“私たちは反社会的勢力ではない” 家を借りられず、銀行口座を作れないケースも…コロナ禍で浮き彫りになった、夜の街で働く人たちへの差別や偏見
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 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、クラスターが発生したことから「感染症拡大の元凶なんだから潰せよ」「百害あって一利なし、真っ当に働け」など、批判や差別の的にもなった、いわゆる“夜の街”、“水商売”。そこで働く人たちはいま、何を思うのか。

・映像:コロナ感染で槍玉に...夜の仕事はなぜ批判される?

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 新宿・歌舞伎町にある雑居ビルにある「みずべや」。いわゆる「水商売」で働く人たち専門の不動産仲介業者だ。「家を借りようとしても水商売というだけでダメだと言われてしまって借りられない。それは偏見、職業差別だし、おかしいと思う」。そう話す佐々木龍也さんをはじめ、“夜の街”で働いた経験を持つスタッフも多い。この日、部屋を探しに訪れていた女性もキャバクラで働いているといい、「職業を言ってしまうと借りられるか分からなくないから」と話した。

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 北海道・すすきで“No.1キャバ嬢”だったという椎名美月さんも、「仕事を始めたばかりの頃は家が借りられなかった」と振り返る。「住み続けられるのか、と言われたこともあった。確かに人気商売なので日によって売上が違うのは確かだ。でも、“退去後、部屋が汚かったから”という理由は…。それは先輩方にもっとしっかりしてほしかったし、これから先、キャバ嬢になる方たちのために変えていく必要があるのかなと思った」。

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 それでも夜の街の仕事について椎名さんは「いいところもたくさんある」と話す。「普通のアルバイトでは出会えないような方からお話を聞くこともある。ほとんどの方は紳士的で、偏見もなく接してくれた。ただ、私たちのことを見下すような振る舞いをするのが楽しいという方もいらっしゃった。“キャバ嬢のくせに”、“キャバ嬢なんだからやれよ”と言われたこともある。お給料もいい分、欲にまみれてしまうと危険だ。自分のことを抑制しつつ、明確な目標を持って働くのであればすごくいいお仕事だと思っている。」

 椎名さん自身も、結婚・出産、そして離婚を経験し独立した。現在ではエステサロンを経営している。「もちろん誇りを持って働いてはいたし、銀座のママさんのように自分のお店を持ってしっかりとやられている方もいらっしゃるが、やっぱり子どもが小学校で嫌な思いをしたら…と考えて辞めることにした。最近でこそ憧れの職業だと言われることもあるが、やはり世間的にはまだまだ良くない仕事だと考えている人も多いと思う」。

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 昼間は都内で営業事務の仕事をしているという雪さん(30代)は週に2~3回、銀座でホステスをしている。勤務先の一部上場企業は“副業OK”だが、雪さんは今も申請を出していないと明かす。「解雇はされないとしても、昇格とか昇進がしづらくなると思うから」。

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 こうした声を集めて活動する「日本水商売協会」の甲賀香織代表は、「“飲み屋の姉ちゃん”と言われると、ちょっとカチンと来る」と苦笑。「要は、個として認識されていない感じがするし、もともと人々の中にあった差別意識がこのコロナ禍で出てきたと思う。行政からもスケープゴートにされてしまった感じがある」と指摘する。

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 「業界全体のことを考え、意識高く行動されているトップの方々もいるが、数としては少なかったと思う。政治も手を付けてはくれないので、自分たちで声を挙げるしか無いと考えた。それでも私たちの協会は未だに銀行口座を作れていない。明確な理由を示さず、ただ協会名を変えてくれと。暗に“水商売”という言葉が問題だとほのめかしているのだと思う。“水商売”という言葉を反社会勢力と同義のように扱うのは理不尽ではないか」。

 こうした社会の認識を変えていくため、甲賀さんは業界で働く人たちの啓蒙も欠かせないと考えている。

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 「主に仕事に対する価値観や、取り組み方の啓蒙が重要だと思っている。無知な方々も一定数いらっしゃる。そういう方々の多くは悪気なく、ただ知らないだけなので、そういう方々に一定の知識を与えるのは一つ重要なことだと思っている。また、昼の仕事の違いの一つとして、“正直者がバカを見てしまう”ような部分が数多くある。真面目に納税していても、一般企業とは並べてもらえない、というようなことがあるからだ。そこは仕組みを変えていくことも訴えていきたい」。

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 EXIT兼近大樹は「アニメ、漫画、ゲーム、映画、ドラマなどを見ても、夜の街、水商売=悪いことをしている所、というようなイメージが刷り込まれてしまっていると思う。ただ、歴史的に見れば実際に悪いことをしている人がいたことも確かだし、反社会的勢力が入り込んでいることもあると思う。一方で、“こういうところでしか働けないから”と入ってくる人たちもいる、いわば弱者が最後にたどり着き、強くあろうとする所でもある。そういう中で知らずに、意図せず、イメージを貶めてしまう人もいるのは確か。だから“お前なんて、どうせこういう家庭で育ったんだろ”、“こういう仲間たちとつるんでるんだろ”といじめられてしまう。全員が“まっとうな仕事です”と心の底から思える日はすぐには来ないと思うが、それでも少しずつ頑張って改善している人たちがいるわけだし、僕は応援したい」とコメント。

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 慶應大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「今は、あえてそこで働くことを選ぶという人も増えているだろうし、めちゃめちゃ優秀でやり手の人も現れてきている。ただし、超優秀で大企業に行けるのに行かなかった、という人たちばかりが集まっているところだとしたら、“ちょっと行くの怖いわ”となるのではないか。つまり、お金を払って優越感に浸りたい人、上から目線で行きたい人を呼ぶための“設定”という面も必ず残っているのだと思う。そういう中で変わっていこうという人たちが現れた、その境目の時期かなと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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