「“withコロナ”は間違った概念。とにかく感染者を減らすこと」 緊急事態解除“1日500人”の基準に神戸大・岩田教授「もっと減らすべき」
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 政府は7日、東京と神奈川、千葉、埼玉の1都3県を対象に「緊急事態宣言」を再発出した。期間は8日から2月7日までの1カ月間としている。

【映像】専門家「“withコロナ”はありえない概念」

 基本的対処方針として、午後8時以降の不要不急の外出自粛を求めるほか、飲食店に対しては午後8時までの時短要請(酒類の提供は午後7時まで)、百貨店や映画館、パチンコ店などへの午後8時までの時短働きかけ、イベント等の収容率50%・5000人以下の制限、出勤者を7割削減することを目指したテレワークを徹底する。一方、前回の緊急事態宣言時に行った一斉休校は、今回は求めずに感染防止対策の徹底を要請する。

 今回の緊急事態宣言の効果について、感染治療学分野が専門の神戸大学の岩田健太郎教授は「希望はあるが、若干悲観的な見解を持っている」として、次のように話す。

 「海外だと、どうしても通勤しないといけないエッセンシャルワーカー以外は全員家で仕事するようにとかなり強い要請をして、その結果として7~8割減になる。今日も通勤電車が満員だと話題になったが、最初から7割減を目標にすると7割未満になる可能性が高いということで、メッセージの出し方としては非常に弱い。また、飲食店の営業は午後8時まで、酒類提供は午後7時までというのも、その前だったらいいのではないかと解釈する人もいるわけで、お店としてはランチタイムにお客さんを呼び込もうとする。ウイルスは昼と夜を一切考慮しないので、“夜にできなければ昼にやろう”“ハッピアワーを作ればいいのではないか”といった考えになると、結局は元の木阿弥。“ここまでだったら大丈夫”という政府の言い方は去年からも繰り返し見られていて、年末も『高齢の両親のところに帰省するのは絶対にやめましょう』と言えば、最低限の人だけになったはず。出したメッセージより結果は少し弱くなるので、政府の奥歯に物が挟まったような言い方は弱かったと思う」

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 また、テレワーク徹底にしても、政府や情報を伝えるメディアの行動が伴っていないと苦言を呈する。

 「テレワークを推進しましょうと言っている政府がそもそも会議を対面でやり続けていたり、メディアのぶら下がり取材で多くの取材が周りを取り囲んだり、記者会見の時にマスクを取って、あまつさえ『記者の方は質問する際にマスクを取ってください』とまで言う。そういういい加減なことを、政府筋もしくはメディアもやり続けて、画面で見せておいて『皆さんちゃんとやってください』と言っても、それは伝わらない。政府、メディアの伝え方が十分でないと思う」

 とはいえ、国民の行動変容は期待できないわけではないという。日本社会においては“同調圧力”が重要になると指摘する。

 「“みんながやっていればやる”という人がすごく多いと思うので、みんなが自粛モードになれば、恐らくそういう流れになるだろう。しかし逆もまた然りで、“みんなが外に出ているから大丈夫”という雰囲気ができてしまうと緩くなってしまう。いわゆるGoToキャンペーンはその緩い雰囲気を作ってしまう一番の要因だったと個人的には思っているが、これを政府は一生懸命戻そうとしている。夜の会食はダメだけど昼ならいい、5人以上はダメだけど4人ならいいということを一部の政治家が言ってしまっているわけで、そういう言い訳を探すようなノリができてしまうとうまくいかない。今回の緊急事態宣言がうまくいくもいかないも、そういった空気づくりがいかに上手にできるかにかかっていると思う。これまでの記者会見を見る限り、菅総理は官房長官時代から魂に響かせるというよりは紙を読んでいるだけの印象が強いので、そういうメッセージの出し方として上手とは残念ながら思えない」

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 岩田教授は、感染拡大防止と経済活動両立の“ジレンマ”をあげた上で、解決には「とにかく感染者を減らすこと」が必要だと訴えた。

 「新型コロナウイルス感染症は世の中にあるどの感染症とも違っていて、感染させた状況を看過していいということはありえない。ここが一番難しいところで、対策を怠ると必ず感染は広がり、感染者が増えると必ず重症者と死者も増える。そもそも“withコロナ”というスローガンは間違っている概念。感染を抑え込んだ時に、初めて外食を楽しんだり旅行に行ったりすることが十分にできるわけだが、ウイルスを放ったらかしにしたままでそういったことをすると必ず感染者は増え、結局また外出できなくなる。これは本質的なジレンマで、感染者は増え続けるけど経済もうまく回るという両立はありえないと理解することが必要。一番効果的なのは、感染者をきちんと減らして、減らすことを経済を回す動機づけにするという順番を守ること。感染者が比較的少なかった去年の夏から秋にかけて徹底的に減らすことができていれば、今回の緊急事態宣言は回避できていたはず。切羽詰まって出しても、この(感染の)勢いを急に止めるのはなかなか難しく、海外でロックダウンと言われるものまでやらないとひっくり返せない。そういう意味ではタイミングを逸したと思う」

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 緊急事態宣言は2月7日までで、解除は「感染状況」「医療提供体制」「公衆衛生体制」がステージ3相当の対策が必要な地域になっているかを総合的に判断するという。西村経済再生担当大臣は、10万人あたりの感染者数が1週間平均で25人以下、東京では1日500人以下が目安だと発言している。

 この目安に岩田教授は「500まで抑えたらもっと減らしにかからないといけない」と述べた。

 「個人的にはもっと減らすべきだと思っているが、達成がかなり困難なのでこのあたりで手打ちにしたのだろう。ウイルスは増えるものなので、1日500人に減ったからといって元も戻すと、また増える可能性が十分ある。第2波の抑え込みに失敗して第3波を誘引してしまった教訓を忘れないためにも、500まで抑えたらもっと減らしにかからないといけない。短期的に経済を回すという誘惑に負けてしまうと、結局長期的には経済が回らなくなるというジレンマをもっと認識する必要がある」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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