新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、菅総理は21日の国会で、全体で3億1000万回分を確保していることを明らかにした。まずは、医療従事者や高齢者、基礎疾患のある人などから優先的に接種するとし、ワクチンの副反応や効果の説明責任が問われると「科学的知見に基づいた正確な情報を発信する」と述べるにとどめた。
日本内の対応については、ワクチン接種担当大臣に河野太郎氏が任命された。就任にあたり河野大臣は「『プロジェクトX』みたいな大きな仕事になる。国民の協力をいただきながら、一人でも多くの方に一日でも早く接種していただけるようしっかり仕事をやりたい」と述べている。
また、平井卓也デジタル改革担当大臣は、ワクチン接種にマイナンバーをひも付けて管理するべきだとの考えを明らかにした。「接種とひも付けると(管理に)間違いが起きない。今回使わなくて、いつ使うのか」としている。
河野氏がワクチン接種担当大臣に任命されたことに関して、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「本当に特命大臣が必要なのか」と疑問を呈する。
「一般にワクチン接種にかかる行政は厚労省が所管しているので、普通に考えると“厚労大臣がいるじゃないか”となる。また、新型インフルエンザ特措法でもコロナ対応は行われているが、そこを所管しているのは西村担当大臣で、そこで一元化した方が効率的にも思える。そこからワクチン接種のオペレーションだけ切り出してやろうとする時に、既存の行政や省庁との関係を本当に効率よく実施することができるのか。特命大臣本人が直接何かしようとしても、内閣府の特命大臣には専従の行政の担当者がいるわけでもなく、おそらく“新型コロナワクチン接種担当室”といったものを設けて、そこが一生懸命、厚生労働省や内閣府の他の感染症対策の部署と調整をすることになるのだろうが本当に効率的にできるのか疑問だ」
また、河野氏の“突破力”に期待した、政権イメージをアップする狙いもあるのではないかと指摘する。
「ワクチン接種のオペレーションを直接行うのは基礎自治体で、会場の確保やそこまでの運搬方法、経路など、調整を全て国がやるのは不可能に近い。自治体の力を借りるのはまさに調整業務であって、突破型の業務ではないといった時に(河野氏的な手法で)大丈夫かなとは思う。今の政権の中で数少ない、“良くやっているな”という高い評価を受けているのが河野氏で、前政権から含めて防衛大臣、行革担当大臣と要職を務めてきた。一方で、政権全体は評価が下がっていて、最近だと支持率は低迷し、支持率が逆転した。そこで、最も人気がある河野大臣と、出身の麻生派に華を持たせることで、ある意味政権の命運を託している。菅総理は既存の派閥出身ではなく、各派閥の協力が必要だが、そのなかで有力な派閥の麻生派に貸しを作ることにもなる」
では、平井大臣が発言したワクチン接種とマイナンバーカードとのをひも付けはどう捉えているか。これも政権の看板政策を印象づけたい狙いがあるのではないかとした。
「デジタルトランスフォーメーションが政権の看板になっているなか、“デジタルもやっていますよ”と強調したいのではないか。実際マイナンバーカードの普及率は25%程度で、特別定額給付金の配布時よりは改善したが依然として低い普及率。この状況では今回直ちに効率的に接種を管理するのはかなり難しいのでは。まずマイナンバーカードを取得してもらうことから始めなければならず、今回間に合わせるというのは現実的ではない。先ほどの河野大臣と合わせて、やはり政権の看板である行政改革やデジタルトランスフォーメーションを活用しているとイメージを印象付けたいという意図を強く感じる」
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