東京オリンピックで日本人選手たちの快挙が続いている。メダル獲得でなく、注目が集まっているのが、出場選手たちの“言葉”だ。
【映像】「批評家にならないで楽しみたい」テレ朝・大木優紀アナが東京五輪に思うこと
体操男子に出場した内村航平は、予選の鉄棒でまさかの落下。種目別の決勝に残る順位に入れず、予選落ちが決まった。競技後のインタビューでは、今大会に出られなかった選手に対して「謝罪したい」と語った。
また、競泳男子の400メートル個人メドレーでは、瀬戸大也選手が予選で敗退。200メートルバタフライの予選では、見事準決勝への切符を勝ち取った。競技後のインタビューで瀬戸選手は「ネットですごいいろんなこと言われてめっちゃむかつきますけど、戦っているのは自分。気にもしつつあまり気にしないところもあるので、そういうのも自分のパワーに変えたい」とコメント。しかし、27日に行われた準決勝では、思うようにタイムが伸びず、全体11位。無念の敗退となった。
細かなニュアンスの違いで、印象が分かれる選手たちの言葉。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は選手たちの言葉を心理学的に分析。
「選手のインタビューを見ていると『素のコメント』を引き出そうとするインタビュアーの意図が見える。視聴者としてもそれが聞きたいが、瀬戸選手がネットの声に『むかつく』と発言すると批判が相次いだ。しかし、心理学的に見ると、溜め込むことが一番よくないので、できるだけ言葉や場面を選んだとしても、思ったことは口に出したほうがいい」
その上で「国の代表として大会に出る以上当然反発は伴うだろう」とした藤井氏。藤井氏の解説にテレビ朝日・大木優紀アナウンサーは「中継や競技後にインタビューをする側も確かに選手の“素のコメント”が聞きたい」とインタビュアーの立場から言及。
「例えば、柔道など、インタビュー時点でまだ『ハァ、ハァ』と息が上がっている選手もいる。選手たちは試合に勝っても負けてもマイクを向けられる。以前、女子テニスの大坂なおみ選手の会見拒否が話題になったが、競技後の落ち着かない中、選手は本当に自分の思いをさらけ出さないといけないのか。インタビューを受ける側のメンタルの問題も考えないといけない」
否が応でも注目が集まるオリンピック選手。その中でも藤井氏は、特に「瀬戸選手が心配だ」と話す。
「昨年、瀬戸選手は私生活で世間を賑わせて、本人や家族にとってマイナスの体験をした。東京オリンピックは、本来であれば、自国開催で国民の声援が選手たちの活躍を後押しするはずだった。会場で『ワー!』と声援を浴びる中、その中の1つに批判コメントがあっても『自分は会場の中心人物で応援されている』と感じられれば、さまざまな雑音が意図せずともかき消され、自己肯定感を高く持てる。しかし、新型コロナの影響で無観客開催になった。私生活で起きたネガティブな経緯があった上で、結果がでなかった現実を突きつけられ、さらに追い打ちをかけるようにネットで厳しい声が寄せられると、精神的にも追い詰められて、自信を無くして、迷いが出てきてしまう」
「自己責任だという声はもちろん多いと思うが、精神的なコンディションが良くはないことが『むかつく』発言にもつながっていると思うので、個人的には字義通りの意味というよりは『悔しい』という意図の表れだと感じる」
ここで大木アナが「公の場に出ることで『“お利口”にならなきゃ』と思ってしまう選手もいるだろう。自分を抑制するのは選手にとってマイナスになるのか」と質問。藤井氏は「良いか悪いか別の話として、瀬戸選手はどちらかというとビッグマウス。心理学的に、そのような結果で周りを黙らせてきたタイプの人は、いろいろなことを考え始めてしまうと、能力を出せない方向に行きがちだ。オリンピックに出場するような実力ある選手は、謙虚なコメント、人柄が求められがちだが、心理学的にも素の部分を率直に出していくことが、結果につながる場合が多いだろう」と答えた。
最後に藤井氏は「その意味でいえば、競技技術の高低は一番重要としても、元々の人柄によって、向いている種目、向いていない種目というのはあるかもしれない。つまり、人々に受け入れられにくい人格や言動がある人は、スポンサーや国民のイメージが重要な競技よりは、どちらかというと実力や技術で賞金が稼げる競技のほうが、本人にとって、より自己発揮できる環境といえるのかもしれない」と付け加えた。
瀬戸選手は、男子競泳200メートル個人メドレーでは予選と準決勝を通過。萩野公介選手と共に、30日の決勝にも出場を予定している。 (『ABEMAヒルズ』より)
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