台湾では5月中旬以降、一日の感染者が500人を超える日があるなど感染が急拡大している。
中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務所は17日、「台湾の同胞ができるだけ早くウイルスに打ち勝つよう支援したいと思う」とコメントを発表した。また、「台湾の同胞が大陸製ワクチンの使用を切望していて、当面の急務は政治的障害を排除することだ」と、独立志向が強いとみなす蔡英文政権をけん制した。
一方、台湾の蔡総統は26日、ドイツのビオンテックが開発した新型コロナワクチンの調達をめぐり、「ドイツのメーカーとの契約がほぼ完了していたが、中国の介入により契約ができていない」と批判した。中国の製薬会社がワクチンを提供する意向を示しているが、蔡総統は「製造元から購入することで品質と安全性が保証される」として、これを拒否する構えだ。
ロイター通信によると、台湾にある鴻海精密工業は従業員とその家族にワクチンを接種するため、中国の製薬会社から独自にワクチンを調達することを検討しているといい、台湾の中でも意見が分かれている。
中国のワクチン外交について、ニュース解説YouTuberの石田健氏は「現時点では評価がわからなくなってきた。中国はアフリカや中南米の国々にワクチンを輸出している一方で、有効性が低いというデータが出てきている。アメリカやイギリスなどワクチン接種が進んだ国の輸出が盛り返している状況で、ワクチンをめぐる米中対立が激化するというよりは、西洋諸国が盛り返してくると思っている」との見方を示す。
また、台湾が置かれる状況については、「鴻海は半導体を作っているが、世界的に半導体が不足する中で、アメリカなどからの『ワクチンを打って半導体を止めないでくれ』という圧力が強くなってくる。世界中で起きているワクチン戦争と台湾で起きていることは切り分けて考える必要があり、複雑な状況になっている」と指摘。
日本の政府関係者によると、日本は契約しているアストラゼネカ社製の1億2000万回分の一部を台湾に提供することを検討しているという。この点については、「日本は台湾の支援も申し出ているが、アジア太平洋地域の島国に対してもワクチンを供給する意向を示している。アメリカにつくか中国につくかという二項対立だけでなく、それ以外の国々とどうコミュニケーションをとって日本の信頼を確保していくかはポイントになってくる」とした。
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