2月14日に開催されたのは、今年初のビッグマッチとなるカルッツかわさき大会。メインイベントのKO-D無差別級タイトルマッチで、秋山準が遠藤哲哉に挑戦した。
秋山は昨年末のシングルリーグ戦で優勝。51歳にして文句なしの挑戦権を掴んだ。ただリーグ公式戦では遠藤に敗れており、リベンジマッチでもあった。昨年、ゲストコーチ就任とともにDDTに参戦、全日本プロレスからのレンタル移籍も果たした秋山。ユニット「準烈」も結成しており、このタイトル戦はDDTでの一つのクライマックスと言ってもよかった。
若いチャンピオンは大舞台のたびにキャリアの絶頂期を更新しているような選手。この試合でも足攻めからサスケスペシャル、旋回式トーチャーラックボムとオールラウンドな闘いぶりを見せる。
(迫力ある大技でたたみかけ、遠藤を仕留めた)
対する秋山も同じ土俵に乗る。ベテランのインサイドワークに頼らない“力勝負”だ。ゴツゴツとした打撃。ジャーマンでコーナーに投げ捨てるとエクスプロイダーは雪崩式でも繰り出す。熱戦の中、遠藤の最大のフィニッシュ技であるシューティングスタープレスをかわす冷静さも。リストクラッチ式エクスプロイダーは遠藤がカウント2で返したが、さらに秋山はスターネスダストαの変形バージョンでフィニッシュ。
新王者となった秋山にベルトを渡したのは、特別立会人の小橋建太氏だ。DDTのリングで小橋氏が秋山にベルト贈呈。少し前までなら信じられない場面だ。この2日前にはノア日本武道館大会で武藤敬司がGHCヘビー級王者になった。DDT王者が秋山でノアの王者が秋山で、1月にはDDT出身の飯伏幸太がIWGP2冠王になっている。こんな時代が来るとは誰も想像できなかった。
しかも大会後、武藤はノア、秋山はDDTに正式入団。秋山はヘッドコーチも兼任することになった。
全日本時代は社長就任もあり最前線から一歩引いたポジションだった秋山。しかしDDTで“大社長”高木三四郎の「新日本に追いつけ、追い越せ」という言葉に決意を新たにしたという。また秋山は試合後のリング上で、ツイッターでやりとりのあった男色ディーノの名前も出している。プロレスの“本道”をDDTに叩き込むという秋山。しかしDDTはディーノたちが作り上げた“本道から外れた面白さ”が魅力の団体でもある。
「男色ディーノと、本道を掲げた俺のどっちがDDTなんだと彼は言いたいんだと思う。でも新日本と勝負するわけだから。何で勝負するかっていったらプロレス。ディーノのやってることは嫌いじゃない、俺も大阪出身だし。でも勝負となったらそこじゃない」
新日本との勝負を掲げながら、同時にDDT内部にも“本道vs文化系”の構図を作り出す秋山。闘いぶりだけでなく言葉の操り方もアグレッシブだ。そんな秋山は古巣ノアの2.12武道館大会にも参戦。丸藤正道と組んで清宮海斗&稲村愛輝の新鋭タッグと対戦している。
「清宮、最後泣いてたと思うんですよ。俺が語りかけて。“こいつはリング上で純粋に泣けるんだな”って、自分もうれしくなった。頑張ってもらいたいですよ。いつかまたリングで会おう」
清宮やDDTの竹下幸之介といった、キャリアの早い段階から期待され、トップ戦線で闘う選手にかかるプレッシャーを秋山は理解している。自分自身がそうだったからだ。古巣で感じた刺激があり、それが新天地でのベルト奪取につながった。そんな流れもまたドラマチックだ。秋山自身はベテラン。しかしDDTのベルトをもってリングに上がる姿はとてつもなく新鮮だ。
文/橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング