今年は将棋界でも稲穂が揺れる。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」の大会に先立ち行われたドラフト会議の模様が、3月27日に放送された。リーダー棋士の一人、広瀬章人八段(34)は1巡目で丸山忠久九段(50)、2巡目で北浜健介八段(45)と、自身も含めて3人とも早稲田大学出身という「チーム早稲田」を作り上げた。「非常に明確なテーマです」と、昨年の麻雀好きよりもさらにはっきりとした狙いを持っていたことを明言。まさに将棋界版の稲門会とも呼ぶべきチームが、多数の在校生、OB・OGの応援を背に受ける。
ドラフト会議前のインタビューでは、「言ってしまうとわかってしまうので」と、コンセプトに対してのコメントを避けていたが、その答えがこれだった。「自分の人脈というか、そういうものを活かしたいと思いまして。大学に棋風が出る?将棋においては個性なので、あまり関係ないですかね」と、その自由と多様性が魅力の早稲田OBたちだけに、それぞれが信じる将棋をのびのびと指す。
丸山九段は名人2期、棋王1期と実績十分。「昨年、森内さん(俊之九段)や三浦さん(弘行九段)という実績のあるベテランにさしかかってくる棋士が、フィッシャールールでも強かった」と、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算、という超早指しにおいて、地力さえあれば若手と十分に戦えると見た。また北浜八段には「ここ数年で振り飛車党に転向された。チームメイトに振り飛車党がいると、対戦相手からしたら絞りにくいし、戦略的にもバランスが取れる」と、戦術面においても貴重な先輩だと語った。
厳しい将棋の道で精進しながら、同じ大学に通った3人組。その絆で勝利をつかんだ時に歌うのは校歌か、それとも紺碧の空か。
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。