麻雀の神に愛されし男だが、今年も優勝シャーレには手が届かなかった。渋谷ABEMASのリーダーにして、麻雀団体RMUの代表でもある多井隆晴。「最速最強」という異名とともに、数え切れないほどの個人タイトルを獲得してきたが、首位でファイナルシリーズに進出したMリーグ・2020シーズンも、過去2シーズンと同じく3位で終了。ファイナルの最終盤には、藤田晋監督と3人の仲間の思いを背負って最終戦まで5試合連続出場までしたが、悲願の優勝は叶わず、ロッカールームで号泣した。「Mリーグだけは3年目でも優勝を逃して。どうしたら優勝できるんだろう」。麻雀界最強雀士に、また来期も大きな目標ができた。

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 自団体だけでなく、各種プロ団体のタイトル戦でも優勝し、国内最大規模のプロアマ大会「麻雀最強戦」でも、昨期ついに初優勝。名実ともに頂点に立っているのが多井だ。「麻雀プロを続けて長いんですけど、結構自分は運がいいと思っていました。麻雀の勉強、研究を一生懸命やっていたら、誰かが僕を見つけてくれるだろうと信じて、ずっとやってきました」。放送対局が飛躍的に増えた時期と重なり、5年、10年と長い年月をかけて熟成させてきた麻雀で、一気に多井の名を広く知らしめることになる。蓄積した雀力によって結果も伴い、今では多くのファンにも支持され、業界外からもいろいろと声がかかるようになった。

 その多井が、リーグが創設された2018シーズンから優勝のみを目標に据えてきたのがMリーグ。2018シーズンは個人MVPにも輝き、チームはリーグ3位。2019シーズンも活躍し、2年連続でリーグ3位に入り、3年目の集大成として藤田監督からも明確に優勝を望まれていた。レギュラーシーズン首位通過、セミファイナルシリーズ首位通過。シーズン途中に「完全優勝を目指す」と宣言したとおりの結果で、あとはファイナルでの着地を迎えるだけだったが、ここから失速。2位スタートのKADOKAWAサクラナイツに抜かれただけでなく、4位スタートだったEX風林火山に優勝をさらわれる結果に、最終戦の後にはひと目もはばからず大泣きした。

 自分のことをヒーローとは呼ばない。むしろヒール側、ラスボスだと言う。憎たらしいほどの強さ、他を寄せつけない強さ。時にアンチから心ない言葉が飛んでくることもあるが、全ては結果でねじ伏せる。そのたくましさを認めるライバルMリーガーも数多い。そんな多井も白鳥翔(連盟)、松本吉弘(協会)、日向藍子(最高位戦)という3人の後輩には目をかける。いずれ自分の後を継いで、麻雀界を盛り上げる者たちだと認め「(3人とも)まだ足りない部分がある。全員が僕ぐらい強くなったら、どんな不運も跳ね返せる」と、あえて発破もかける。自分が最強であるうちに、その姿、強さを引き継ぎたい。そんな思いが滲み出る。

 藤田監督からは、こんな言葉がかけられた。「麻雀の勉強はいつ役に立つかわからないので、相当なモチベーションがないと続けられない。多井さんには(Mリーグ優勝という)モチベーションができたことは収穫だったと思います」。個人タイトルを総なめし、Mリーグでも優勝を果たしたら、次の目標を設定するのはなかなか難しい。どこまで本気かわからないが、多井はファイナルに入り麻雀プロ人生をかけて戦うといった趣旨の発言も多かった。

 記者会見の最後に多井は、こう言った。「我々のチームが一番伸びしろがあります。3年五、5年後、見ていてください。今日の涙があったから今があるんだよと言います」。そして去り際に「引退しません!」と叫んだ。悔し涙は流し切った。今度は勝って泣き、笑う。

(ABEMA/麻雀チャンネルより)

Mリーグ・ファイナルの激闘
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