新型コロナウイルスのパンデミック下で一時は開催を危ぶむ声もあった男子の国別対抗戦『ATPカップ』が、数々の難題を克服して2月2日にメルボルンで開幕した。
シドニー、ブリスベン、パースのオーストラリア3都市を舞台に24チームが熱戦を繰り広げた昨年の初開催と比較すれば、やむを得ずフォーマットの変更や賞金の減額など規模は縮小されたが、日本を含めた12チームが全豪オープンの会場と同じメルボルン・パークに集結。世界ランキングの上位15人のうち13人が出場する豪華な顔ぶれに、昨年の興奮が蘇る。
出場チームは各国のシングルスのナンバーワンのランキングで決まり、日本は錦織のプロテクト・ランキング(10位)で出場資格を得た。ケガなどで長期間試合に出られない選手が申請して実際のランキングとは別に凍結しておけるものがプロテクト・ランキングで、復帰後の一定期間及び一定数の大会のエントリーに使用できる。
錦織は肘のケガで2019年9月から丸1年ツアーを離脱。昨年のATPカップも無念の欠場となった。日本の連続出場と錦織の初出場はうれしい限りだが、錦織の実際のランキングは41位まで落ちており、これは各国エースの中で最下位だ。実戦不足も否めない。昨年9月にツアー復帰はしたものの、今度は右肩を痛めて全仏オープン後に予定していた年内の大会を全てキャンセル。また、メルボルン入りの際はコロナ陽性者と同じチャーター機に搭乗していたために、メルボルンで2週間の完全隔離を強いられる不運にも見舞われた。その間、外での練習は一切許されず、練習再開からわずか4、5日での試合に伴うケガのリスクは最大の懸念だろう。
この逆境にどう立ち向かうのか、不安は拭えないが、興味深いところでもある。まずは3チーム1組での総当たり戦となるグループラウンドだが、日本の初戦は大会2日目のナイトセッションで、相手は12チーム中唯一トップ10プレーヤーを2人擁する強豪ロシア。錦織にとっては4カ月ぶりの実戦の相手が世界ランク4位の24歳ダニール・メドベージェフなのだから、当然厳しい。しかし、2019年のウィンブルドンで当時3位のロジャー・フェデラーと戦って以来となるトップ10との勝負の展開はやはり楽しみだ。
ロシアのナンバー2は世界ランク8位の23歳アンドレイ・ルブレフ。各国のナンバー2の中で最高位のルブレフに対し、前回大会では錦織に代わるエースとして格上から2勝をもぎ取った西岡が大物キラーぶりを発揮できるか。ダブルスには、西岡同様に前回の経験者であるマクラクラン勉と出場選手中最年長の42歳・松井俊英が控える。
同じD組のもう1チームは、昨年念願のトップ10入りを果たしたディエゴ・シュワルツマンをエースとするアルゼンチン。日本との対戦は3日目のナイトセッションに行われる。
全ての対戦で各国のナンバーワン同士が激突するのだから、その要素だけでも連日目が離せない。中でも王者ノバク・ジョコビッチを頭に連覇を目指すセルビアに、アレクサンダー・ズベレフとデニス・シャポバロフという若いエースを擁したドイツとカナダが挑むA組は注目だ。
総合力では、昨年準優勝のスペインがセルビアを上回るだろう。世界2位のラファエル・ナダル以下、13位のロベルト・バウティスタ アグート、16位のパブロ・カレーニョブスタとシングルスのトップ20を3人揃え、ダブルスの柱には世界11位のマルセル・グラノジェルスがいる。
個人戦以上に波乱が起こりやすいチーム戦。昨年も、番狂わせや思いがけない死闘などいくつものドラマが生まれた。全豪オープンに先駆ける5日間の“お祭り”は、慢性的なストレス状態に陥っているテニスファンの心をまた躍らせてくれるに違いない。
文/山口奈緒美
■開催日時:2020年2月2日(火)~2020年2月6日(土)
<日本戦 予選第1戦 ロシア vs 日本>
配信日時:2021年2月3日(水)15時30分~
配信チャンネル:Sports LIVE2
配信URL:https://abema.tv/channels/world-sports-2/slots/8TNjd6cjBfCovo
<日本戦 予選第2戦 アルゼンチン vs 日本>
配信日時:2021年2月4日(木)15時30分~
配信チャンネル:Sports LIVE2
配信URL:https://abema.tv/channels/world-sports-2/slots/8TNjcVKa8vMbhR