K-1・Krushの醍醐味はKOであり、 KOを狙う競技である。そのことをあらためて感じさせるトーナメントだった。
7月24日のKrush後楽園ホール大会、クルーザー級の新チャンピオンを決めるトーナメントは、リザーブマッチを含め4試合中3試合がKOという期待通りの内容となった。
優勝したのはムエタイの名門ウィラサクレック・フェアテックス所属のサッタリ・ウィラサクレック。1回戦、RUIを1ラウンドで倒すと決勝の谷川聖哉戦も1ラウンドKO。2試合で4度のダウンを奪い、またK-1・Krushでの4試合をすべてKOで勝っている。圧巻としか言いようがない。
重量級でKOを連発したから、パワーファイターというイメージを持たれがちかもしれない。確かにパンチのパワーは凄まじいものがある。ただ、サッタリの強みはそれだけではない。
攻撃のスピードは中量級並み。決勝で闘った谷川によると「急所をしっかり狙ってきている」。サッタリ自身は「試合のたびに違う自分を出そうとしている。相手に応じたファイトスタイルで、どうすれば勝てるかを考えて練習しています」と語った。実際、決勝のフィニッシュになったのは鮮やかなカウンターのフック。谷川がローキックで主導権を握りかけ、前に出てきたところでの一撃だった。
パワーだけではない、勢いだけでもない、地力あってのベルト奪取。母国イランではアマチュアで実績をあげ、プロとしての活躍を夢見て日本へやってきた。
「日本のみんなも日本という国も大好き。ずっと日本に住んでいたい」
日本に来て、夢は叶えるべき目標に変わったとサッタリ。Krushのベルトを巻いた今、新しい目標もある。もちろんK-1のベルトだ。現在のK-1クルーザー級王者はシナ・カリミアン。サッタリと同じイラン出身の選手だ。しかもカリミアンは、もともとウィラサクレック・フェアテックスに所属していた。サッタリにとっては日本で活躍する先輩であり、またジムとして見れば“因縁”の相手でもある。
サッタリは「誰がK-1のベルトを持っていたとしても、その相手と闘う」とコメント。特に意識はしていないようだが、果たしてどうなるか。その凄まじい倒しっぷりを見れば、K-1王座挑戦はそう遠くないと誰もが確信できるだろう。
文/橋本宗洋