絶対的エースが抜けても、その強さは揺るがない。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Dリーグ第2試合、チーム永瀬とチーム天彦の対戦が6月19日に放送され、チーム永瀬がスコア5-1で快勝した。この結果、2連敗したチーム天彦の予選敗退が決まると同時に、チーム永瀬の予選通過も決定。昨年の覇者が連覇に向けて好スタートを切った。
リーダー永瀬拓矢王座(28)を筆頭に昨年も活躍した増田康宏六段(23)、新戦力にベテラン屋敷伸之九段(49)を加えたチーム永瀬。昨年から藤井聡太王位・棋聖(18)という絶大な戦力が抜け、連覇がかかる永瀬王座は「まずは予選突破を」という目標を立てていたが、やはりそれは控えめに言ったものだった。
リーダー自ら第1局に登場すると長く世話になってきた先輩・鈴木大介九段(46)に対して「棋士になってから、かなり将棋を教わっていただいたことがありますので、その記憶が蘇って血がたぎってくる」と闘志を燃やすと、110手で快勝。「最後まで気を抜かずに指していました」と、全く抜かりなく今大会初白星をチームに持ち帰った。
第2局こそ同大会初出場の屋敷九段が星を落としたものの、ここからが新生チーム永瀬の本領発揮。増田六段が新鋭・古賀悠聖四段(20)に際どいながらも118手で粘り勝ち。白星を先行させると、第4局には永瀬王座が相手のリーダー佐藤天彦九段(33)と対決。197手に及ぶ大熱戦を制し、さらにチームの勝利を近づけた。
こうなってくればベテラン屋敷九段のエンジンにも、いよいよ火が入る。第5局で若手時代に数え切れないほど指してきた鈴木九段に142手で勝利し、超早指し戦で初勝利。「まずは1勝できてホッとしている」と、ようやくリラックスした本来の笑顔も取り戻した。第6局では、増田六段が昨年大会で3局指した佐藤九段に187手の長手数ながら勝利。この一局がチームを勝利と予選突破へと導いた。
チーム初戦の勝利と予選突破を決めた永瀬王座は「本当に厳しい勝負でしたので、予選通過という結果が出てよかったです。(個人2勝は)フィッシャーが苦手ながら、精一杯頑張っているのでは」と自己評価。「屋敷九段、増田六段にも勝っていただいて、こういう結果になり感謝しています」と微笑んだ。ただその表情は言葉以上の余裕も感じさせた。
既に本戦出場は決まったものの、次戦の相手は昨年、大苦戦を強いられた広瀬章人八段(34)率いるチーム広瀬。永瀬・藤井・増田の3人で戦い、あわや予選敗退かと冷や汗をかくほど追い詰められた記憶がある。ここできっちり借りを返し、本戦への弾みをつける。勝負に徹する永瀬王座とその仲間たちであれば、きっとそんな思いで盤に向かっていく。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)