中国政府は、義務教育期間の宿題や学習塾について、新たな規制を発表した。
中国政府の発表した規制では、小学校の1、2年生は筆記式の宿題はなし、小学校3~6年生は1時間、中学生は1時間半までの間で終わる量と定められた。その分の時間をスポーツ、読書などにあてられるようにし、また、懸命に宿題をやっても終えられない生徒らも、寝る時間を削ってはいけないなどとしている。
カリキュラムは統一され、学校で勝手に授業時間を増やしたり、難易度を上げたり、先取りして進めたりすることも禁じられる。
さらに、規制は放課後の「学習塾」まで。全ての塾を非営利化し、新設を認めないとしたほか、塾に通うための費用や授業時間も制限される。
この方針に敏感に反応したのが、教育業界に関連する企業や投資家たちだ。ブルームバーグによると、オンライン教育のセクターは中国で最も高成長している分野の1つで、2024年までに4910億元(約8兆3750億円)の収入が期待されているという。新規制では、新規の株式公開や出資も禁じられることから、関連企業の株が大幅に下落する可能性もあるとしている。
中国では、「高考(ガオカオ)」と呼ばれる全国統一大学入学試験が、その後の人生を決めるとも言われていて、今年は過去最高の1078万人が受験した。過酷な競争で知られ、受験生たちはこの日のために死に物狂いで勉強。受験当日には盛大に送り出される。
今回の規制では、義務教育の期間以外は対象となっていないものの、中国では子どもの教育にかける時間や費用の負担が大きく、少子化の原因とも指摘されている。また、この規制の狙いとしては、生徒だけでなく保護者の負担を軽減する目的もあるということだ。
■若新雄純氏「宿題の学習効果、塾の“不安商売”に見直すところがあるのでは」
このニュースについて、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は、出身である福井県が“宿題大国”だとした上で、次のように話す。
「とにかく家に帰ってドリルをいっぱいやる。夏休みもワークブックみたいなのがいくつもあって、さらにプリントが何枚も、ドリルもう1回全部とか、中には教科書を丸写ししろというような年もあったりして、今でもあまり変わっていないらしい。地元の福井でも活動する中で、宿題や家庭学習のあり方を見直そうということで、“脱宿題”の取り組みをしようといろいろなところに相談に行ったが、『若新くん、それはまずい』『脱宿題なんて言ったら、脱原発と同じくらい難しいテーマなんだから』と。宿題をちゃんと家でやれる子が、勉強もできて、将来立派になれるという神話があるのだろう。『安易に脱宿題とか言ってはだめだよ。地元で仕事やりにくくなるよ』と言われたぐらいだ」
若新氏は宿題“反対派”とまでは言わないものの、同じ内容を全員画一的に、大量に押し付けるやり方は効果的ではないと指摘する。
「今までの宿題の学習効果みたいなものは、いろいろと科学的にも否定されたりしている。クラスに30人同級生がいたら、一緒の授業を受けていても理解度や今できるところ・できないところにバラつきはある。宿題は全員に画一的に出ると思うが、30人に同じ内容の家庭学習のプログラムが与えられも、同じように勉強できるわけがない。わかんない子はできない問題を何回やってもわかんないし、もうわかってる子はこなすだけになる。一番いいのは、自分がその日わかんなかった部分を自分なりに復習したり、苦手だったことをやって充実した気持ちになれるような、個別のメニューができることだが、それも難しい。全員に同じ内容をやってこいというのを大量に押し付けるのは、学習効果もあんまり意味ないし、一人ひとりの勉強に対するモチベーションも上げないと思う。これまでは、家に帰ってからも机に向かう生活習慣を身に着けさせる効果も大事にされていたらしいが、それは大量の工場労働者を輩出しようという時代の考え方なので、ちょっとずつ見直されていくべきだと思う」
また、規制が学習塾にも及ぶという点については、そもそも学習塾に不安をあおり過ぎている部分がないか見直すべきだとした。
「塾に行ったら誰でも本当に学力が上がるのかというところを、慎重に考えるべきだと思う。塾にもいろいろあって、中には本当に個別に丁寧に教えたり、その子に必要なことをちゃんと指摘・アドバイスできる先生はいると思う。学校外の学習の時間がまったく意味ないと言うつもりはないが、日本全国になぜこれだけ塾がたくさんあるかというと、そこまで優秀な先生が山ほどいるわけではなくて、学歴が大事になっていく社会の中での“不安商売”だからだと思う。学歴社会では『勉強ができなかったらどうしよう。将来うまくいかないんじゃないか』『もっと勉強させないとまずいんじゃないか』という不安が生まれる。不安を解消しようという商売はマーケットが大きくなり、広告も増える。塾に行かせないことが問題のようになってしまうと家計を圧迫しかねない。大切なのは、勉強以外の得意分野も含め、一人ひとりに合ったやり方をちゃんと見つけていくことではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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