自民党の青年局が二階幹事長ら党の幹部に、次の衆議院選挙で「73歳定年制」のルールを厳守するよう求め話題になっている。
「73歳定年制」とは自民党が設けているルールで、衆議院選挙の比例区で73歳以上の候補者を認めないとする定年制だ。いつまでもベテラン議員が当選していたら若手が出る“枠”が空かない――。議員の若返りを図ろうと2003年に導入されたが、衆院選が近付くと、ルールを撤廃しようとするベテラン議員と若手の攻防が繰り広げられている。
自民党の45歳以下で構成される青年局が19日、81歳の二階幹事長ら幹部に73歳定年制のルールを厳守することなどを申し入れた。二階幹事長は「青年局の活動は応援している」と応じたものの、定年制を維持するかどうかについて具体的な言及はなかったという。
SNSなどで大きな反響を呼んだこのニュース。『ABEMAヒルズ』は、実際に申し入れを行った青年局51代目局長・牧島かれん議員に取材した。
「もう20年来、この73歳定年制というのは自民党としてルール化してきた。ただ一方で、選挙が近づいてくると『73歳定年制は撤廃してもいいじゃないか』というご意見が出るのも事実。実際、昨年もそういう声が上がった」(牧島議員、以下同)
自民党幹部の高齢化ということは前々から言われているが、牧島議員は次のような認識を示す。
「幅広い声を体現していくという自民党でありたいと思っている。歴代の青年局長たちの声の中でも、“党内野党として言うべきことはしっかり言っていく”ということを期待されている。その役割を果たしていきたいと思っている。そういう意味では、若い世代の声も青年局がそれぞれ草の根政党として地方でしっかり汲み取って、党本部役員にぶつけていきたい」
二階幹事長らベテラン議員はこういった思いを受け止めてくれたのか。
「お話の時には(二階幹事長は)ご自身の20代の頃の思い出話とかも、地方議会の出身でもあるのでしてくださった。それぞれベテランの議員の皆さんも若い頃があったので、その時の思いを私たちがもう一度語り掛けることによって思い起こしていただきたい」
とはいえ、実際の二階幹事長の気持ちについても気になるところ。自民党を取材する平河クラブのテレビ朝日政治部・河田実央キャップは、二階幹事長について「定年制については否定的な立場」と話す。
「二階幹事長がやっぱり自分の同志、仲間をきちんと当選させたいという思いはあると思う。幹事長として党を仕切る立場として、若手の政治家が提言したことをむげに否定することもないので、とりあえず幹事長としては聞き置いたという形で反応を示さなかったということなのかなと」(河田キャップ、以下同)
今回の青年局の申し入れについて、SNS上では「二階幹事長によく申し入れられたな…」という驚きの声が相次いでいた。実際に、二階幹事長の周辺では「怖くて見ていられない」という声。一方、ある自民党の幹事長経験者は肯定的な見方をしているという。
「今の自民党というのが、高齢者ばかりが活躍しているという『高齢者の政党だ』と自嘲する人もいる中で、若い人がちゃんと自分たちの意見を言っている姿が見えるのは、自民党にとって活性化する良い政党だという見られ方ができる」
気になるのが、実際に次の衆院選でルールが厳守されるのかどうか。実は、菅総理と山口選対委員長はこの73歳定年制のルールを厳守するよう以前から呼びかけてきた。
「今のところ、総理と選対委員長の間で『定年制はやりましょう』ということは合意されている。ただ、抜け道を作るとか、例外的にこういう功績があるからというのはあることで、それをどうねじこんでくるのか。本当に原則通りやれるかというのはひとつポイントかなと思う」
また、改めて番組に出演した牧島議員に対し、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「73歳定年制を最初に導入する時に、小泉元総理は中曽根元総理に政界からの引退を迫るという象徴的かつ強いアプローチを取ったが、牧島さんもそれぐらいの心持ちで、自民党執行部に対して物を申していくという理解でいいのか」と意図を尋ねた。
これに牧島議員は「中選挙区制から小選挙区制に変わって、若い世代が立候補するのが大変難しい制度になっているからこそ、比例の定年制というのは多様性のある声を体現するために大事なものであると強く思っている。ルールを今わざわざ変えなければならない特段の事情は起きていないので、堅持していきたいと思っている」と回答。
西田氏はさらに、「これが単に言ってみただけということになって、二階氏も若手の声を聞いた(が、実際には厳守せず)、牧島さんもそのような異議申し立てを行った(雰囲気だけの)「改革者」という名声をえる構図にとどまり、両者がそれなりに妥協した形で落ち着いてしまっては、政治の活性化や多様性の尊重は進んでいかない。ルールの堅持をどうやって具体的に推し進めていくのか」と切り込む。
牧島議員は「今回の申し入れは山口選対委員長にもお伝えして、『それは当たり前のことじゃないか。ベテラン議員はそれぞれ選挙区で地盤があるはずなんだから、比例復活に期待するような運動はしてはいけない』と言っていただいているし、それは私たちも広めていきたい。今年は衆院選がある年なので、今後どのような運動があるのかわからないが、全国それぞれの地域にいる青年局の仲間と力を合わせて、ルールを守っていくという運動を青年局から発信していきたい。青年局はファーストペンギンとしての役割を担っている。荒波に最初に飛び込んでいき、党内野党として幹部にも申すべきことはしっかり伝えていく。自民党の最終意思決定機関である総務会にも青年局長は椅子をもらっている。総務会は全会一致で決を取ることになっているので、そこで最後の最後まで意見を貫き通して行っていきたい」と意欲を示した。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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