変異型ウイルスの出現など、全国的に新型コロナの感染拡大が続いている。東京都の小池知事は「政府に対して緊急事態宣言の要請も視野に検討している」と発表。三回目の緊急事態宣言が検討されている状況に、人々の不安も高まっている。
コロナ禍によって注目されている地方移住や二拠点生活以外にも、人気を集めているのが、全国好きな場所を移動しながら仕事や生活ができる“多拠点生活サブスク”だ。
【映像】“ADDress”月額4万円で住める全国各地の物件 自然を見ながら木陰で仕事する人も
神奈川県・鶴巻温泉にある一軒家に集ったのは、初対面同士の3組。3組はそれぞれ赤の他人だが、この家に住むために“引っ越して”きたという。利用者の一人、有明正之さんは「ADDressというサービスで、そのときの気分や季節によって、住む場所を一軒の家や地域にとらわれることなく、各地で好きなときに住めるんです」と話す。
ADDressは、全国各地にある135以上の物件に好きに住める“住宅サブスク”サービス。都会の密を離れ、緑豊かな自然に囲まれた全国各地の物件が、月額4万円(※税込4万4000円)で住み放題だという。公共料金も利用料に含まれている。家には、家電製品など、生活に必要なものは完備されていて、最小限の荷物で引っ越しが可能だ。鶴巻温泉にあるこの一軒家では、部屋はそれぞれ個室、キッチンやお風呂などは共用で、譲り合って使うことになっている。
物件は地元の人が「家守(ヤモリ)」として、管理を管理している。家守は地域の人と利用者の橋渡しをするなど、交流の潤滑油的役割も担っているという。
ADDressの大きな特徴は「一つの物件への滞在は最大二週間まで」というルールだ。そのため、利用者は必然的に各地を移動することになる。この定住しない“アドレスホッパー”と呼ばれる暮らし方が、コロナ禍によって話題を集めているという。
このニュースに明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は「いくら自分で望んだことだとしても、引っ越しはそれなりにストレス負荷がかかるもの。何回も転々とするのは、心身への影響という意味では心配だ」と話す。その上で「“アドレスホッパー”として生活している人は、いい意味で緊張感と解放感を楽しんでいるように見える。ある程度、日常生活や人間関係からの距離を自分の中で線引きしているのでは」との見解を示した。
“住宅サブスク”は、都心を離れたい人の受け皿になるのだろうか。藤井氏は「地方創生の一つとしてはいい取り組みだが、長い目で見て地方の隅々までに人が行くかといったら、そうではないだろう」と予測する。
「実際には北海道や沖縄県などの観光地、関東近郊であれば八王子や奥多摩など、東京から近くて便利か、もしくは人気の観光地に人が集まるだろう。私は秋田出身だが、秋田に人が来るかどうかというと、分からない。一方で、行かないと分からないその土地の良さもある。サブスクでエントリーしてきた何割かが定住できるよう、補助金や現地のサポートなど、受け入れる側がうまく(人を)キャッチできると、良い未来にもつながるのではないか」
各土地で居住者の入れ替わりが激しくなることで地域のコミュニティ形成に支障がでるのではないかという懸念について藤井氏は、「移動・通信手段が発達した現代では既存のコミュニティのあり方が最善とは限らない。またそもそも、地域コミュニティとのつながりの薄さを志向してこのような暮らしをしている方もそれなりに多いと思うので、望まないことを強いることはできないのでは」とした。
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