2021年1月8日より全国公開された映画『銀魂 THE FINAL』。15年間続いた『銀魂』アニメシリーズの最後を飾る本作では、主題歌をSPYAIRが、挿入歌をDOESが担当する。
ABEMA TIMESでは映画の公開を記念し、SPYAIRのIKE(Vo)・KENTA(Dr)、DOESの氏原ワタルによる対談インタビューを実施。『銀魂』の世界を音楽で彩ってきた両バンドのこれまでの歩みを振り返りながら、それぞれが担当する楽曲に込めた思いを聞いた。
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■先導者だったDOESの背中
―― これまで担当されてきた歴代の『銀魂』ソングを通じ、互いのバンドにどのような印象を抱いていましたか?
KENTA:(DOESは)怖かったよね。
IKE:怖かったね。
氏原ワタル(以下、ワタル):怖い?(笑)
IKE:当初はご挨拶をするくらいでしたね。基本しゃべりかけてはいけないんだろうなと(笑)。
僕らも『銀魂』のテーマソングを担当するうえで、先輩であるDOESの楽曲をめちゃめちゃ聴いていましたし、その同じ場所に立って戦う心持ちだったので、楽曲でDOESに勝ちたい、ほかにも素晴らしい楽曲が出ている『銀魂』のテーマソングの中で光りたいということはものすごく意識していました。
DOESは特に光り輝いている印象を持っていて「そんな強面のゴリっとした粋な先輩を倒さなきゃ!」と思っていたところはあります(笑)。何よりも『銀魂』の世界観にマッチしていて、それを先導していた感じがあったので、その道筋に僕らが乗っかっていくべきか、それとも新たな道を切り拓いて引っ張っていくべきかを考えたり。そういう意味でDOESの背中を見ていました。
―― そこから「サムライハート(Some Like It Hot!!)」が生まれたんですね。ワタルさんはSPYAIRの楽曲を聴いた第一印象はいかがでしたか?
ワタル:ポップでカッコよくて、爽やかでお洒落。僕らにないものを全部持っているなと思っていました。当時友達と一緒にカラオケに行ったときにも、その友達がDOESの曲を歌わずSPYAIRの曲を歌っていて、ちょっと嫉妬したりもして(笑)。
楽曲センスも素晴らしいし、歌声も詩と共に刺さってきて、『銀魂』の温かな明るい側面に光を照らしてくれたような曲だったなと思いますね。
■バンド人生を変えた『銀魂』との出会い
――『銀魂』との初めての出会いや印象深いエピソードを教えてください。
ワタル:デビューしたときに担当の方から『銀魂』というアニメで使いたいとオファーをいただいて、原作を10巻くらい読んだのですが、すごく笑える作品だと知って。「この世界観にDOESとしてハマることができるのか」と思っていたのですが、うまくハマったみたいで。当初はオリコン何位とかもわからないまま、ただただ巻き込まれたというか、巻き込んだというか……(笑)。
IKE:僕らはすでに完成しているDOESを『銀魂』を通して見ていたので、作品自体の印象もDOESに引っ張られている感じがあります。
KENTA:その「銀魂=DOES」みたいな構図ができあがっていたところにSPYAIRの「サムライハート(Some Like It Hot!!)」が話題になったことで、『銀魂』ファンのみなさんの間で二極化が起こっていて。「すごいところに巻き込まれたな……」と思っていました(笑)。
IKE:DOESが立っている場所にSPYAIRも立てることになって、2つのバンドが並んだときにそれを好きだった人たちが「こっちが好きだ」「いやいやこっちが好きだ」という状態になって(笑)。でも、それくらい『銀魂』はすごいカルチャーで、みんなが注目しているアニメーションなんだと気づきました。
―― 『銀魂』と関わったことでバンド人生は変わったと思いますか?
ワタル:ガラッと変わりましたね。DOESはもともと福岡で活動していたバンドだったので、まさかメジャーデビューできるとは思ってもいませんでした。作品の認知度がすごいこともあり有名な音楽番組にも出演することができて。『銀魂』には本当に感謝しています。
KENTA:僕らも同じです。「サムライハート(Some Like It Hot!!)」が出る前、渋谷のライブハウスで活動をしていた時期はほぼ売れていなくて。そこから『銀魂』のエンディングに起用されてからはライブのチケットも即完売するようになったんですよ。
IKE:グッとこらえていた時期に花を添えてくれたのが『銀魂』だったので、このアニメに人生を救いあげていただいたという感覚はメンバー全員が持っていると思います。
日本のアニメってカルチャーとしてすごいじゃないですか。しかも、それは全世界に通用するもので、僕らもワールドツアーで世界を廻ったことで作品がものすごく受け入れられていることを目で見て、声で聴いて、届いていることを直に体感することができたのですが、僕らがアニメのタイアップを始めた時期は、バンドがアニメに関わることに対して少し否定的な風評も事実としてあったんですよ。
ワタル:“アニソンバンド”みたいなね。
IKE:SPYAIRもDOESもそこをはねのけてやったことが、今は正解だったかもしれないとすごく思います。
ワタル:それは僕も思う。たとえば小さい頃から聴いていたTHE BLUE HEARTSさんもテレビを通して知ったから、僕らもタイアップすることで彼らと同じことができるんだと思いましたし、実際に同じような現象が起きてここに至っている。それはありがたいことですし、僕はアニオタでもあるので(笑)、そんな日本のアニメーションの文化に誇らしさも覚えますね。
■「それって“最高”じゃん!」という絵をみんなで描いた結果
―― 映画『銀魂 THE FINAL』の主題歌であるSPYAIRの「轍~Wadachi~」はどのようなイメージで制作されましたか?
KENTA:楽曲制作時から「銀さんが笑っていてすごく爽やかに走り出すようなイメージ」が一番にありました。泥くさい戦闘や誰かが泣いている感じではなく、笑っている銀さんのうしろに仲間たちや大勢の人がついて行っているというか。
そこにベース担当のMOMIKENが歌詞を乗せてくれて、タイトルもファイナルに相応しい「轍~Wadachi~」に決まりました。みんなで『銀魂』の最後に花を添えることができたのかなと思います。
IKE:仮歌を録ったときに「ああ、名曲できちゃった……」って、もうわかっちゃったんですよ(笑)。KENTAにとって作曲の処女作でもありましたし、とにかく良いものに仕上げたいなと思っていたので、そんな肩の荷が下りたような瞬間でした。
この曲がいろいろなところで使われていくイメージもよぎりながら「これは、みんなの歌になる」と思いましたね。
―― DOESの「道楽心情」と「ブレイクダウン」は劇中の戦闘シーンの中でも特に見せ場で使われていましたね。
ワタル:完成した映画を鑑賞したとき、曲が作品に合いすぎるくらい合っていて、軽く引きました(笑)。
今回の挿入歌はアニメの制作側から「このシーンで使われます」と軽く教えていただいていたので、原作コミックを読みながら作っていったのですが、これまでの「曇天」や「バクチ・ダンサー」は、僕が「こういうバンドにしたい」という思いで作って採用された楽曲でした。実は作品をもとに曲を書き下ろしたのは映画『銀魂 THE FINAL』が初めてだったんです。
劇中では真選組を含めたいろんな仲間が集まってくる場面で、何かを突破(ブレイク)していくことをコンセプトに、僕らの得意技であるリフ(※コード進行の繰り返し)で押して、そのパワーで闇をぶっ壊して先へ行くイメージで作っていったのですが、今後のDOESとしての指針になるようなレベルのものができたと思います。
KENTA:僕も映画を鑑賞して「うわ、DOESきた!」と思いました。あのシーンのDOESのギターリフが最高にカッコよくて、その印象が最後まで残っていて。ちょっと悔しかったです(笑)。
IKE:自分たちの楽曲が最後にくることはわかっていたのですが、その間にDOESのすごいサウンドがきて。音と映像に攻め立てられるんですよ。そこに悔しさを感じちゃうんですよね(笑)。
ワタル:主題歌が何をおっしゃる(笑)。僕も「轍~Wadachi~」がかかって「本当に終わっちゃうんだ……」と思って泣きそうになったよ。
IKE:今回「轍~Wadachi~」が主題歌と銘打っていただいているんですけど、2組のアーティストのそれぞれの楽曲が映画の中で狂い咲いている感じがありますよね。
KENTA:“総決算感”がハンパないんですよね。
ワタル:DOESとSPYAIRが出逢って仲良くなったあとに一緒にできることがすごいミラクルだよね(笑)。
IKE:始まったときにこんな結末がくるなんて1ミリも思ってなかった(笑)。
ワタル:最終局面でご一緒できたらいいなとは思っていましたけど、こちらからは言い出せないし。今回よくぞ選んでくれたというか。
KENTA:本当ですね。
IKE:もう言ってしまいますけど、僕らは映画『銀魂 THE FINAL』で「自分たちが選ばれたい」とずっと思っていました。だけど同時に「DOESもきてほしい」とも思っていて。『銀魂』ファンの方だったらわかる感覚だと思いますが「それって“最高”じゃん!」という絵を、みんなで描いた結果がこの形だったと思うんですよ。だからこそ、この“最高”を目一杯味わってほしいなって。バンド冥利につきますよね。
映画『銀魂 THE FINAL』
大ヒット上映中!
■原作:空知英秋(集英社ジャンプコミックス刊)
■監督/脚本:宮脇千鶴
■監修:藤田陽一
■声の出演:杉田智和、阪口大助、釘宮理恵 ほか
■アニメーション制作:BN Pictures
■配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会