「俺が(ベルトを)獲ったら賛否両論」武藤敬司、58歳でのノア王座奪取に見せる自信
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 2月12日に開催されるプロレスリング・ノア日本武道館大会では、メインイベントのGHCヘビー級選手権試合で潮崎豪と武藤敬司が対戦する。昨年、ベルトを巻くと6度の防衛、団体躍進の原動力となった潮崎。そんなチャンピオンに挑む武藤は58歳だ。もはやその存在はレジェンド。しかし「老いぼれが夢を見てもいいだろ」と挑戦表明した。試合を前にインタビューすると、武藤はこう語った。

「(挑戦の)名乗りをあげるかどうか、考えた部分もあるよ。俺が挑戦したらプロレス界の足を引っ張ることになるんじゃないかって。底上げしたいのに底下げにならないかと。でもどうせなら何かやったほうがいい。何もしなきゃゼロであってね。批判されるにしても一歩踏み出して批判されたほうがいいよなと。ノアに参戦したということは、ノアという山を登ってるのと一緒だから。山に登るなら頂上を目指すもんだよ」

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 昨年からノアに参戦している武藤。無観客試合からの登場となった。

「俺がノアに参戦し始めた頃にコロナの勢いが増して。でもノアの勢いも増してたね。俺自身、無観客で試合するのは初めてだから新鮮だった。やっぱり継続するためには進化していかないと。そういう意味で、無観客試合に取り組むノアには可能性を感じましたよ」

 ただそこで、ノアに溶け込もうとするわけではなかった。武藤敬司はあくまで武藤敬司。今の選手とは生きてきた時代が違うし、だからこそ価値がある。今回のタイトルマッチに関しても、ここまで潮崎が見せてきた長時間の激闘は「俺のバイブルではない」と武藤流の言葉で表現している。

「プロレスラーにはそれぞれ自分たちの哲学があってね。その一つがノアのスタイル。ただ俺の哲学、俺のバイブルはノアとは違うんですよ。GHCの試合(タイトルマッチ)をいくつか見たけど、俺は“省ける部分があるな”と考えるタイプ。ロングマッチをするのがいいというのは俺の哲学ではないんでね」

 今のプロレスは“技のデフレ”が起きていると武藤は言う。

「ハルク・ホーガンはギロチンドロップだけで数千万もってく。俺たちはムーンサルト何回もやって……と」

 次々と大技を繰り出すスタイルが“技のインフレ”と表現されることもあるが、武藤は同じことをデフレだと言う。技1つあたりの単価が安くなっているというわけだ。曰く「俺はインフレの技を研究してきたから。その哲学をぶつけたい」

 武藤の頭の中には、ネット中継で試合を見るファンのことも入っている。

「スマホで見る人が多いわけで。チンタラ、まったりした試合を長々やってたらすぐにチャンネル変えちゃうよ、若い人は。スマホで見ても『なんだこれ!』ってなる試合しないと」

 狙うは“ノア流”ではない短時間での決着か。しかし大会1週間前の調印式では「90分やれる体力をつけてきた」とも。実際の試合時間は60分だが、長時間の試合も余裕でできるということか。このあたりはベテランらしい揺さぶりとも取れる。今の武藤はとにかく自信に満ち溢れている。調印式ではこんな言葉も。

「いろんな面で俺のほうが見劣りするのかもしれない。それでも、負ける気しねえんだよな」

 コンディション的にも、それだけ手応えがある。ヒザには人工関節が入っているが、結果として手術前より動けるようになった。

「日々のトレーニングは昨日の武藤敬司に負けないように、と。歳を取るとだんだん負け越してくるんだけどさ。ただ俺の暗黒時代は45歳から55歳くらい。ヒザが痛いからトレーニングできないし、それでも試合はしなきゃいけないしで。その時期に比べたら今は全然いい。練習できてるからね」

 昨日の自分に負けまいとトレーニングに励み、トップ戦線で闘い、タイトルにも挑む。そのパワーとバイタリティーはどこからくるのか。本人に聞いてみた。

「それはプロレスやってるから。根が不真面目だからね。プロレスやってなきゃ練習もしない。オファーがあるから頑張ろうとなるし。次は武道館だ、頑張ろうと。また今はフリーだから。経営のことも気にせずプロレスに没頭できるんだよな。自分の団体だったら、育てた選手に対して“しょっぱい試合しやがって”とかもある。今はそれもないからね。本当に充実してますよ」

 キャリアの中でIWGPヘビー級(新日本プロレス)、三冠ヘビー級(全日本プロレス)のベルトを巻いている。ノア・GHCヘビー級戴冠を果たせば“メジャータイトル制覇”となる。

「昔から、俺がベルトを巻くとその団体は景気よくなるんだよ。全日本にも新日本にもそういう時期があった。まあ今回、俺が(ベルトを)獲ったら賛否両論だとは思うよ。でも関係ねえよ、そんなのは」

 何より存在として圧倒的。立場として挑戦者なのは武藤だが、この試合には潮崎が“武藤敬司という巨大な存在”に挑むという面もあるのではないか。取材すればするほど、そう思わされる。

文/橋本宗洋

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58歳での戴冠を狙う武藤

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