“波乱万丈の人生を生きる金の卵たち=DREAMERS”が、LDH martial artsとの契約をつかみ取り、自らの人生を変えるべくABEMAとLDHが始動させた格闘オーディション番組『格闘DREAMERS』でのサバイバルに挑んでいる。番組のテーマは「拳でつかみたい、夢がある」。とはいえ、厳しい生き残りをかけ、目の前に訪れる数々の試練を乗り越えた先に、思い描いていた夢は果たして存在するのか…。そこで夢を叶えるべく格闘の世界に飛び込む若者が増えるいま、日本の格闘シーンの一線で活躍する選手や関係者に、「格闘技に夢はあるのか?」という共通のテーマをストレートに投げかけるリレー形式のインタビューを実施。第15回目は、プロレスリング・ノアやDDTなどを擁し、自社動画配信サイト「WRESTLE UVIVERSE(レッスルユニバース)」なども手掛ける株式会社Cyber Fightの代表を務める高木三四郎さん。「プロレス世界」からみた格闘技世界の景色、彼自身の胸の内とは――。
― 高木さんはプロレスの立場から見て、いま格闘技界に夢があると思いますか?
高木 夢あると思いますよ。総合格闘技では日本にRIZINという大きな舞台があり、海外にはUFC、ONE Championshipなんかがありますよね。立ち技だとRISE、K-1など、いろいろありますけど。どこも元気で盛り上がっていて、メディアもちゃんと付いている。やっぱり、格闘技ってメディアと結びつかないとなかなか難しいと常々感じていたんですけど、今はその環境がすごく良くなっていますよね。
― 格闘技ブームと呼ばれていた2000年代前半から半ばは、地上波のテレビ放送が必須という時代でしたけど、動画配信がこれだけ広まった今は、環境がずいぶんかわりましたよね。
高木 そうなんですよ。先ほど挙げた以外にも修斗もABEMAでやっていたりして、それぞれ数字が取れていると思うので。今、格闘技コンテンツはメディアから引っ張りだこみたいなところもある。だから以前より、選手にとってチャンスが増えていると思いますね。世間的にも人目に触れる機会が増えたんじゃないかな。
― 格闘技ブームと言われていた時代よりも、むしろ選手にとってはチャンスが広がってるんじゃないか、と。
高木 昔は総合格闘家も立ち技の選手も、まず大会に出ないと食えないっていうのがあったじゃないですか。それもメジャーなイベントにコンスタントに出場しなきゃいけなかった。それって、ひと握りですよね。だから、あとは個人スポンサーに付いてもらったり、ジムやほかの仕事をやりながらでないと食っていけないっていうイメージがあったじゃないですか。その状況がYouTubeという財源が生まれたことで、大きく変わったと思いますね。
― 今や本当に多くの選手がYouTubeをやってますもんね。
高木 やっぱり格闘技とYouTubeって相性がいいんですよ。本来プロレスも軸の部分でYouTubeと相性いいはずなんですけど、どちらかというと格闘技のほうがわかりやすいというか。だから格闘家のYouTuberがものすごく増えてるじゃないですか。あと若い子からすると、格闘技で名を上げれば、YouTuberとしてもいけるみたいな。そこの座組みができつつありますね。実際、下手なタレントより数字とりやすくなってますからね。
― 朝倉未来と朝倉海の兄弟なんかすごいですもんね。
高木 そういう成功例ができていますから。逆にシバターのように、YouTuberからRIZINに出て、結果を残しちゃった人もいる。それが大晦日の地上波で流れたわけですから、「意外とシバター強いじゃん」みたいな感じで、また話題になりましたよね。格闘技はそういう部分を作れたというのが大きいと思います。
― プロレスラーのYouTubeというと、長州力さんをはじめ、昭和のレジェンドレスラーが目立っていて、格闘技とはだいぶ違いますよね(笑)。
高木 プロレスだとどうしても昔話が多いんですよ(笑)。それも、そこそこ数字とってるからいいんでしょうけど。それを超えるものがないっていうのが、今一つプロレスがYouTubeに乗り切れてない部分かなと個人的に思いますね。
― あと格闘家のほうが、そのYouTubeも含めて、無名だった人が急にブレイクする可能性が高い気がするんですが。
高木 そうですね。やっぱり、これから格闘家を目指す人たちにとっては、言い方はアレですけど、“一攫千金”が見えるんですよ。これが変な話なんですけど、プロレスや他の競技より、一攫千金を狙える確率が高いんじゃないかと思わせるムードがあるんです。
― 実際に確率は高いのかもしれないですけど、それ以上に、ムードが大事だったりするんじゃないですか?
高木 そのとおりだと思いますね。格闘家が頂点に行くには、相当な努力と才能がないとダメだと思いますけど、今の土壌が「一攫千金を掴めるんじゃないか」という夢を見させてますよね。そこがすごく大きいんじゃないかな。
― そういうムードができあがると、人材も集まりやすいですよね。
高木 「これはひょっとして俺も金持ちになれるんじゃないの?」って思わせてくれるって、すごく大事なんです。変な話、YouTubeなんて一発当たったら億万長者じゃないですか。朝倉兄弟の住んでるところとか見ると、どう考えてもいいとこ住んでいますからね。そういう意味で、昔だと大会に出ることでしか夢を見せられなかったものが、YouTubeで一獲千金をつかめる可能性が上がったように見えるのが、一番大きいと思いますね。
― 例えば、今回『格闘DREAMERS」に出る人がYouTubeをやっていたら、再生回数が増える効果があったりもしますよね。
高木 そうなんですよ! それはすごく大きくて。しかもインターネットTV(ABEMA)で配信されているんで、ネットとの親和性も高いですから。チャンスをつかみたいと思っている人たちにとってはひとつの登竜門的な舞台になっていると思いますね。
― 勝ち抜けば格闘家として頭角を現すことができるのはもちろん、いろんなきっかけになる舞台かもしれないですね。
高木 成功の軸が「格闘技」だけじゃなく、それプラス「LDH」というのがあるので、それで倍増されてる気がしますね。テッパンのコンテンツですよ。LDHさんが加わることで、一獲千金の確率がまた大きく上がっているし。本当に有望な人たちが集まるだろうなっていう気がしますね。これまでの格闘家にいないタイプのスターも出てきそうです。
― プロレス界から見ると、羨ましかったりもしますか?
高木 それはありますよ。プロレス界もスターを作らなきゃいけないのは同じですから。僕もプロレス界でどうやってスターを作ればいいのかって考えていますけど。古くは新人を募集して、新弟子から育成していくっていう方法がありよね。
― かつてのプロレス団体は、それが当たり前でしたよね。相撲と同じ方式で、時間とお金をかけて。
高木 今はそれだけじゃ難しいので、スカウトや格闘技とは違うリアリティーショーやオーディション番組みたいなものも考えていこうとしてますね。プロレス界も夢がある世界だっていうことを、見せていかなきゃいけませんから。
― では最後に、いま夢を抱いている若い世代に何かかける言葉はありますか?
高木 月並みですけど、「待っていてもチャンスは来ないから、自分でつかみにいかなきゃいけない」ってことは言いたいですね。今回の『格闘DREAMERS』もそうですけど、努力次第では本当に一獲千金が狙える状況にせっかくなってるわけですからね。ただ、自分から動かないことには何も始まらないので、自らどんどん掴みにきてほしいと思いますね。