今売り出し中の若手が、“現役最強”棋士相手に激闘の連続だ。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Eリーグ第3試合、チーム渡辺とエントリーチームの対戦が7月17日に放送された。エントリーチームの梶浦宏孝七段(26)は3局戦い1勝2敗。ただ1勝は同世代で活躍する順位戦B級1組の近藤誠也七段(24)からもぎ取り、渡辺明名人(棋王、王将、37)には連敗したものの、いずれも白熱した激闘に。チームメイトからも「負けて強しですね」と声が出るほど近年の活躍ぶりを象徴するような戦いで、ファンからの評価も急上昇した。
梶浦七段は、竜王戦ランキング戦で史上4人目の3期連続優勝を果たし、先日行われた決勝トーナメントの準々決勝では、レジェンド羽生善治九段(50)からも初勝利を挙げた期待の若手注目株。何事にも真面目な性格が将棋の世界で花開き、様々な戦型の研究も行き届いていると棋士の間でも評判だ。予選Eリーグ第1試合では、タイトル経験もある順位戦A級棋士・斎藤慎太郎八段(28)に勝利したことで、その実力がさらに認められていた。
デビュー6年目、順位戦ではC級2組の梶浦七段にとって、渡辺名人と戦えるこの場所は夢舞台だ。第3局に登場、初手合となる直前には「全力で指して、いい内容にしたいです」と謙虚に語ると、相矢倉の出だしから行き届いた研究の成果を発揮。積極的に前に出て一時はリードを奪ったものの、終盤でタイトル29期の実績を誇るトップ棋士の勝負強さでひっくり返され惜敗した。「終盤力の差が出てしまった気がします」と悔しさを滲ませたが、チームメイトの小林裕士七段(44)、藤森哲也五段(34)からは「むちゃくちゃいい将棋」「すごい迫力だった」と絶賛の嵐。視聴者からも「すごい将棋だったわ」「負けたけどこれは良い対局」「カジくんもっと見たい」といった声が相次いだ。
第5局で付き合いの長い近藤七段に快勝し、勢いをつけて向かった第6局。渡辺名人との再戦では、さらに燃えた。「もう一局教われるのはうれしいです」と、先手番から角換わり腰掛け銀で勝負を挑むと、この一局も序盤は梶浦七段ペース。さらに中盤に入っても優勢が続き、大金星が見えるところまで来ていた。ただ、ここであっさり負けないのが“現役最強”と呼ばれる渡辺名人。両チームの控室から一斉に驚きの声があがる△3四銀打という勝負手を放ち、これで逆転。梶浦七段にとっては、またも悔しい敗戦となった。
終局後には「終盤の強さが結構大きな差なのかなと。自分もたくさん指して、すごく勉強になりました」と、敗戦の中にも成長のきっかけをつかんだ。この様子には藤森五段から「梶浦君、負けて強しでしたね」という言葉も出たように、ファンからはまたも「カジーいい将棋みせてくれてありがとう」「梶浦さんは負けて評価が上がった」「名人相手によくここまでやった」というコメントが大量に寄せられていた。
超早指しという特殊なルールではあるが、渡辺名人に対して互角か、それ以上の勝負をしてみせた梶浦七段。この名前、今後もさらにいろいろな場面で聞くことになるだろう。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)