ヨーロッパ各地で行われている抗議デモ。これは東ヨーロッパのベラルーシで、ベラルーシ当局に拘束されている反体制派の記者、ロマン・プロタセビッチ氏の解放を求めるものだ。
リトアニア行きの旅客機に対し爆発物が仕掛けられた可能性があるとして、当局がベラルーシの首都・ミンスクに旅客機を強制着陸させプロタセビッチ氏を拘束したこの問題で、新たな動きがあった。
ロイター通信などによると、この問題でベラルーシ当局が旅客機を強制着陸させた根拠としている「爆弾が仕掛けられた」という脅迫メールが、実際は旅客機をミンスクへ向かわせた後に届いていたことがメールサービス提供会社の話によって明らかになった。当局はパレスチナのイスラム組織「ハマス」からこの旅客機に爆弾を仕掛けたとの脅迫状を受け取ったと主張しているが、ハマスは関与を否定している。
“国家主導のハイジャック”ともいわれる今回の強制着陸に対し、世界各国からは強い制裁を加えるという動きが出ている。EU(欧州連合)は、ベラルーシ国営航空などのEU上空通過や着陸禁止の制裁導入を決定。またロイター通信などによると、アメリカ財務省はルカシェンコ政権の関係者に制裁を加える権限を強化する大統領令を作成。さらに、6月3日にベラルーシの国有企業9社に対する制裁を復活し、アメリカ人による取引を禁止するとしている。
そんな中、ベラルーシのルカシェンコ大統領は28日、ロシアのプーチン大統領と会談。ルカシェンコ大統領は今回の件について「我々が着陸させたと軍を批判している。私が悪いというのか」「いくつかの文書をお見せしよう。これを見れば何が起こったのかがわかる。これは昨年8月の大統領選のように、状況を不安定化させるための試みだ」と説明した。
そして翌日は、プーチン大統領とともにクルージングを楽しむ姿を公開。船上での円卓を囲んだ食事や甲板でイルカを見ながら会話を交わす姿を公開し、強い結束感を演出した。また会談では、昨年秋に合意していたベラルーシへの15億ドルの融資のうち、2度目となる5億ドルを受け取る予定であることがわかった。
反体制派記者の拘束を巡り揺れるベラルーシ。ベラルーシ情勢に詳しいロシアNIS経済研究所所長の服部倫卓氏は、この一連の動きについて「政権に歯向かうことをしたらどんなことがあっても政権側は許さないと。たとえ外国に逃れたとしても、世界の果てまで追いかけて我々は捕らえてやるんだというような恐怖心を与える。国内の体制の引き締めという意味からも、今回見せしめのような形でこういうことをやったというところだと思う」との見方を示す。
また、ロシアとの特殊な関係がそういった行動を可能にしているという。「旧ソ連各国の場合は、ナショナリズムをエネルギーにしてロシア離れをしたというひとつの生き方があると思う。しかし、ベラルーシという国の場合は反ロシアナショナリズムみたいなものが希薄で、今回のような国際社会を完全に敵に回すような大それたことをやっても、結局はロシアが尻拭いをしてくれるというところがある。そういったロシアとの特殊な関係というものが、極めて特異なルカシェンコ体制を長期間延命してきた最大の要因だと思う」とした。
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