将棋のヒューリック杯棋聖戦五番勝負の第3局が7月3日に行われ、挑戦者の渡辺明名人(棋王、王将、37)が藤井聡太棋聖(王位、18)に敗れ、タイトル奪取はならなかった。同シリーズを含めて、タイトル戦には39回の出場を誇るが、一度も勝てずにストレートで負けたのは今回が初。現在最多の三冠保持者ながら、対藤井戦では1勝8敗と大きく差を広げられた。
【動画】ヒューリック杯棋聖戦 五番勝負 第三局 藤井聡太棋聖 対 渡辺明名人
昨期、この五番勝負で1勝3敗と敗れ失冠、今期がリターンマッチだった渡辺名人だったが、結果はまさかの3連敗となった。開幕前には「将棋ファンの期待に応えるような将棋を指さないといけない」と意気込みを語っていたが、第1局は中盤からリードを奪われいいところなく敗戦。第2局は終盤まで有利に進めていたかと見られたが、最終盤に逆転を許す悔しい敗戦。気持ちを切り替えて臨んだ第3局は、矢倉の出だしからじっくりとした中盤を経由。一時は優勢になったと見られたが、最終盤では両者持ち時間を使い果たしての1分将棋の最中、わずかなところで形勢を損ねると、再逆転はならず投了した。
対局後、渡辺名人は「いろいろありましたが、終盤はわからなかったですね。具体的に手がなかったんで、そのあたりがどうだったか。誘われて飛車を切った感じになってしまいました」と語ると、初のストレート負けには「別にスコアはどれも一緒だと思います。別にフルセットだろうか、どうだろうが」と淡々としていた。
三冠を保持し、序列1位に君臨する渡辺名人だが、最年少記録を次々と生み出す天才棋士に対して、危機感も強い。自身も中学生で棋士となり、長く活躍してきたが最近では37歳という年齢について触れることも多く、これまで以上に第一線で活躍することの厳しさを感じている。20歳近く下の藤井棋聖に喫した3連敗は、歴代4位のタイトル29期を誇る名棋士にも、強く突き刺さるものがありそうだ。両者が次回対戦する際、渡辺名人がどこまで反撃に出るかで、今後の将棋界の行く先も見えてくる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)