人に危害を加える恐れがある“特定動物”、なぜ飼う? 飼い主に聞く「覚悟と責任」
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 人に危害を加える恐れがあるとして環境省が指定している動物、「特定動物」。今年5月、横浜市のアパートで飼育されていた特定動物の「アミメニシキヘビ」が脱走。近隣住民へ危害がおよぶ可能性もあり、一時は騒然となった。

【映像】「サーバルキャット」「メガネカイマン」の飼い主を直撃

 特定動物は「トラ」「クマ」「マムシ」など650種が対象だが、特定動物を飼っている人がいる。ヒョウのように大きい「サーバルキャット」も特定動物。元々、アフリカのサバンナなどに生息し、家ネコの2倍から4倍の大きさがある肉食動物だ。

 「甘噛みはある。猫も甘噛みするが、やっぱりパワーは違う。猫パンチもするが、危害が加わるという意味では、他のネコよりは全然違う」と話すのは、飼い主でYouTuberのSKYtomoさん。およそ1年前からサーバルキャットを飼っているが、重要なのが脱走対策だ。特定動物を飼うには自治体に許可を得る必要があり、飼育施設の構造や管理方法など、厳しい基準をクリアしなければならない。

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 また、YouTuberのあきとさんが飼っているのは、「メガネカイマン」という特定動物のワニ。まだ子どもサイズだが、噛み付く危険があるため革手袋をするなど、お風呂に入れるのも一苦労。あきとさんも脱走などが起きないよう、強度の強いアクリル製の水槽で飼っている。

 一方で、飼い主の不適切な飼育は珍しくなく、特定動物のペット化には疑問の声も。Twitterには「隣の家に特定動物がいるって思うと怖い」「一生狭い場所で生きていくのがいいこととは思えない」との意見もある。

 なぜ危険とされている特定動物を飼っているのか。飼い主の2人にその理由を聞いた。

■「一度は夢じゃなく現実として迎え入れてみたい」という憧れ、譲り受けるパターンも

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 サーバルキャットを書い始めた経緯について、SKYtomoさんは「もともと知っていて、いつかタイミングがあれば飼いたいと思っていたが、なかなかタイミングがなかった。去年、知り合いでサーバルキャットを飼っているオーナーからどうしても飼えなくなるという相談があり、僕に飼いたいなという気持ちがあったことも重なって、一生面倒みようかと2頭合わせて引き受けた」と説明。

 特定動物は人に危害を与える恐れがある動物だが、飼っていて問題はないのか。「ネコよりも凶暴に動くが、実際に飼ってみると賢いし人馴れもして、落ち着いて今は飼育もできているとは思う」と話す一方で、「僕と家族が見ているので大丈夫だとは思うが、特定動物は第三者に見せることができない。他の人を呼ぶことをしていないので、大丈夫だとは言い切れない」という。

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 あきとさんが「メガネカイマン」を飼い始めたのは、憧れからだ。「イヌやネコと違って、触るときには最善の注意を払わないと、ひとつの事故が大きな事故になるため注意している。メガネカイマン以外にサルもいるが、最初に迎え入れたきっかけは、『この子を迎え入れたい』と思ったサルがちょうど特定動物で、一目惚れだったこと。いろいろ特定動物について調べて、何とかして迎えたというのが始まりだ」と明かす。

 さらに、「ライオンに憧れるとかトラに憧れるというのは、いろんな方にあると思う。実際に飼える環境があるのであれば、一度は夢じゃなく現実として迎え入れてみたいという、挑戦なのかな。普通の一軒家ではできないので、都会の家ではなく、田舎で広い設備を作って飼いたいと思っている」と話した。

 憧れに近い感覚はSKYtomoさんも持っており、「サーバルキャット以外にネコが4匹いる。小さい時に、気づいた時からネコがいて、家族同様にいて当たり前の存在でもあった。ネコを飼っていくという時に、サーバルキャットも人生において一緒に過ごしてみたいというのが強くあった」と明かした。

■“特定動物”の飼い主に聞く「覚悟と責任」

 去年6月の法改正で、新たに愛玩目的等で特定動物を飼うことができなくなった。

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 どうぶつ科学コミュニケーターで動物番組の監修も行う大渕希郷氏は、「僕は特定(動物)を飼っていないが、いろいろ飼ってはいるので、飼いたいという気持ちは理解できる。しかし、特定動物は人に危害を加える恐れのある動物なので、愛玩目的というのとどうしても矛盾が出てくると思う。ヨシヨシとなでまわすばかりではなく、観賞用かもしれないが、やはり愛玩目的ということでは整合性が取れないので、妥当な判断ではないかと思っている。最後まで飼えというような通達はパンフレットの方で出ているはずだ」と話す。

 飼い主の「覚悟と責任」について、あきとさんは「脱走したりとか人を襲うっていうのは、完全に飼い主のミス。そういう事故を起こさないというのは、飼い主としての責任だと思う」と主張しているが、「もし飼い主が亡くなったりした場合には、書面にその後の特定動物の行き先(の記載)が必要。ペットショップに行ったり動物園に渡すなど、書面でいろいろな書き込みが必要。逃がしてしまうといったことはやはり責任能力だと思う」との考えを示した。

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 SKYtomoさんは、特定動物が飼えなくなった時の“行き場”について、「過去にそういった(脱走した)背景があっての法改正だったら仕方がないことだとは思うが、今回僕がサーバルキャットを受け入れた理由の一つが、前のオーナーが飼えなくなったこと。僕が新しくオーナーになったので、許可も取って申請して飼っている。法改正によって、今まで飼っている人たちが何かの理由で飼えなくなった時の譲渡先が失われているというのが、僕の中での懸念の一つ。特定動物を飼うときに保健所でいろいろと紙に記入する。それは譲渡先だったり動物園だったりだが、それが全部できなかった場合、彼らの行き先を安楽死と書く項目があって、本当にダメだった場合はそっちに行ってしまう。どうしても飼えなくなった場合の動物たちの行き場というのはしっかりしてほしいと、そこだけは願っている」と訴えた。

 特定動物を飼う上で、大渕氏は「(環境整備に関しては)日本は遅れていると言われている。海外だと動物福祉などと言われて、動物の種類ごとに心身ともにきちんと健康に飼えているかを重要視するようになっていて、日本の動物園もそういう流れになっている。ではそれをどうやって判断するのか。野生でその動物が本来行っている行動のレパートリー、遊んだり、寝たり、狩りをしたりいろいろな行動があると思うが、野生ではそういった行動がどういう時間配分で行われているかというのをきちんと研究して、それが飼育環境下でも再現されているかどうかというのを一つの判断基準にしないかといった流れがある。私もそれでしか科学的には測れないんじゃないかと思う。飼育することは本当に難しいと思うし、世界的に見ても、こういうふうに飼えば野生での生活が再現できるといったデータがそもそもない種もある。飼っている方にはそういった観点をぜひ考えてもらって、『ではこういう飼育施設を作ったらいいんじゃないか』というのは常に検討していく責任はあるのではないかと思う」と勧める。

 今後の飼育について、2人は次のように語った。

 「今後飼っていく上で一番気をつけなければいけないのは、脱走対策。人に危害を加えないように僕もかなり気をつけている。彼らに会うまでに扉は5個あるが、そこを乗り越えてたどり着く状態になっている。将来的な懸念としては、事故や災害があった時に彼らは檻の中なのかということを考えている。檻の上には移動用の檻があったり、施設の外に逃げてもいいようにすでに網を作る手前まで来ている。何か大きい災害があったとしても、とにかく脱走せずに、なおかつ彼らが無事で居られるような施設作りを今はしている」(SKYtomoさん)

 「まず逃さないことが最善だが、引越しの予定があり、動物と子どもを重視した家にして、その中でも手に負えない子にはさせないということ。特定動物は周りから危ないと言われているが、普通に人間と接していれば懐くというところを、YouTubeを通して見せていければと思っている。引っ越しは大移動にはなるが、いろいろ考えながら、勉強しながら(する予定)」(あきとさん)

(『ABEMA Prime』より)

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