高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種、そして感染力が強いとされるデルタ株への置き換えが進む中、強く叫ばれるようになった若い世代の行動変容。しかし、重症化しにくいということもあり、政治や専門家が発する危機感が届きにくいことも事実だ。
そんな中、17日の『ABEMA Prime』のスタジオに「これからの時代を担っていく若い人たちとの意見交換がしたい」と、菅総理との記者会見を終えたばかりの政府分科会の尾身茂会長が駆けつけた。
・【映像】「若い人のせいじゃない」尾身茂会長が伝えたいコロナの現実は?
■「国民に頼むのであれば、政府は自分たちも汗をかいているというスタンスを」
飲食店経営も手掛けるeスポーツ・αD代表の石田拳智さん(25)は、協力金の支給が滞っており、「インフルエンサーとしての仕事がなければ潰れていたかもしれない」と窮状を訴え、このままでは若者たちを納得させることはできないと指摘する。
「電車の数を減らしても、出勤しなければいけない人たちがいるので満員電車になる。逆に本数を増やすべきではなかったのだろうか。GoToトラベルに関する不満はかなりあったと思う。そういう失敗した政策についても語られていないと思う。“これをしてくれ”と言う割には、オリンピックのようにやると決めたこと・絶対にやりたいことは国民の意見を聞かずにやる。マスクと10万円を配る以外、あとは何をしてくれたのかが見えない」。
尾身氏は「協力金については前払いということも行っているが、政府には本当に頑張ってほしい」とコメント、その一方、「オリンピック開催もそうだと思うが、政府が具体的な政策を行うときには根拠がある。経済を回したいとか、いろんな意味で強い思いがある。だから国民に頼むのであれば自分たちが汗をかいているところを説明する、そういうところは改善する余地があると思う」とコメント。
また、石田氏に自らTwitterで発信することはできないのか?と尋ねられると、「『コロナ専門家有志の会』として発信はしているが、私自身が毎日ツイートをするということはしていない。考えてもいいかなとは思うが、数行ではなかなかうまく伝わらないと思う。やるのであれば、このように時間をとって、いろいろなことを聞く。その方が骨の髄まで染み込んでくる」と応じた。
次に、お茶の水女子大学1年・山邊鈴さん(19)が「もし尾身先生が10代や20代だったとしたら、どのぐらい従うだろうか。より強い行動制限をかけるのだとしたら、政府もこれだけやったから、あなたたちもこれくらいしてください、と言わないと絶対に動かないと思う。それこそ休業補償や満員電車対策など、自分たちも変わるので、あなたたちたちも変わって、というスタンスが見えればいい」と訴えると、
尾身氏は「1、2カ月ならともかく、1年も対面の授業がなく、友達とも会えない。私が学生だったら、非常に強い不満とストレスを持つだろう。先生に、“ふざけるな“と言いかねない」。また、「政治のリーダーが、“我々はこれだけやる。汗をかく。だから皆さんも協力してください”と。それは何も協力金だけでなく、いろいろな対策において、もっとやっていただきたい」と話した。
■「若い人のせいでは全くない。ウイルスの特徴だ」
さらに「Flags Niigata」代表の後藤寛勝さん(27)は、「僕たち若者は批判の対象というか、すごく注意される対象になっているが、緊急事態が日常になってきていると感じている」と悩みを明かす。
「お酒を飲むのも、友達に会うのも控えてきたし、マスクも頑張ってきた。でも、次に何をしたらいいんだろう?っていうのは本当に分からなくなっちゃってる。加えて、会社から出社しろと言われたら出社しないといけないし、打合せが外であったら行かないといけない。帰りに先輩に“ちょっと飲みに行こうか”と誘われたら、行っちゃったりもする。周りの人に対して、どういうスタンスを貫けばいいのかが分からず悩ましい。そして、僕は新潟に住んでいるが、やはり東京に比べれば感染が拡大していないという状況を踏まえると、これは食い止めないといけないという感覚になるし、東京から来る人を嫌悪してしまう傾向もある。“国民に選ばれた人からのメッセージだから聞く”という感覚はあまりないが、本当に理解や納得ができれば絶対に行動に移すとは思う」。
これに対し尾身氏は「批判の対象、というところは非常に重要なところだ。これは若い人のせいでは全くない。ウイルスの特徴で、活動量が多い若い人が感染しやすいということだ。当然、私も若い頃は全く気付かずに感染の伝播に関与してしまったと思う。だから批判の対象になるようなイメージはなるべく避けて欲しいと思っている」と回答。
その上で、「昨年2月、実態として若い人たちが感染に関与しているというのが北海道の雪まつりの後で分かった。接触した高齢の感染者が急に出てきて、それが症状を出さない若い人から知らず知らずのうちに感染が広がっていたということだった。このことは専門家として知らせなくちゃいけないと、ずいぶん考えた。かなり言葉を選んで、でも実態としてはわかってもらう必要があるからと提言を出したが、すぐにTwitterで“尾身は若者を批判している”と言われてしまった。これは本当に難しい」と語った。
やりとりを聞いていたジャーナリストの佐々木俊尚氏は「専門家会議がちゃんと発信していたとしても、それをメディアがどう報じるかによって齟齬が生じていることもある。例えば緊急事態宣言が出ると、カメラを向けて“若者が酒を飲んで出てきました”みたいな映像を流すわけだ」、また作家の乙武洋匡氏は「尾身先生がご自身の口から“若者は悪者じゃないよ”と仰ってくださったのがすごく嬉しい。彼らはメディアや社会から責められているように感じてしまっている。でもワクチンは高齢者優先で、手当てもしてもらえない。しかも青春も奪われていく。そういうしんどい立場でいる時に、尾身先生から“悪者じゃないよ”という言葉をいただけたのは本当に嬉しい」と涙ぐんだ。
■「ワクチンか検査をルールにするのはどうか」
尾身氏は「政府の思いの通りにいけば、9月末から10月中頃には20代の人たちにもワクチンの接種機会がやってくる。おそらく、希望すれば打てることになると思う。ただし、国民の7割が打ったとしても、医療の負荷が減ったとしても感染がゼロになったり、クラスターが起きなくなったりすることはまず絶対にない。そこで私が聞きたいのは、例えばライブハウスに行きたいというときに、ワクチンか検査のいずれかを済ませればどうぞ、ということにしたとする。もちろん、嫌だという人もいるだろう。これをどう考えるだろうか。逆に、ワクチンも検査も済んでいない人はクラブ活動も対面授業もできないとしたら、どうだろうか」と投げかけた。
石田さんは「すでに37.5℃以上の方は入室禁止みたいなルールがあるし、賛成する人も多い提案ではないか。義務化ではないが、暗黙のルールになってきそうな気がする」、後藤さんは「逆に、“ここでこういうことをしてください”、“これがOKだったら大丈夫ですよ”というルールがあった方が動きやすい」と反応。
山邊さんは「“メッセージを届けたいのに届かない”みたいに言われるが、そもそも届ける理由は、行動させたいからだ。それなのに、どう行動していいのかが分かりづらい。だからこそ何人以下だったらいいですよ、みたいな感じだったり、緊急事態宣言の間はこれを自粛すればいいとか、具体性を持たせていくことが大事だと思う」と話した。
■「コロナが明けたら、趣味の剣道を再開したい」
若者たちの言葉をメモに取りながら熱心に聞いていた尾身氏。司会進行のテレビ朝日・平石直之アナウンサーが「尾身さんが書かれた『WHOをゆく』を読むと、若者たちへのメッセージになっている。今、心が折れそうになることもあると思うが、その原動力は何なのか伺いたい」と尋ねると、
「小児まひの根絶や結核の対策に関わる中で、確かに寝不足になったり、女房に怒られたりすることはあるが、やっぱり大変だが楽しい、やりがいがある。皆さんもテレビに毎日出るのは大変だと思うが、おそらく楽しいのだろう。過去の経験を活かすのが当たり前だから、それこそ野球の選手が、球がくればバットを振るようにやっている感じだ。今、石田さんのような飲食店経営の方だけではなく、医療関係者も含め、日本人で辛くない人は誰もいない」とコメント。
「コロナが明けたら、趣味の剣道を再開したい。コロナが始まってからまったく道場に行っていない」と笑顔を見せた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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