを交えて語った。これに反応したのが阿部六段の言葉だ。人とは思えない思考の深さ、集中力。同じ棋士ではあっても、そう思えるからこそ反射的に出た。
思えば、人外の強さを誇る棋士は、最近でも出現した。藤井聡太二冠(18)だ。デビュー以来の29連勝というとてつもない記録を引っさげ、その後も最年少記録を次々に樹立。デビューから4年を待たずして最年少でタイトルを獲得すると、一気に二冠・八段までになった。広くは「天才」と称される棋士だが、藤井二冠もまた「人」という枠では表現しきれない能力の持ち主だ。
古くから、将棋界を表現する言葉として「鬼の棲家」というものがある。順位戦B級1組を指す言葉だ。「鬼」と呼ばれる実力者が揃っているという意味合いの言葉だが、将棋ファンならわかるとおり、その上にはA級がある。また、その先に名人位がある。鬼でなければ神か、それとも超能力者か。将棋界の頂点に立つのは渡辺明名人(棋王、王将、36)。羽生九段、藤井二冠と同じく中学生でプロ入りした渡辺名人もまた、神の域にいる。
ちなみにこの深浦九段と阿部六段の会話、コアな将棋ファンならピンと来るものもある。深浦九段の愛称の一つに「地球代表」というものがある。10年ほど前からネット上で使われていたものだが、今や本人も承知の愛称になった。宇宙から攻めてくる「将棋星人」から地球を守る役目を任されたから「地球代表」。では、将棋星人は誰か。そう、羽生九段であり藤井二冠だ。とはいえ、深浦九段もタイトルを3期獲得し、順位戦A級にも10期在籍。阿部六段のコメントに「我々みたいな人間は困りますね」と笑ったが、人間だとしても限りなく頂点に近い人間だと言える。
これからも続いていく鬼や神や宇宙人たちの戦い。「人間が少ない」ともらした阿部六段も、天才肌の棋士として知られ、トップクラスの棋士たちに勝利することもある。今後、さらに成長を遂げた時、阿部六段は「地球防衛軍」の一人に数えられるのか、それとも「人間ではない」方にカウントされるのか。
(ABEMA/将棋チャンネルより)