これは「体罰」ではなく「暴力」。厳しい対応で臨むべき…ケガをさせても再び教壇に立ててしまう教育界に苦言
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 学校内の道場で2人の男子生徒に対し柔道の投げ技や寝技をかけ、1人に背骨を折る重傷を負わせたとして、宝塚市立長尾中学校の柔道部顧問の男性教師が逮捕された事件。宝塚市の森恵実子教育長は13日の会見で「被害を受けられたお子様には大きなケガと深い心の傷を与えてしまった。心から深くお詫びを申し上げる」と謝罪した。

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 道場の冷凍庫のアイスクリームを無断で食べたこと腹を立てた末の暴行。男性教師は男子生徒が失神すると頬を叩いて目覚めさせ、技をかけ続けたという。しかも、教員が「普段よりきつい練習をした」と説明していたため、学校の対応は遅れた。体罰だと認めたのは、保護者の指摘を受けてからだったという。

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 「当初は生活指導上の問題に対して厳しい指導をした、いつもより強い練習をした、というようなことを聞いた」「学校の初期対応がまずかった点が多かったと思うが、ケガの具合を十分に把握していなかった」(13日の会見での田中誠校長の説明)。

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 名古屋大大学院の内田良准教授は「柔道など、選手同士が接触するコンタクトスポーツの部活動中に起きた体罰というのは“たまたま練習の中で起きたことだ”と言い訳がしやすく、非常に見えにくい。今回の教師も、まさに指導の中で起きた、やむを得ないことだったと説明したのだと思う。また、まずは校長に、そして教育委員会に情報が上がっていくわけだが、そのプロセスの中で、子どものため、教育のための“指導の一環”、“行き過ぎた指導”、“たまたまちょっとひどくなってしまった”と理解され、途中で止まってしまうこともある」と説明する。

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 さらに男性教師は、生徒に対するビンタや頭突きで過去に3度の処分を受けていた。

 兵庫県教委では「NO!体罰」という教員向け資料を作っているが、再教育などのシステムはなく、本人の「アンガーマネジメントを受けた」との報告に対して内容・期間などを把握することはなく、口頭で感情のコントロールをするよう注意するに留まっていたという。

 折しも、わいせつ教員の再犯率が注目されており、文部科学省は先月、教師の処分歴の閲覧期間を大幅に延ばすことを決め、一度処分された教師への対応を厳格化した。一方、体罰については対応が遅れているようだ。

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 内田准教授は「体罰には常習性があるが、強権的な先生、威圧的な先生ほど、“部活動で子どもたちを引っ張り、成果を出した”“生徒が落ち着いた。生活指導がしっかりできる”などとして、学校の内外から高く評価されてしまう傾向もあるため、なかなか自覚することができない。わいせつの場合、2件に1件クビになっているが、体罰はごくわずかだ。やはり暴力は“必要悪”という空気、そして隠蔽体質がある。わいせつ同様、暴力も刑事責任を問われ、行政処分が下されるべきものだ」と指摘、警察が対応しやすい環境作りも求めた。

 5年前まで東京都の教育委員を務めていた作家の乙武洋匡氏は、「処分が圧倒的に甘い」と断じる。

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 「わいせつ事案については、たとえ生徒と同意があったとされるものでも“一発アウト”で懲戒免職になるケースが多い。しかし暴行事案に関しては歯や骨が折れているにも関わらず“注意”や“減給10分の1を3カ月程度で済んでしまう。私は“わいせつと比べて処分が軽すぎるし、世間が納得できないと思う”と主張したこともあるが、“そうすると、過去の事案に対して申し訳が立たなくなる”と言われた。現場の自浄作用にも期待したいが、それでは時間がかかりすぎる。そもそも、“体罰”という言葉の使い方の問題だ。やはりこれは刑事罰が加えられるべき“暴行”のはずだ。そして学校の中は治外法権ではない。そこをはっきりさせるためにも、保護者のみなさんには、学校ではなく警察に相談して、どんどん事件化してほしいと思う」。

 さらに乙武氏は「閉ざされた空間だからこそ、好きに動いてしまう部分もあると思う。これからは部活動の様子を保護者が自由に見られるよう、配信してみてはどうか。そうすれば、教師の意識も変わってくるはずだ」とも話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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