第一人者と呼ばれる者は、細部にまでその目を行き届かせていた。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Cリーグ第3試合、チーム羽生とチーム木村の対戦が6月5日に放送された。この中で羽生善治九段(50)が、プロ歴3年ほどの池永天志五段(28)について、棋風などをさらさらと解説。ファンからは「なんでもくわしい」「若手の将棋も見てる」と、その研究範囲の広さに驚く声が沸き起こった。
羽生九段は、1985年12月に四段昇段してプロ入り。一方、池永五段は生まれが1993年4月、四段昇段は2018年4月と、その人生やキャリアには大きな開きがある。ただ、常に新しい発想などを持ち込み、将棋という無限の世界を切り開く若手が生まれることもあり、ベテラン棋士も常に新しいものを取り入れないと生き残れない厳しい世界だ。
羽生九段が池永五段について語ったのは、第2局前の作戦会議でのこと。対戦する中村太地七段(33)にアドバイスを送った。「(池永五段は)居飛車は結構なんでも、器用に指しこなすタイプですね。なんでもやられます」と、中村七段、さらには佐藤紳哉七段(43)があまり情報を持っていないところをフォローするように説明した。
また第6局では羽生九段自ら、池永五段と戦うことになったが、この対局前でも「矢倉の時は急戦矢倉で来るケースがあるみたい。角換わりだと最新形になる可能性が高い」などさらに詳細を語り始め、池永五段の将棋を研究しているコメントが次々と出てきた。
公式戦で対戦したこともあるため、事前の研究によるものである可能性が高いが、数多くいる棋士の棋風まで瞬時に答えられるほど覚えていたことに、ファンからは「なんでもくわしい羽生さん」「羽生さんは全棋士の棋譜見てそう」と高く評価されていた。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)