増える政府の“SNS外交”と炎上リスク 若新雄純氏「炎上の大半は“やりとり”の中で生まれる」
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(4枚)

「ついにフォロワー様がナウル総人口の3倍を達成しました」

「日本の皆様の大きな応援のおかげです」

 大喜びしているのは、総人口1.3万人の「ナウル共和国」の政府観光局。お世辞にも日本国内で知名度が高いとは言えない国だが、豊かな自然の写真や自国の豆知識を精力的に発信した結果、10月1日にアカウントを開設してから24日までにフォロワー数3.9万人を達成した。

【映像】なぜ片手に“こん棒”…? 駐日大使のツイートが話題

 SNSでは今、国の魅力を伝えるために活動する政府公式アカウントが増えつつある。ウクライナ大使であるセルギー・コルスンスキーさん(58)も今年10月にアカウントを設立した。

「こんにちは。初めまして。在日ウクライナ特命全権大使として来日しました。どうぞよろしくお願いいたします」

増える政府の“SNS外交”と炎上リスク 若新雄純氏「炎上の大半は“やりとり”の中で生まれる」
拡大する

 写真では、こん棒を肩に担いだスーツ姿のコルスンスキーさんが微笑んでいる。アカウントを開設して初めての投稿にも関わらず、この投稿には4.6万もの「いいね」が殺到した。アメリカやトルコなど、さまざまな国で26年間外交官を務めてきたコルスンスキーさんは、今年10月に来日し、おいしそうな料理や可愛い雑貨、美しい風景など、ウクライナの情報を積極的に発信している。

 現在、コルスンスキーさんのフォロワー数は約4400人。コルスンスキーさんは日本語が話せないため、投稿は職員が手伝っているという。

 ニュース番組「ABEMAヒルズ」ではそんなコルスンスキーさんを取材。「ウクライナ大使として、Twitterを始めたのはなぜですか?」と質問すると、「日本ではフォロー機能などSNSとの向き合い方が慎重なので、(気軽に利用できる)Twitterが人気なのだと聞きました」と答えてくれた。

 「大勢の人と直接コミュニケーションをとりたい」と話すコルスンスキーさん。実際に、大使がツイートしたものを引用リツイートした人に返信し、フォロワーを驚かせている。

 Twitterの運用については、ウクライナの自然や歴史、産業など、これまで以上の魅力を知ってもらうことなどが狙いだという。

増える政府の“SNS外交”と炎上リスク 若新雄純氏「炎上の大半は“やりとり”の中で生まれる」
拡大する

「ウクライナを良い友達だと思って欲しいです。皆さんが思っているよりも近い距離の国です。もっとウクライナのことを知って欲しいし、Twitterのフォロワーを(日本の人口である)1億2000万人にすることも目標です。皆さんにツイートが届けば、ウクライナを友達だと思ってもらえて、さらなる協力関係が築けると思っています。アリガトウゴザイマス」

 このニュースに慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「SNSが我々の生活に一般化したのはここ10年くらい。(公人が)SNSを使うこと自体が大きな変化なのではなく、情報発信の手段そのものが変わってきただけではないのか」と見解を示す。

増える政府の“SNS外交”と炎上リスク 若新雄純氏「炎上の大半は“やりとり”の中で生まれる」
拡大する

「SNSがなかったときも、テレビで広告CM)を出したり、全員が読んでいるとは限らない雑誌に国のPRや地域の広告が入っていたりしていて、それに誰も『おかしい』って言わなかった。昔はテレビや新聞、雑誌という情報手段が一番アクセスしやすく、地域に限らず見られる可能性が高かったが、今はYouTubeやTwitterなどはアカウントを作れば全員無料で見ることができる。(YouTubeやTwitterを使っていない)高齢者が見られないじゃないかという声もあるが、テレビの政見放送だって若い世代でテレビが家にない人は見られない」

 「時代とともに情報発信される媒体が変わっていくのが当然。今まで有効だったメディアにこだわりすぎなくても良いのでは」と語る若新氏。一方、SNSには「炎上」のリスクがある。大使や議員などの公人がSNSを使う上で、炎上しないためにはどうしたらいいのだろうか。

「炎上のリスクがあるからと言って、ネットで情報発信すること自体が危険なことだとは思わない。今までもテレビや新聞、雑誌でも情報の発信は同じようにされていた。政治家もテレビで記者会見をやって、そこで失言や問題発言などもあった。それはSNSになっても変わらない。変わったのは、発信した後、国民や市民が思ったことや反応を本人に届けやすくなり、それに応答できるようになったこと」

 若新氏は「発信もコミュニケーションの一部だが」と述べた上で、「政治家などの公人や芸能人との継続的なコミュニケーションを可能にしたのがSNSだ。炎上の大半は“やりとり”の中で生まれているのでは」とコメント。

「視聴者がテレビの前で言っていた愚痴などが、SNSで可視化されたことで、一連のやりとりにつながり、そこで感情が衝突したりして炎上してしまう。SNSの炎上を避けるには、情報発信の有無ではなく、『どのようなコミュニケーションをするか』について気をつけるべきではないか」

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

【映像】こん棒片手に...駐日大使の“SNS外交”
【映像】こん棒片手に...駐日大使の“SNS外交”
この記事の画像一覧

■Pick Up
「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側

この記事の写真をみる(4枚)