コロナを機に自民党内で盛んに議論がされてきた「選択的週休3日制」。一億総活躍推進本部の猪口邦子本部長は6日、「子育てや介護、勉強を続ける、ボランティア活動、あるいは地方兼業といったことのために“週休3日制を申請したい”。そういうオプションが開かれるように」として、議論を深めていきたい考えを述べた。
政府も検討に前向きで、いいこと尽くめかと思われる週休3日制。しかし、ネット上では「その分給料や年金が減ったら意味ないんだけど」「一部の人に負担が偏りそうな気がする…」と不安を感じる人も。さらには「会社のための人件費削減の制度に見える」といった声もあがっている。
選択的週休3日制は日本にマッチするのか、国はどんな社会を目指しているのか。8日の『ABEMA Prime』は議論した。
■すでに導入している民間企業も、国が主導する意味
自民党で議論されている週休3日制について、同志社大学政策学部教授の太田肇氏は「理念としてはすばらしいと思うが、現実の条件を考えるとうまくいくかなという不安はある」と話す。
民間企業では週休3日制をすでに導入しているところもあり、ヤフーやみずほフィナンシャルグループは「休んだ分は減給、または無給」、ファーストリテイリングは「一日の労働時間を増やし給料維持」、日本マイクロソフトは「生産性を向上し労働時間を減らして給料維持」といった施策をとっている。
この制度を国が主導することについて、太田氏は「日本の場合、国が旗を振るとみんなついてくるということはある。どうしてもそういうトップダウンになるのだろうが、国が決めようという方向が働く人にとっても幸せかどうかはまた別の問題だ」との見方を示す。
BIGLOBEが実施した『働き方に関する意識調査2019』(対象:20代~50代の男女1000人)によると、週休3日制に「賛成」と答えたのは45.5%で、「やや賛成」が34.5%、「やや反対」が13.9%、「反対」が6.1%。20代男性が賛成する理由としては、「趣味を充実させたい」(54.4%)、「日本人は働きすぎ」(38.8%)、「週4日の方が能率が上がる」が上位にあがっている。
その内の「頑張って働いても日本の経済成長は望めない」(29.1%)という点について、太田氏は「最近の若い人を見ていると“欲しいものがない”と。車もいらないし、テレビもいらない。だから、成長しようという意欲も湧かないし、成長してどんないいことがあるんだという感覚の人が多い」と指摘した。
■週休3日制は“週7日労働者”を作るため?
太田氏は、週休3日制のデメリットの1つに「フリーランスへのしわ寄せ」を挙げている。「最近フリーランスが増えている一方で、仕事を発注する側にとってはフリーランスよりも副業の人の方が頼みやすいということがある。つまり、本業があるので比較的低い金額で請け負ってくれると。さらに、本業で知識や技術を身につけているので質も高い。その仕事だけで食べているフリーランスの人は同じ報酬ではやっていけないので、しわ寄せが来るということはよく言われている」と説明する。
週休3日制が可能なのは人や仕事が様々な大手企業だけで、中小企業ではそうはいかないだろうと考える太田氏。さらに労働者不足が叫ばれる中で、週休3日制は両立できるのだろうか。「思い切り生産性を上げないといけない。無駄な仕事を減らして、少ない人数で効率的に仕事をするような体制に変えないと、とてもこれは持たないと思う」。
慶應義塾大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏はこの点が議論の本質だとし、「選択的週休3日よりも“選抜的”週休3日がいいと思っていて、週4日で5日分の仕事が終わった人は、給料を減らさずに3日休めるようにする。今の日本は、上司が残っていたら自分も残らないといけないとか、休みが取りづらい、長い時間拘束することに給料を払うという仕組みだ。だったら、“あの人は4日きっちりやったから3日休めるらしいよ”というところを目指した方がいいと思う」と提案する。
一方で芸人のパックンは、選択的週休3日制に対する政府のもう一つの思惑として、「3日の休みを違う仕事に回して、副業で労働者不足を解消しようとしているんじゃないか。結局、週7日間働く国民を作り上げようとしていると思う」と疑問を呈する。太田氏は「おっしゃる通りだ。地方の中小企業は人材不足なので、そこに副業人材を持ってこようということははっきりと言っている」と答えた。
これに対し、テレビ朝日の平石直之アナウンサーが「5日で終わるものを4日で終わらせた場合は、もう1日分の仕事が来る」と漏らすと、若新氏は「(週休という)休む日というよりも、“自由に使える日”という発想に切り替えていかないと。休日となるから給料はどうする、保険はどうするという話になると思う。抜本的な“正社員・週勤5日が最高”という信仰から脱却できるかどうかだ」との考えを示した。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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