東京オリンピックが開幕し、17日間にわたる熱戦が始まった。選手の活躍に注目が集まる中、その裏で“引退”を決断するアスリートもいる。
24日、重量挙げ女子49キロ級の三宅宏実選手が同大会で記録なしに終わり、現役引退を改めて表明した。三宅選手は過去の大会で、2012年ロンドン五輪では銀メダル、2016年リオ五輪では銅メダルを獲得。以前より東京オリンピックを最後に引退する旨を宣言していた。
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現役最後をどのように迎えるか。アスリートの決断の裏には、さまざまな葛藤が存在する。ラグビー7人制の日本代表チームで活躍し、ミスターセブンズと呼ばれた桑水流裕策氏もまた、大会の開催延期や所属チームの解散で引退を決意した一人だ。
桑水流氏は「自国開催のオリンピックっていうのは特別なもの。本当にゴールが目の前まで見えていたのが、また見えないところに行ってしまった。目標を切り替えることができなかった」という。
「引退決断の一番大きな理由は、チームの廃部だ。私自身はもう1シーズンやりたかった。別チームへの移籍も考えたが、年齢もあって移籍してまでやる熱量がなかった」
5月に引退して2カ月ほど経った今、どのような気持ちなのだろうか。桑水流氏は「振り返ると、本当に充実した競技人生だったと思う」と回答。「オリンピックはあくまで通過点。そこがゴールではないと考えている」と自身の思いを語った。
スポーツライター・編集者の瀬川泰祐氏は「どんなアスリートでも第一線から退くとタイミングが来る」と話す。
「本人にしかわかり得ないという前提ではあるが、心身がともにピークから近い状態のまま引退するケースもあるし、コンディション維持に苦しんだり、目標を失ってしまったり、経済的な事情など、外部要因によって現役続行が難しくなるケースもある。そういったものが複合的に絡み合って、最終的にアスリート本人が決断する。アスリートそれぞれだ」
セカンドキャリアについて、前述の桑水流氏は「何のためにスポーツをするのか。何のために私はラグビーをしていたのか。現役を退いたとき、そこにどんな思いがあるか。セカンドキャリアにそれがすごく影響すると感じた」という。
「セカンドキャリアでは7人制ラグビーを国内でもっと普及させる活動をしたい。競技として全体を向上させたい。あとはラグビーに限らず、生涯にわたって楽しむスポーツがもっと日本に浸透してもいいのではないかと考えている」
■ 「現役時代から将来に投資する時間を作って」キャリア迷子にならないために
どのアスリートにも必ず訪れる引退。第二の人生を歩み始める人がいる一方、道筋が定まらない人もいる。
ソフトボール元日本代表の三科真澄氏は、北京オリンピックで金メダルを獲得するなど、世界を舞台に活躍。2009年の現役引退後、一時は指導者としての道を歩むも、ここに来てセカンドキャリアの壁にぶつかっている。
「人それぞれセカンドキャリアの歩み方は違うが、私自身は現役を退いて指導者を10年間させていただいた。母が末期がんになったことで、一度仕事を全部辞めた。去年12月に母が他界して、これから何をやっていったらいいのか、模索している。スポーツ教室や講演活動もさせていただいているが、今後この先自分に何ができるのか、どうやって生活をしていくのか。正直、今悩んでいる」
現役時代に金メダルを獲得し、指導者としての経験もあるなら引く手あまたと思いきや、三科氏によると「今ソフトボール界でゆくゆく指導者になりたい選手もたくさんいる。そういう選手を引き抜く人もいる。私に指導者のお話が今はない」という。また、今後は指導者ではなく「別の仕事にチャレンジしたい気持ちもある」と明かした。
一方、アスリートのキャリア支援を行う日本営業大学の学長・中田仁之氏は「元金メダリストだ、元Jリーガーだ、元プロ野球選手だという“看板”で仕事をもらえるほど甘い世界はない」と話す。
「実際は『ああ、そう、すごいね』で終わってしまうことが多い。僕は『過去の看板は最初に出すもんじゃない』と言っている。まず仕事でお付き合いをしていく中で、人間性を分かってもらった上で『何かスポーツをやっていたのか』と聞かれたときに『実はオリンピックに出ていた』と言う。その方が絶対にカッコいい。名刺交換のタイミングで『元オリンピック選手です』と言ったら、切り札がもったいない。一旦胸の中にしまっておく方が良い」
多くのアスリートが悩む現役引退後のセカンドキャリア。中田氏は「現役時代から少しだけ自分の将来のために“投資”する時間を作っておくといい」という。
「現役の間は現役に集中してほしい。ただ、24時間365日、競技のことだけを考えるのではなくて、1週間のうち、ほんの数時間でいいので、自分の未来のために時間を使ってほしい。本を読むであったり、ビジネスを学んだり、違う世界の人に会うなど、いろいろな方法があると思う。現役時代から少し自分の将来のために投資をしてほしい」 (『ABEMA Prime』より)
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