コロナ関連死者の解剖による“死因”究明を 法医学者「亡くなった方から得た知識を生きていく方に還元したい」
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 新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にある一方、死亡者数は増加傾向にあり、10日には過去最多の121人に達している。

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 そんな中、国会で質問に立った医師でもある公明党の秋野公造参議院議員は「死に至る原因として、重症肺炎と血栓によるものが海外の文献で明らかとなっている。しかし、我が国においても同様なのか判明していないのは残念。“死因究明”を適切に進めることで、死に至る重症化の原因を調べる必要があると思う」と指摘した。

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 日本法医病理学会理事長も務める和歌山県立医科大の近藤稔和教授は「最近、宿泊施設や自宅等で感染者が突然亡くなるという事例が報じられている。そうした場合、きちんと死因を究明する必要があるが、我が国では解剖するところまでは十分に行われていない。確かに持病がコロナ感染によって悪化して亡くなった場合、基本的には“コロナ関連死”と考えられる。ただ、病態の違う様々な死因が全て“コロナ関連死”という形でまとめられているので、十分に解明されていない部分がある。例えばコロナ感染者は血栓ができやすいということが早い時期から言われているが、それによりどのように亡くなったのか、本当はそこを解明していかなければいけないと思う」と話す。

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 また、そうした解剖には予算や人的リソースの問題があり、「我々解剖医は、一人では解剖できない。必ず補助スタッフや検査スタッフ等が必要になる。もちろんハード面や施設面でも整備が必要だ。そのために十分な予算があるかといえば、まだまだ満たされていないと言える。また、もともと日本においては犯罪性の有無を重視した、警察と共に行う解剖に重きを置いてきた。そのため、行政解剖は東京、大阪などの大都市でしか行われていないなど、解剖のためのシステムが十分できていない」と実状について語った。

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 そして解剖の大きなハードルになっているのが、遺族感情であるといい、「宗教観や、法医学がヨーロッパを中心に発達した学問だということもあるかもしれないが、私がいたミュンヘン大学では、年に約2500体の解剖をこなしていたし、そのための法制度も整っていた。一方、日本的な感覚でもあるが、多くのご遺族に、亡くなった方にメスを入れたくないという気持ちがあると思う。だから我々がご遺族の同意をいただく時にお話ししているのが、解剖という行為は“人が受ける最後の医療行為だ”ということ。単に身体に傷をつけるだけではなく、亡くなられた原因を明らかにすることが尊厳を守ることにもつながる、ということだ。実際、解剖後に結果を説明させていただくと、承諾して良かったと言っていただける場合も多い」と言及した。

 その上で近藤教授は、解剖の意義について「確かに我々が解剖した結果が直ちに治療や新薬の開発に活かされるというわけではない。しかし、例えばドイツのデータを見てみると、肥満の合併率が高いことが亡くなっている要因の一つに挙げられている。そういうことが分かってくれば、リスクファクターの高い方に対する集学的な治療も行えるし、血栓症を防ぐことにつながれば、死亡率を下げることにもなると思う。亡くなった方から得た知識を、今これから生きていく方々に少しでも還元したい。それが解剖の役割だと思っている」と訴えた。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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