“伝え方が9割”の佐々木圭一氏に聞く “自粛疲れ”の今、人々に伝わりやすいメッセージとは
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 緊急事態宣言が11都府県に拡大、行政は人流抑制のため不要不急の外出自粛やリモートワークの推進を呼びかけているが、昨年の発出時に比べ人々の危機意識は明らかに低下しているとの指摘もある。実際、ネット上には、「自粛につかれた、飽きた」「重症化は高齢者、若者は軽症と知れ渡っている」「自粛には個人的なメリットが何もないよね」「政治家もメディアも本気じゃないでしょう」といった投げやりな言葉も散見される。

 背景には、政府の発信の仕方の問題もありそうだ。

・【映像】佐々木氏に聞く、伝わるメッセージとは?

“伝え方が9割”の佐々木圭一氏に聞く “自粛疲れ”の今、人々に伝わりやすいメッセージとは
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 14日の参院内閣委員会で杉尾秀哉議員(立憲民主党)に「“昼間も外出を自粛してくださいというメッセージが伝わっていなかった。誤解がある。”とおっしゃいましたが、これは国民が誤解していたということか。メッセージが伝わらなかったのは政府の責任じゃないか」と問われた西村康稔経済再生担当大臣は「特に午後8時以降の外出自粛、ということでメッセージが伝わってしまい、国民の皆様の中に“8時までは外出してもいい”と受けとめた方がいらっしゃったのだろうと思う。私ども政府がメッセージをもっと明確にし、そして共感を得られるような発信をしなければならない」と答えている。

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 同日の『ABEMA Prime』に出演したEXIT兼近大樹は「芸能人が“うちに帰ろう”とか“手を洗おう”とか言うのがバズってたんで、今こそやるべきだと思う」としながらも、「芸能人だって仕事があるし、“それ間違えてるよ”と否定されてしまって損するんじゃないかと考えると、発信するメリットが感じにくくなっているのかもしれない」と話す。

 人々の行動変容を促すためには、どのようなメッセージを発信することが効果的なのだろうか。

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 ベストセラー『伝え方が9割』の著者でコピーライターの佐々木圭一氏は「政府が言っていることは正しいし、頑張っているとも思う。ただ、“控えてください”と言えば皆が控えるかといえば、そういうわけではない。特に何遍も“自粛して”と言われ続けると飽きてくるし、子どもだって最初に怒られたときは言うことを聞いても、怒られ続けていると聞かないという状態になってくる。今はそういう状態になっているのではないか」と話す。

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 そこで佐々木氏は、自著でも紹介している“「イエス」に変える切り口”を基に考えることを提案する。「問題は“伝え方”だ。強く、ストレートに言えばいいということではなく、“そう言われるならやってもいいかな”と相手に思ってもらうための技術がある。それを知ってもらいたい。それには全部で7つの切り口がある。具体的には、嫌いなことを回避、選択の自由、認められたい欲。あなた限定、チームワーク化、一緒にという言葉、それから感謝、ありがとうという言葉を言うなどだ」。

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 そうした観点から佐々木氏が評価するのが、ニュージーランドの警察がTwitterに投稿したメッセージ「史上初、我々は何もせずテレビの前で寝転んでいるだけで人類を救うことができる。しくじるなよ」だ。

 「行政の偉い方々の話というのは、言いたいことをただ言っちゃっている。これはクスッとくるし、それならやってもいいかな、家の中で自粛してほしいと言われるより受け入れてもいいと思うだろう。最後の“しくじるなよ”というのも、“あなたもスーパーヒーローだ”という意味で呼びかけている。

 また、“後遺症に抜け毛”など嫌なことを伝えること、あるいは“一緒に”という言葉にも効果があるという。

 「例えば後遺症で抜け毛が出ることがあるとも報じられている。それを知れば、“とりあえず今はちょっとやめとくか”となる。ただ、“そうしない方がいいよ”というのはなかなか言いにくい。それなら、同じ目線に立って、“僕もやるから君もやろうよ”と言ってあげる。“勉強しなさい”ではなく“一緒に勉強しよう”と言えば、子どもが勉強してくれる可能性が高まる。芸能人の方々が“一緒に家でご飯にしよう”と言うことで多くの人たちが“じゃあ家でご飯食べようかな”という気分になったのと同様だ。総理も“自宅で食べる。だから、一緒に食べないか”と言ったほうが、皆も“できるかもしれない”と思うのではないか」。

 そして佐々木氏が重要視するのが、リーダーが“感謝”の気持ちを表すことだという。

「外に出たい、遊びたい子どもたちに、首相が“助けてくれてありがとう”と言ってくれたら感動するのではないか。やはり怒る方にばかりに力が入ってしまいがちだが、守らなかった店の名前を罰として出すよりも、守った店を表彰してあげた方が、みんなも嬉しい」。

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 慶應大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は、「いいことをした人を褒めるよりも、悪いことをしなかった人を褒めるのが日本社会だったのだと気付いた。学校でも、“褒められよう”ではなく、“怒られないでおこう”でやってきたと思う。それがコロナ禍で出てしまっている。ただ、1回目の緊急事態宣言では、“怒られないでおこう”で頑張れたかもしれないが、今回はそれだけでは無理だ」と指摘。

 そして「“差し迫った状況なんだな”と耳を傾けてしまったサイゼリヤの社長の会見に比べ、総理や西村大臣の言葉は棒読みに聞こえる。やはり政府や国の本気が入っていないと、どんなコピーも伝わらない。“君もヒーローになれる”というのもそうだが、日本の政府はハートフルなコミュニケーションが下手だと思うし、正面向かって言われている感じはしても、一緒に考えてくれている感じがしない。“お願いします。やっていただけませんか”ではなく、“一緒に踊ろう”が流行ったことには、そういう背景があると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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