2020年10月よりシリーズ第3期が放送されている大人気TVアニメ『おそ松さん』。
松野家の6つ子たちを中心として、ハイテンション、シュール、ブラック、オマージュ……なんでもありな展開で毎回楽しませ、時にホロリともさせてきた『おそ松さん』。第3期では、新キャラクターであるAIロボット「オムスビ」の登場も、新たなエッセンスとして話題となった。
ABEMA TIMESでは、そんな『おそ松さん』第3期の最終話を前にキャストやスタッフにインタビュー。本稿では、遠藤綾さん(トト子役)、山下七海さん(橋本にゃー役)、斉藤貴美子さん(ドブス役)による座談会の後編をお届けする。
トト子とにゃーは、どこかでお互いを認め合っている仲なんです
――前編では、にゃーやドブスのことをお聞きしました。トト子はこの2人との絡み以外もいろいろ登場していますが、第3期のトト子で特に印象的だったのはどこでしょうか?
遠藤:やっぱりにゃーちゃんとやり合う話数(第4話「コンビ結成」)ですね。今までのトト子と違いすぎて、衝撃的でした。今までのトト子って、「私可愛い」とか悪気なくポンと言ったりする、どちらかと言うとツッコミではなくボケだったんですよ。でも、にゃーちゃんに対しては自分の感情が追いつかないぐらい畳み掛ける感じで。こういうトト子もあったんだ、これはどういう風に演じるのが正解なんだろう……と思いましたね。
斉藤:2人が楽屋でやり合って、にゃーちゃんに子供がいるとわかるエピソードですよね。
遠藤:そうそう。にゃーちゃんが過労で倒れちゃって。
斉藤:え!? って。そこから、にゃーちゃんに対する当たり方が変わりましたよね。今までは「何やってんだ、この野郎!」みたいな感じだったのに。
遠藤:あれを見て、トト子はにゃーの先輩だったんだ、と改めて気づきました。
山下:うんうん。
遠藤:普段のトト子なら、にゃーちゃんが倒れたら「じゃあ、私がアイドルで一番!」みたいになっていたと思うんですよ。でも、そういう事情があるんだったら話は違うと。
斉藤:どこかで(心から)嫌いではなかったんでしょうね。だからこそ、好き勝手言い合えるのかなと。そういう関係は、見ていて嫌いじゃないです。
遠藤:そうなんです。なんだかんだ支え合っていた部分があるのかなって気がします。それに、ふんわりした柔らかい生き物(赤ちゃん)がいると、こんなにもいい人間になれるんですね(笑)
山下:いい人間に(笑)
遠藤:トト子の人間味のあるところが見えました。にゃーちゃんができないことは仕方ない、私が助けない理由はないよね、といった感じが格好良かったです。
山下:お互いに認め合っている部分がどこかにあるからこそ、にゃーちゃんもトト子ちゃんに「いま崖っぷちなんだ」と話したわけで。
遠藤:悩みをあんなに風に言ってもらえたのも、すごく意外だったと思うんです。そこまで切羽詰まっていたんだと。でも、もしそれを言われなかったら、オープニングのようにお茶したりしなかったよね。
山下:ですよね。ここから新しいトト子ちゃんとにゃーちゃんの展開が広がったと思います。
遠藤:赤ちゃんのためにもお金を稼がなきゃいけないし、コンビを組もう! ってね。でも、やるのがプロレスって(笑)
山下:そこがいいですよね(笑)
――ある意味、とても息の合う2人だなと思います。
斉藤:ずっと思っていることがあって。にゃーちゃんがITのお金持ちと結婚して、一瞬の嫉妬があったと言いながらも、トト子はトト子の道を進んだじゃないですか。そこで本格的な嫉妬にいかなかったのが、2人の関係性を全て物語っている気がするんです。子供ができて、こういう状況になっても、ざまぁみろではなく、女として焦って私も結婚しなきゃでもなく。気づいたら子供とにゃーちゃんに寄り添っているトト子、という関係性がね。
遠藤:時々にゃーちゃん家に赤ちゃんを見にいっているし(笑)
山下:プロレスの後も一緒に帰ってきたし。なんなんでしょうね(笑)
遠藤:本当に一緒に育てるぐらいの気持ちがあるのかなと思いました。トト子でも足りない時は、ドブスさんが来て。
山下:本当に恵まれています。
斉藤:子供は(ドブスに)すごく懐いているよね。きっと母性があるんだと思う。だって、あの顔を見ても子供が泣かないんですよ。むしろ、プロレスの時にお母さんたちが怖いと言って、ドブスのところに寄ってきましたから(笑)
遠藤:赤ちゃんの存在はとても大きいですね。
山下:そう思います。
遠藤:この話数によって、トト子を演じる上で幅が広がったと感じました。
――話を聞いていても、本当にいい関係ですね。ただひとつ、アイドルに対するこだわりだけは相容れないようでしたが。
遠藤:魚は譲れない! お魚屋さんなので!(笑)
山下:私(にゃー)は魚を止めろって言っているんですけど(笑)
遠藤:隙間を狙っていきますよ。
新キャラクターのオムスビが『おそ松さん』にもたらした効果とは?
――第3期では、新たな要素としてAIロボットのオムスビが登場しました。全員が絡んだわけではないですが、オムスビの印象やエピソードの感想をお聞かせください。
遠藤:『おそ松さん』って新キャラとか出てくる世界なんだっけ? とビックリしました。でも、新しいキャラが出たことで、すでにいるキャラクターを一から紹介できた気もします。
斉藤:より掘り下げられましたよね。オムスビの存在によって、6つ子たちそれぞれのダメさや面白さが深堀られたというか。
遠藤:改めてこういう6つ子でしたよね、って。
山下:そうそう。
遠藤:でも、トト子としては点数をつけられるのは心外でしたね。しかも、最後は点数ですらなかったですから。「うんこです」って(笑)
山下・斉藤:あはははは!
遠藤:うんこって何点なの? みたいな。
▶見逃し配信中:オムスビが付けたトト子の点数とは…?「おそ松さん」#3
――あのシーンのトト子ちゃんはかなり怖かったです。
遠藤:今までは100点満点としか言われてこなかったので、自分のことをこうやって評価する人が周りにいなかったと思うんです。にゃーちゃんは別として。だからこそ、低い点数の意味がわからない。ましてや、うんこなんてもっとわからない。客観的に判断しましたと言われて点数が低かった時は、これまで味わったことのない感覚にカチンときたんだろうなって。
斉藤:認めていなかったよね。
遠藤:認めないですよ。そんなわけないんだもん。98点でも「あれ? 100点じゃないんだ」って。
山下:強い。そのまま生きて欲しいなぁ(笑)
――にゃーは、オムスビとは直接絡んではいないですよね。
山下:そうなんですよ。でも、オムスビに十四松とイヤミがシェーのことを教える回(第9話)がめちゃめちゃ好きで。改めて、私もシェーについて考えちゃいました(笑)それも深堀りですよね。イヤミのシェーについて知ることができたり、十四松が気を使うという新たな一面を見ることができたり。十四松、ちょっと格好いいなって。
▶見逃し配信中:シェーの意味が分からない双子のAIロボットは…「おそ松さん」#9
遠藤:え!? 格好いい?
山下:あれ? あれあれ? ときめきましたよ?
遠藤:まぁ、第3期はちょっと常識がある感じがしないでもない……。
山下:そんな感じで、オムスビとおそ松くんたちの絡みは面白いなと思って見ていました。にゃーちゃんも(オムスビと)絡みたかったですね。
遠藤:何点って言われるんだろう?
山下:ね。
斉藤:AIによって客観視されるのってすごいですよね。数値化されるわけですし。そのAIさえも結果的にあんなことにさせてしまう6つ子は、さらにすごいと思いますが。
――ドブスはどう評価されますかね? AIによって客観視されると。
斉藤:いや、“概念”だから(笑)
おそらく、何点でも気にしないんじゃないですかね。ドブスは自分のことをブスって思っていないですし、トト子ちゃんとは違うベクトルで気にしなさそう。全てを受け止めた上で、気にしなさそうです。
遠藤:そうよね~、みたいな。
6つ子の中で誰かを選ぶとしたら、3人の決め手は!?
――新キャラクターの登場もあって、6つ子たちの印象も第3期では少しずつ変わったと思うのですが、現実にいたとしたら誰を選びますか? 山下さんは十四松が格好いいんですよね。
山下:そうですね。第3期では。
――それは最初の頃から?
山下:いや(即答)。あ、いやとか言っちゃった(笑)
今までは、この子がというのは特になかったんですよ。でも、第3期では、十四松って何気にサバイバル能力があっても最後まで生き残っていそうだなと思って。世界に2人しかいなかったら守ってくれそうだし、ありだなと思いました(笑)
斉藤:それは、恋人として選ぶってこと?
山下:どうなんだろう? 無人島設定なら生き残れそうだなって。人間の本能ですかね。
斉藤:でも、十四松みたいにぱ~っとしている方が、一緒にいて楽しいですよね。私もぱ~っとしているので。
遠藤:気が合いそう(笑)私は、十四松もそうですけど、なんか第3期でそれぞれのキャラクターの伸びしろを感じてしまったんですよ。
斉藤:わかる!
遠藤:余白がすごくあるなと思って。(アニメでは)描かれていないところで、実はこういう面もありそうだなと。それに、みんな基本的に優しいと思うんです。
山下:うんうん。
遠藤:だから、こうなんじゃないかっていう理想もいれちゃうんですよね(笑)
斉藤:そうなんですよね。第1期の時は、6つ子の持っている色がそのまま「赤」とか「黄色」とか鮮明に出ていたのに、第3期になると「赤を作るための要素」まで色濃く見えてきたというか。単純に「明るいから十四松がいい」「猫が好きで癒されそうだから一松」ではなくなりましたよね。期を経るごとに、推し松が変わっている人もいると思うんですよ。
遠藤:いそうですよね。第1期はプロフィール通りの印象がありましたけど、第2期や第3期、特に第3期は「十四松がこんなに賢いことを言うの?」とか「一松、やっぱりあったかいんじゃん」とか。そういう(今まで見えなかった)面が出てきて、ちょっと印象が変わったところもあります。
山下:変わりましたよね。
斉藤:変わらないのはトッティ(トド松)ぐらいかな(笑)
遠藤:でも、なんだかんだで、みんなと仲良くなれそうな気がします。
斉藤:それぞれの良さがありますからね。
遠藤:あ、でも、おそ松はちょっとわからないかな。おそ松ってにゃーちゃんとの件でも思ったけど、いざという時に殻に閉じこもるじゃないですか。
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――デートに誘われたのに、結局ビビりましたからね。
遠藤:だからもし2人きりになった時に…
山下:頼りないかもしれない。
斉藤:そこでいけないのが6つ子なんですよ(笑)
――結論が出なさそうなので、「みんないい」ということにしておきましょうか。
山下:はい。みんな仲良くなれそうです!(笑)
――では最後に、いよいよ第3期も最終話となりますので、楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
遠藤:『おそ松さん』って、永遠と劇団のようにいろんな役をやっている印象が強くて。ボディブローを効かせながら、このままずっとやっていそうなんですよね。だから、収録でも「最終話なんだ……」という気持ちはもちろんありましたが、それ以上に「第25話をやった」という感覚でした。次に繋がるように終われたというか、単に第3期はここまでというか。皆さんにも最終話という気持ちではなく、第25話を楽しむ感覚で見てもらえたら嬉しいです。
山下:私は、劇場版の舞台挨拶で初めて『おそ松さん』のイベントに出たんです。そこでファンの方々から、にゃーちゃんへの反応やトト子とにゃーちゃんの絡みに対する感想をいただきました。すごく受け入れてもらっていると実感した上での第3期でしたので、トト子やドブスちゃんと絡む中で、今までにない一面を皆さんにお見せできたことが嬉しかったです。次回が最終話ではありますが、にゃーちゃんの人生としてはまだまだ続いていきます。みんなと仲良く、喧嘩もしながら、はちゃめちゃに頑張っていきたいと思います。
斉藤:本当に最終話という感じがしないんですよね。『おそ松さん』はいい意味で日常を切り取っているから、永遠に続けられるというか、ずっと見ていたいと思える作品じゃないですか。私もいちファンとして来週から何を見ればいいんだ! と思ってしまいますが、ぜひ最終話をしっかり見届けていただきたいです。エンディングクレジットの公開悪口までちゃんと(笑)
私、大好きなんですよ。この作品が。こんなに笑わせてくれて、良くも悪くも無責任でいられる作品が今の日本には必要だと思うので、何も考えずに楽しんでいただけたら嬉しいです。これからも『おそ松さん』をよろしくお願いします。
取材・テキスト:千葉研一
TVアニメ「おそ松さん」第3期 3月29日(月)深夜1時35分よりテレビ東京ほかにて最終回放送!
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【第5松】4月23日発売!
発売元:エイベックス・ピクチャーズ
(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会