脱・ネガティブ力士で才能開花 熊本出身初優勝の正代、優勝争いで作り上げた強メンタル
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 過去2人の横綱を輩出した熊本県だが、優勝力士はこれまでいなかった。優勝制度が制定された1909年(明治42年)6月場所以来、110余年で正代が同県出身力士として初めて故郷に優勝をもたらした。

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 28歳にして初賜盃を手にすることになったが早くから期待はされていた。熊本農業高3年のときに国体少年男子の部で個人優勝。東京農業大2年で学生横綱に輝くと翌年の学生選手権は惜しくも2位で2年連続学生横綱の偉業はならず、同年の全日本選手権でも決勝戦で遠藤(現幕内)に敗れてアマチュア横綱のタイトルも逃した。それでも実績は十分。大学4年時はビッグタイトルには恵まれず、角界入り後は前相撲からスタートしたが所要9場所というスピード出世で関取昇進を果たした。

 新十両会見で対戦してみたい相手を問われると「誰とも当たりたくない」と発言。以来“ネガティブ力士”というキャラが定着してしまった。十両はわずか2場所で通過。2016年(平成28年)一月場所は新入幕で10勝をマークして敢闘賞を受賞。その1年後には新関脇に昇進するなど順調に番付を駆け上がった。柔軟な体つきに差し身のうまさも持ち合わせ、将来を大いに嘱望されていたが、その後はしばらく平幕で燻ることになり恵まれた素質は“宝の持ち腐れ”状態にあった。胸を前に大きく突き出し、顔は天井を向いて当たる立ち合いに低迷の原因を求める声が少なくなかったが「癖だから直らない」と改善されることはなかった。

 転機となったのは昨年、十一月場所。平幕下位ながら11勝して3年ぶりの三賞となる敢闘賞も受賞すると今年一月場所は千秋楽まで優勝を争って13勝。関脇に返り咲いた翌三月場所は8勝を挙げて三役として自身初の勝ち越し。先場所も最後まで優勝の可能性を残して11勝。誰も真似できない独特な立ち合いの威力が増したことに加え、2度の優勝争いの経験によって身についた重圧をはねのける強いメンタルも初優勝につながったのだろう。

 いつの間にか“ネガティブ発言”が聞かれなくなったのは、三役で結果を残した自信がそうさせたに違いない。場所後の大関昇進も事実上決めた男は若くして頭角を現して以来、ようやく持てる才能を開花させた。

正代、初の優勝
正代、初の優勝

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