緊急事態宣言が発出されている11都府県では、営業時間の短縮要請に応じた中小の事業者(飲食店)に対し、1日当たり一律6万円の協力金が支払われることになっている。しかし、結果は複数の企業が雇用や店舗、関係企業を守るため“営業継続”に踏み切った。
こうしたことから、東京都では大規模事業者への協力金の支給も決定。それでも、この“一律6万円”には“不公平だ”との声が上がっている。20日に開かれた業界関係者による緊急記者会見で、ミシュランで三ツ星の評価を受けたフレンチレストラン「レフェルヴェソンス」の生江史伸シェフは「正直言うと協力金で儲かっちゃっているところもあれば、協力金をもらっても“雀の涙だ”というところもある。そういう違いを包括的に対応するような法案、施策がない」と指摘した。
実は大手メディアの報道からは聞こえてこない飲食店の声として「世間に対しては“コロナで困っている”と言わないといけない空気がある」と話す経営者もいるという。
「オフレコでの発言だが、私の店と同規模の飲食店を経営する者同士で会話をしていると、“コロナバブルだ”とか、“コロナがずっと続いてほしい”と話す人もいる」と明かすのは、飲食業界の取材も手がけるフリージャーナリストの肥沼和之氏だ。
肥沼氏は、東京・新宿区の歌舞伎町と四谷にバー「月に吠える」を2店舗経営している。感染リスクなどを考慮し、営業時間の短縮ではなく、休業を決断した。すると、コロナ前は月に50万円だった純利益が、現在では327万円と、6倍以上にも上っているのだ。
「もちろん、できる限りの感染対策はしているが、そもそもうちのような業態は、お酒を飲みに来る以上に会話をしに来るような空間だ。加えて人件費もかからないので、単価も安い。潰れないように維持する、という観点なら1店舗につき1日1万円あれば家賃と光熱費が賄える。売り上げについても、1店舗につき1日1万5000円~2万5000円ぐらいの補償をいただければ、従来通りの利益が出るということだ。1日6万円では全く足りない規模や業態のお店もある一方、自分の店がある新宿ゴールデン街や四谷荒木町などで取材してみると、同じような業態、規模、売り上げのところは以前よりも利益が出てしまっている。つまり“十分すぎる補償”になってしまっているケースも少なくない。すごく不平等だと感じている」。
とはいえ、昨年は緊急事態宣言の終了後も客の入りは例年の4割程度までしか戻らなかった経験から、「一時的には“もらいすぎ”だが、安堵もしているというのが本音。やっぱりすごく複雑な思いだ。だから飲食店=大変そう、と全てを一括りにすることはできないと思う」と話した。
「GoToトラベル」事業が実現した背景には、旅行業、観光業の“政治力”の強さがあったことも指摘されている。一方、飲食業界は26兆円規模、480万人が働いているものの、政治に声を届けるための大きな塊ができていないという見方もある。冒頭に挙げた会見も、あくまでも一つの業界団体による緊急会見という形だ。
肥沼氏は「少なくとも僕の周辺は今まで交流があまりなかった印象だったが、“夜の街”と名指しされたのを機に連携したり、みんなで区長さんに提言をしに行ったり、といったことも生まれてきてはいる。一方で酒屋さんや氷屋さんなど、飲食関連業界にいる方にも話を聞いたが、規定が明確になっていないことへの不安、もらえても20万円、40万円など一律になっていることへの疑問や不満も耳にした」と話す。
パックンは「前年同時期の納税データを元に、固定費など、潰れない程度のお金を店ごとに支給することもできるはずだ。それができないのは、日本の税務署の仕組みのデジタル化が遅れているからだ」と指摘。作家の乙武洋匡氏は「やはり支援策が雑だと思う。前回の緊急事態宣言は政治も含めて皆が戸惑っていたと思うし、スピードも問われていた。そこでは一斉、一括、一律でもしょうがなかったと思う。しかし、あれから半年以上が経つ。もっときめ細やかに不公平・不利が出ないように考えてこなかったのか。冬場は感染が再拡大するとも言われていたのに、不思議でならない」と行政の姿勢を厳しく批判した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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