2月12日に開催されたプロレスリング・ノア日本武道館大会を象徴するカードの一つが、丸藤正道&秋山準vs清宮海斗&稲村愛輝だった。
丸藤と秋山はノア旗揚げ時の所属メンバー。何度も武道館大会を経験している。対する清宮と稲村は20代。11年ぶりの武道館大会で、初めて“ノアの聖地”を体感した。ノアの過去と現在、未来を詰め込んだ対戦と言っていい。
序盤、まずは大型の稲村が秋山にタックルを連発して見せ場を作る。久々の武道館は終着点ではなく、これからのノアを切り拓くためのもの。若い選手の活躍が欠かせない。
だが、清宮はベテランタッグの厳しい攻撃に捕まってしまう。重い打撃に加え、前哨戦での丸藤に続いて秋山も徹底した腕攻めだ。
これまでほとんど組んだことがないという丸藤と秋山。現在はDDTで闘う秋山に丸藤が呼びかけての“古巣参戦”だったが、それでも呼吸は合っていた。どちらも攻め時を逃さず、丸藤のフックキックから秋山のエクスプロイダーにつなげる連携攻撃も。
だが清宮&稲村はベルトにも挑んだ正規タッグ。チーム力で負けるわけにはいかない。稲村がGEKITOTZ(ぶちかまし)で相手を吹っ飛ばし、それをキャッチした清宮がジャーマン。主導権を握られながらも反撃していった清宮は、終盤も丸藤の打撃に追い込まれたが屈せず。
フラつきながらもロープリバウンドで勢いをつけ、大きく飛び上がると普段は見せない頭突き。不意を突かれた丸藤は大ダメージを負う。そこにジャーマン、そしてタイガースープレックス。大舞台で新世代・清宮が丸藤から3カウントを奪った意味は大きい。
「まだまだ2人でグレードアップして、明るい未来を切り拓いていきましょう」と稲村。清宮は「ナンバーワンのレスラーになって、また秋山さんと」と再戦を望んだ。
この大会のメインイベントでは、武藤敬司が潮崎豪を下してGHCヘビー級チャンピオンの座についた。そこに立ちはだかったのが清宮だ。
「武藤さんの偉大さは分かってます。でも“今”じゃない。もともと俺が潮崎さんに獲られたベルト。俺が取り返します」
そう語った清宮は、SNSでも「俺が獲る」と宣言。58歳のタイトル奪取が話題になった武道館大会だが、それを追う新世代の躍動にも注目しておく必要がある。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア