新型コロナ重症化の原因に、新しい可能性が出てきた。重症化の要因として、すでに肥満や基礎疾患などが分かっているが、研究チーム『コロナ制圧タスクフォース』の発表によると「遺伝子の違い」によって出る影響が、重症化リスクを高めている可能性があるという。
【映像】コロナ重症化リスク A型&B型と比較すると、AB型は約1.4倍高かった(実験結果)
プロジェクトに参加した大阪大学・岡田随象教授によると、65歳未満かつ重症の患者440名に限った解析を行ったところ「日本人集団におけるCovid-19の重症化に関わる遺伝子バリアント(個人差)を1つ見つけることができた」という。
国内100以上の医療機関などが参加している『コロナ制圧タスクフォース』では、国内の65歳未満の重症患者440人と、新型コロナが流行する前に集めた2377人の血液から遺伝子を解析。その結果、この配列の違いがある人は、違いがない人に比べ、重症化のリスクがおよそ2倍だったという。
解析を行った『コロナ制圧タスクフォース』の研究統括責任者で慶應義塾大学・金井隆典教授はこう話す。
「COVID19に感染した2400例の日本人の患者さんの細胞から、遺伝子を検査した。その際、65歳以下の比較的若い方たちの重症化にかかわる、遺伝子多型の遺伝子が一個抽出できた」(以下、金井隆典教授)
重症化との関係が分かったのは、免疫に関わる「DOCK2」と呼ばれる遺伝子領域にある遺伝子配列の違いだ。遺伝子配列に違いがある人は、重症化リスクが約2倍だったという。
「DOCK2は免疫にかかわる遺伝子。過去の報告をいろいろ見ると、免疫を活性化するのに関わっている。免疫の細胞に強く発現している遺伝子で、私たちはこのDOCK2が重症化にかかわるキーな遺伝子、あるいは遺伝子から作られるたんぱく質だろうと踏んでいる。今急いで因果関係を研究しています」
また、この遺伝子配列は日本人を含む、東アジア人のおよそ10%が持っていることも明らかに。その一方、ほとんどの欧米人にはないことから、重症化の原因としては、アジア人が持つ特有の可能性だとしている。
「おそらく、DOCK2は東アジア人に非常に共通する遺伝子多型だと思う。すでに先行研究で、欧米のグループが、その重症化にかかわる遺伝子がいくつか抽出しているが、その遺伝子ではなかった。僕らがファクターXと思っている遺伝子は、東アジア人に多い。ファクターXに、Aタイプの遺伝子とBタイプの遺伝子があるとしたら、欧米人はほとんどBタイプ。でも、10%の確率で東アジア人にはAタイプの遺伝子がある。私たちの研究で、初めてその遺伝子が見つかった」
東アジア人に多いという「DOCK2」の遺伝子。金井教授は「東アジア共通のものであるかどうかは、今後中国や韓国と共同研究ができれば、詳細に分かってくるだろう」としている。
また『コロナ制圧タスクフォース』は、日本人患者の血液型と重症化の関連についても研究。A型、B型の人と比べてO型の人は重症化リスクがおよそ0.8倍と低い一方、AB型の人はおよそ1.4倍高かったことを明らかにした。金井教授はこれらのデータをもとに「よりリスクの高い集団を見つけることができる」と話す。
「AIなどの技術を使って、遺伝情報や臨床情報、あるいは年齢、さまざまなファクターを組み合わせてシミュレーションする。これによって、より確率の高い重症化リスクを持った集団を見つけられるだろう」
金井教授ら研究チームは今後、今回判明した遺伝子配列の違いが重症化に繋がる詳しいメカニズムを調べるとともに国内のコロナ患者の症例をさらに集め、原因遺伝子の特定や変異型の影響なども調べる方針だ。
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