名を上げるとはこのことだ。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Aリーグの第3試合、チーム三浦とチーム稲葉の対戦が4月24日に放送され、チーム稲葉の船江恒平六段(33)が、スコア3-4の土壇場から相手のリーダー三浦弘行九段(47)、好調の高野智史五段(27)に連勝。大逆転勝利でチームを本戦に導いた。決定局では高野五段から最終盤に15連続で王手をかけられたものの、わずかな時間で正確に回避。チーム初戦では藤井聡太王位・棋聖(18)に1勝1敗と互角に戦った男が、今大会一番の働きでファンからの評価も急上昇した。
スコア1-4の絶体絶命から久保利明九段(47)、稲葉陽八段(32)が連勝し、残り2戦を託された船江六段。「すごい、負けられへん。これで負けたら男じゃないです」と自らを鼓舞して盤に向かうと、格上の三浦九段に対して横歩取りの研究手で勝負。これが見事に成功し82手で快勝を収めた。
そしていよいよ運命の最終局。緊張に震える高野五段に対し、船江六段は「今回、攻めた将棋が(調子が)いいので、気持ちよくやります」とさらに燃え盛っていた。先手・高野五段の矢倉に対し雁木で迎え撃つと息詰まる大熱戦に。勝勢で最終盤を迎えたものの、諦めない高野五段から、15連続で王手をかけられる緊迫の局面が続いた。ただ、ここでも冷静さを失わず、残り持ち時間が数秒でも間違うことなく、詰みを回避。勝利を収めた瞬間は、作戦会議室で見ていた稲葉八段が「いやー!」とのけぞり、久保九段も「いやー、すごい将棋だね」と、ようやく息を吸えるといった名局になった。
自分の負けは、チームの予選敗退につながる。その重圧を受けながら、見事に連勝を飾った船江六段に対し、視聴者からは感動と祝福のコメントが殺到。「凄い熱戦だった」「惚れた!」「ほんま覚醒したか」「これが公認会計士の策略」と、興奮が収まらない様子だった。また本人も「(高野五段戦は)最後もう全然わからなかったですが、どうしても勝ちたかった。チームメイトと戦う一体感が非常に楽しいです。(本戦は)しっかり準備して、いい将棋を指したいです」と胸を張った。予選Aリーグ1位通過はチーム藤井。それでも、ファンの心に最も強く戦い様を刻んだのはチーム稲葉であり、船江六段だ。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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