藤井聡太王位、AIは低評価でも指す勝負術 相手を“断崖絶壁”へと誘う一手に解説棋士「人間なら一手で奈落の底」
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 将棋の観戦には欠かせないものになってきた将棋ソフト(AI)による評価。ただ、見た目の数字よりも、棋士たちは「簡単ではない」という言葉を繰り返す。時に「AI超え」という言葉でも注目された藤井聡太王位(棋聖、19)が7月21、22日に行われた王位戦七番勝負第3局で、豊島将之竜王(叡王、31)を相手に、解説の棋士から疑問の声があがる手を指した。ところが、数手後に優勢になったのは藤井王位。一体、何が起きたのか。タイトル経験もあり、名人挑戦も果たした斎藤慎太郎八段(28)は、AIで示される数字と、その裏で棋士が感じている恐ろしさについて「一手で奈落の底」という表現をした。

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 藤井王位の“疑問手”は、対局の2日目、豊島竜王の封じ手が明かされた直後からだった。中継していたABEMAの大平武洋六段(44)が「それだけはないと思った」という応手の連続。実際、ABEMAの「SHOGI AI」による勝率表示は、豊島竜王の有利、さらには優勢を示す数字まで傾いた。ところが優勢になったはずの豊島竜王は考え込んだ。想定外の手を指されたから、ということもある。ただ、この局面について斎藤八段の解説はこうだ。

 斎藤八段 (豊島竜王は)かなりの長考だったと思います。長考するということは攻めて行くか、一手(守りを)入れておくか。検討をしていましたが(攻めるのは)細い糸を辿るようなものでした。かなり細い筋です。ルートでは優勢になったとしても、それを通り切れたかどうかは、別の問題。豊島さんも、どちらも有力と見たけれど、自分の指しやすい、読み筋通り指せる方を選んだんじゃないでしょうか。

 AIは、その局面ごとに最善手を導き出す。その先で間違えることなど、もちろん考えない。あくまで「最善を指し続けられれば」という大前提があり、そこには人間の恐怖も、ミスも加味されない。だからこそ「人間には指しづらい手」が推奨されることがある。

 斎藤八段 (勝率で)60%とか65%でも、一手で奈落の底ということがあります。崖を歩く道を選ぶのか、舗装されている道をゆっくり歩いていくのか。そういう選択です。(人間として)将棋の最善を選ぶのか、勝つためのルートを選ぶのか、今の現代将棋にはあるんじゃないかと。そのあたりの揺れ動きもあると思えば、見ている方もより楽しめると思います。

 この説明にはファンからも「ナビで誘導される道が走りづらいのと一緒かな」「ナビの最短経路、とんでもない道を誘導するよね」「AIと将棋の達人、初めて分かった気がします」など、カーナビに例えたり、AIと人間との違いに納得したりと、様々な声が寄せられた。また実際、対局に敗れた豊島竜王は「嫌な順が多かったです」と語っており、藤井王位に誘われた手順が、いかに指しにくいものだったかを証明することにもなった。

 さほど変わりがないならば、人間としては安全に前に進みたい。ただ、AIが示す数字はアクセルを踏んで勝利への最短距離を進めという。この葛藤が、将棋における人間同士の対局の醍醐味でもある。今後、藤井王位が指す手の評価は、その直後だけでなく相手が指してから下すという、新たな認識が生まれた。

(ABEMA/将棋チャンネルより)

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