競合覚悟の1巡目指名が、本人もまさかの単独指名となった。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」の大会に先立ち行われたドラフト会議の模様が3月27日に放送された。関西トップ棋士の一人である稲葉陽八段(32)は、1巡目に一流の振り飛車党・久保利明九段(45)、2巡目には詰将棋に定評のある船江恒平六段(33)を指名。3人とも加古川観光大使によるチームを結成した。久保九段は、同じ振り飛車党の菅井竜也八段(28)と指名が競合する可能性もあったが「取るつもりなら1巡目じゃないと」と、堂々と取りに行った結果が功を奏した。
むしろ単独指名が意外だった。ドラフト会議で隣に座っていた菅井八段は昨年、久保九段から指名を受け、「チーム振り飛車」のメンバーとして戦った。稲葉八段からすれば、当然1巡目で指名が入ると思っていたところ、あえてぶつけに行ったが、結果は単独。「私が指名しなくても、(くじで)指名が外れた人が指名していてもおかしくないので、2巡目までに残っている可能性は低かったんじゃないですかね」と、菅井八段が2巡目で狙っていたことについてコメントした。
稲葉八段も、久保九段とは縁がある。小学校、中学校の先輩にあたる同郷の棋士で、将棋もたくさん教わった。「フィッシャールールを練習した時、振り飛車が手強いと思ったので、振り飛車の第一人者と組めるのはよかった」と、もちろん大きな戦力としての指名でもある。同世代の船江六段を加えた3人組は、チームワークの面でも、戦い方のバランスにおいても問題なし。なにより加古川のつながりがある。「出る以上は優勝を目指したいと思います」と、目標は一番高いところに置いた。結果がイメージどおりのものになるとすれば、それはドラフト会議での覚悟の1巡目指名からつながっている。
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。