早稲田魂を持った3人の棋士が朗らかに、かつ鮮やかに勝ち切った。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Dリーグ第1試合、チーム天彦とチーム広瀬の対戦が6月12日に放送され、チーム広瀬がスコア5-2で勝利を収めた。チーム名「早稲田」のとおり、早稲田大学のOBで結成されたこのチーム。前回大会でも活躍した広瀬章人八段(34)を筆頭に、丸山忠久九段(50)、北浜健介八段(45)と全員が勝利を挙げる活躍ぶり。大学のシンボルマークにも記されている稲穂が、3人の棋士によって大きく揺れた。
大会開幕前には、3人で母校を訪れ校歌も歌ってきた。対局への気持ちを高め、チームワークも強くして対局に臨むと、広瀬八段が「同じ早稲田出身の血が流れている。そういう雰囲気」と語るように、戦うごとに結束力を強くして勝ち進んだ。
開幕局を丸山九段が落としたものの、そこから勝利への道筋を見つけたのはリーダー広瀬八段だった。第2局、付き合いも長い佐藤天彦九段(33)とのリーダー対決は、先手番から角換わりの将棋に。「一時は敗色濃厚という局面」と振り返るほど追い詰められたが、そこから粘って逆転。チームに今大会初勝利を持ち帰った。
続く第3局では、北浜八段が熟練のテクニックで若手を封じた。終盤に千日手濃厚にも見える局面が訪れたが、相手の古賀悠聖四段(20)が強引に打開を選択したところを確実に咎め、終盤は加速をつけて勝利。「本当に幸運でした」と謙遜したが、キャリアの差を活かした白星だった。
後輩2人の勝利に、丸山九段も刺激を受けないわけがない。第4局に広瀬八段が勝利し、チーム3連勝で迎えた第5局は、後手番から伝家の宝刀・一手損角換わりを選択。迷いのない指し手の連続で、超早指し戦ながらしっかり時間に余裕を作ると、駒損承知で鋭い踏み込みからリードを奪うと、解説していた金井恒太六段(35)も「さすがの切れ味。丸山九段の恐ろしさというのが見られた一局」と驚いた。
結果、広瀬八段と北浜八段は2連勝、丸山九段は1勝2敗の成績で、緊張感ある第1試合を快勝で切り抜けた。広瀬八段は「チームの士気としてはいい感じ。(個人は)内容は悪手もたくさん指していますが、結果を出せれているのは自信になる」と手応えを感じると、丸山九段は「想像以上に戦い方が難しい。奥の深いルールですね」と分析。さらに北浜八段は「非常に時間がなくなってしまって慌ててばかり。チームの重みも含めて練習とは違う感じを受けました」と超早指しかつ団体戦のプレッシャーをもろに感じた様子だったが、それぞれしっかりと結果を持ち帰った。
プロ将棋界には様々な学歴の持ち主がいるが、同じ大学のOBだけで集まり、さらには1つの目標を目指して戦うことはなかった。久々に「早稲田」の名のもとに集った広瀬八段、丸山九段、北浜八段。この強さは本物だ。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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