引退の元大関・琴奨菊、重傷負ってから初優勝 最後まで苦労と工夫の名大関
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 元大関で十一月場所は西十両三枚目の琴奨菊が11月14日の七日目の土俵に上がらず、翌15日に引退が発表された。15年ぶりの十両となった今場所は六日目まで1勝5敗。九月場所で左ふくらはぎを負傷してからは相撲に精彩を欠いていた。

【動画】琴奨菊、最後の一番 惜別の“琴バウアー”も(50分ごろ~)

 関取最年長の36歳9カ月。福岡県柳川市出身で小3から相撲をはじめ、小学校卒業後は高知県の明徳義塾中学に相撲留学。中学横綱に輝くと同高校を経て角界入りした。2002年一月場所、佐渡ヶ嶽部屋から初土俵を踏むと、わずか2年半で関取に昇進。十両は3場所通過で2005年一月場所、新入幕を果たした。

 左を差し、右で抱えながらの馬力を生かした「がぶり寄り」を武器に2011年九月場所後、大関に昇進。2016年一月場所には14勝1敗で初優勝を果たし、日本出身力士としては10年ぶりに賜盃を抱いた。大関在位は32場所を数え、陥落後も3年以上、土俵に上がり続け金星3個を獲得している。

 幕内在位場所数は歴代7位の92場所で連続在位91場所は歴代4位。幕内出場回数1332回も歴代6位の記録。幕内勝ち星718勝は歴代6位で現役では横綱白鵬に続く2位と相撲史に名を刻んだ“レジェンド”であり名大関だ。

 記録に残る力士ではあるがケガやスランプに陥ったとき、逃げることなく自分自身と真正面から向き合い、危機を克服してきたその生きざまは後輩力士たちにとって良きお手本となるだろう。

 大関昇進から2年後の2013年十一月場所、右大胸筋断裂の重傷を負ってからは右がうまく使えず、がぶり寄りの威力は半減。その4場所後は12勝をマークするも以後、勝ち星が2ケタに届かず皆勤しての負け越しも2度と低迷した。すでに31歳になっていたが、これまでの左四つの相撲から左は前まわしを狙うスタイルに変更すると、立ち合いはしっかり腰が降りて低く当たれるようになり2015年九月場所は7場所ぶりの2ケタとなる11勝。さらに翌々場所の初優勝にもつながった。

 平成最後の場所で11勝を挙げて以降、令和になってからは負け越しが続いていたが、それでも自身の課題には果敢に取り組んだ。膝を伸ばし、腰を浮かせた体勢の立ち合いに行き着くと今年七月場所、7場所ぶりの勝ち越しを成し遂げた。

 元大関でいながら十両に落ちてもなお、自分自身を追求し続けたがついに力尽きた。

琴奨菊、最後の一番
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悔しさこみ上げる炎鵬
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土俵の外に「ぴょん」
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