プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Cリーグ第3試合、チーム羽生とチーム木村の対戦が6月5日に放送された。木村一基九段(47)はこの試合で1勝1敗、さらにチーム豊島を含めた3チームが同率で並んだことで行われた本戦進出チーム決定トーナメントでは1回戦で豊島将之竜王(叡王、31)、1位決定戦では羽生善治九段(50)に連勝した。予選では通算7局を指し、圧巻の6勝1敗。「早指しは若手有利」の定説を吹き飛ばす強さで、本戦出場を掴み取った。
「将棋の強いおじさん」という異名に、少しアレンジが必要なようだ。持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という超早指し戦は、瞬時の判断に勝る若手が有利と言われてきたが、木村九段は個人戦だった第2回から出場し、元気な若手を次々と撃破。団体戦になった第3回以降も、むしろ指し手のスピードで押しまくるほどの早指し力を見せていた。
チーム羽生との戦いでは第1局で中村太地七段(33)に敗れ、今大会初黒星を喫したものの、ここからの3局がまた強かった。第4局でぶつかった佐藤紳哉七段(43)との一局は、相矢倉の出だしから地力に勝るといった内容で快勝。3連敗と沈んでいたチームを活気づけた。
最大の見せ場は、予選通過をかけた本戦出場チーム決定トーナメントだ。3チームのリーダーがぶつかる戦いに1回戦から出場。負ければ予選敗退という重圧の中、豊島竜王に相掛かりの出だしから105手で勝利。さすがにこの勝ちには「私の一局でチームの命運が決まるというプレッシャーは大きいものでした」と、ホッとした顔を見せた。役目を果たした後、研究仲間でもある羽生九段との1位決定戦は、またも得意の相掛かりから気持ちよく手が伸びた。111手で勝利を手にし、チームメイトの元に戻ると、佐々木勇気七段(26)も思わず「改めて木村先生の底力というか、逆境に負けない強さを感じました」と脱帽させた。
後輩たちが苦しむところで最後の砦として登場し、これ以上ない結果を残したベテラン木村九段。そのかっこよさにファンからは「おじおじはやっぱこのルールめっちゃ強いな」「なんやこの強さ」「おじさん今が全盛期だな」と絶賛の声が、いつまでも寄せられ続けていた。「将棋の強いおじさん」改め、「超早指し将棋が鬼強いおじさん」は、きっと本戦でも若手に負けず、どんどん指しまくる。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)