相手がカウンターを狙った刹那、それを上回るスピードで“技あり”の右ストレートをカウンター気味に一閃。出会い頭の衝撃KO決着にネットからは「打撃の交通事故だ」「アゴが砕けた!」など驚きの声が、実況席は「極上の技術交換」という表現を用いて両者の激闘に最大級の賛辞を贈った。
12月18日に開催されたONE Championshipシンガポール大会「ONE: COLLISION COURSE」。ONEバンタム級ムエタイ世界タイトルマッチで、王者のノンオー・ガイヤーンハーダオ(タイ)とロドレック・PK・センチャイムエタイジム(タイ)が顔を合わせるムエタイ頂上対決が実現。3ラウンド、ノンオーのワンツーにカウンターを合わせに行ったロドレックに対して、コンパクトかつ強烈な右ストレートでアゴを打ち抜いたノンオーが4度目の防衛を見事なKOで飾った。
元ルンピニースタジアム四階級王者という輝かしい実績も、一時は引退。復帰後、ONEで圧倒的な強さを見せつけてきた生きる伝説・ノンオー。対する、ロドレックは強豪ひしめくトーナメントで一度は敗れたものの、対戦相手の負傷により決勝戦に繰り上がり、そこでクラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイに勝利してタイトル挑戦権を得た。ムエタイの王者級が入れ替わり王者ノンオーに挑む構図が続くなか、キャリア初対戦となるランキング2位のロドレックに対する注目度は高い。
5ラウンド制で行われたタイトル戦。1ラウンドはムエタイらしく両者がローやミドルで様子をうかがう、嵐の前の静けさが漂う緊張感のある序盤。しかし、2ラウンド開始直後から前に出るロドレック。強い右、ワンツーと当てるが、ノンオーはミドル、さらにロドレックの打ち際にローでけん制するなど互いに譲らない高度な技術戦が展開される。
3ラウンドも前に出るロドレックに対し、一段ギアを上げたノンオーがジャブのカウンターで強烈な左を顔面に打ち込むと、一瞬、ロドレックの動きが止まる。続いて右のローからのコンビネーションで打って出る王者に対し、一方的に後退しはじめた挑戦者は一気にケージ際へ。奮起を見せヒジで押し戻したロドレックだが、アゴへの右アッパー、左ストレート、左ミドルをことごとく被弾する。
それでもグイグイと前に出て力を振り絞るロドレックに気圧されたか、ノンオーが一転、ケージ際へ後退する場面も。しかし、緊迫の攻防の幕切れは一瞬だった。ロドレックがノンオーのワンツーに合わせてカウンターを狙った瞬間、それよりも速く、コンパクトかつ強烈な右ストレートで綺麗にアゴを打ち抜いたノンオー。これをまともに被弾したロドレックは、糸の切れた操り人形のように体をよじらせ、前のめりにマットに沈んだ。タフさに定評のあるロドレックの衝撃的なダウンシーンに「すげえカウンター」「ゾワっとした」「打撃の交通事故」「アゴ砕けたかな」など、ネットは一時騒然。ABEMAの解説席は「極上の技術交換」などと形容し、両者の激闘を興奮気味に称えた。
ONEの公式SNSでも「ノンオーが“鋼鉄の機関車”(ロドレックのニックネーム)を停止させた」という驚きの見出しとともに衝撃の決着を紹介した。