髪の再生、老化防止も…“iPS細胞”は個人が持つ時代? 約1億円の作製費用も低コストに
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 iPS細胞は、万能細胞の一種で、さまざまな臓器に分化できる細胞だ。自分の細胞から作ったiPS細胞を活用すれば、臓器移植をした際の拒絶反応が避けられるなど、これからの活用が期待されている。京都大学の山中教授が作製に成功して以降、医療のさまざまな分野で研究が進められてきた。

【映像】動いてる…? iPS細胞で作った「心筋シート」

 日本人が設立し、アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置く、スタートアップ企業「I Peace, Inc(アイ・ピース)」では、医療用iPS細胞の製造・販売事業を本格的に開始した。同社では、京都府内の工場でiPS細胞を大量生産し、海外の製薬会社などに供給。作製したiPS細胞は、心臓疾患の治療に使用する「心筋シート」などに活用されている。その中でも注目を集めているのは、希望者自身のiPS細胞を作る個人向けサービス「MiPSC(マイピース)」だ。

 個人のiPS細胞を作製し、保管する――いったい、どのような事業なのか。同社のバイスプレジデントである神谷友里江さんは、iPS細胞由来の再生医療に言及する。

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「例えば、自分のiPS細胞を持っていれば、将来自分が癌になってしまったら、癌に対して攻撃性のある細胞を自分のiPS細胞から作って、癌に攻撃性の高い治療ができる。ほかにも、自分が心臓病になって心臓の一部が壊死してしまった場合、iPS細胞があればそれを心筋にして、その心筋細胞を移植できる」

 すでに、I Peace, Incでは日本人を含む数人が、MiPSCを活用し、自分のiPS細胞を作製しているという。目的は「病気治療」「髪の再生」など、人それぞれだ。

 CEOである田邊剛士さんによると、I Peace, Incは「自分のiPS細胞がある未来」を目指していると明かす。

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「私たちがいつも言っているのは『生まれたら自分のiPS細胞を持っておく時代』の実現。人間の細胞の中にはゲノム(DNAの遺伝情報)があって、そこに遺伝子が乗っている。病気になるのは、ゲノムに傷がつくから。傷ついたゲノムは治すことができない。だから、本当は生まれたら、自分のiPS細胞を作って持っている状況がいい」

 医療におけるiPS細胞の活用が実用化するには、倫理的な問題など、課題は多くある。しかし、同社は「iPS細胞は小さいが、頼れる存在だ」と期待。iPS細胞の可能性を信じている。前述の神谷さんによると「iPS細胞は思った以上に開発が進んでいる」という。

「みなさん言葉として『iPS細胞』を知っていると思う。ただ、自分の身体のために使える印象を持っていない人が多い。私もそうだった。今iPS細胞は、たくさんの企業に開発されていて、思った以上に研究が進んでいる。近い未来、みんなiPS細胞を持つ時代が本当に来るんだよと伝えたい。そのために、たくさん仲間を増やしてボトムアップしていきたい」

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■ 「これまで1億円がかかっていた」短期間&低コスト化で個人も利用できるように


 このニュースに日本初の個人向け大規模遺伝子検査・解析サービスを手がけるGenequest(ジーンクエスト)の代表取締役・高橋祥子さんは、実際にカリフォルニアにあるI Peace, Incに行った経験があるという。

「見た目はガレージだが、中に入るとしっかりラボ(研究所)がある。まさにシリコンバレーという感じで、これから急成長していくベンチャー企業の1つだと思う。今、研究に使われているiPS細胞は、人間の中で最も多い遺伝子型に合わせたものを作製しているが、将来的には個人個人に合わせたiPS細胞を作る方向になっていくだろう」

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 さまざまな可能性を秘めているiPS細胞。高橋さんによると「これまでiPS細胞の作製に約1億円が必要だった」という。I Peace, IncにはiPS細胞を大量生産できる技術があり、この優れた技術を使って、短期間かつ低コストを実現。それでも、MiPSCを利用するには、サービス費用200万円(税別)と年額の保管費用3万円(税別)が必要だ。

 この値段に高橋さんは「高いと思われるかもしれないが、これまで1億円かかっていた作製費用と比べるとかなり安い」と断言。

「iPS細胞はすぐ使えるものではないが、将来自分が病気になったときや、毛髪や肌の再生などの分野でも使える可能性がある。今は、iPS細胞を使って疾患領域の研究が主に行われているが、これ以外の領域にも使われていくと思う」

 iPS細胞によって病気や不老を防ぐ――そういう未来が、思っていたよりも早く来るのかもしれない。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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