「運転手さんの気持ちもわかる…」都内で増えるUDタクシーが“宝の持ち腐れ”に? 車椅子ユーザーが明かす“乗車無視”
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 きょう開幕する東京パラリンピック。競技会場などには整備された障害者向けの設備などが大会後も活用される“レガシー”も期待されている。都内の公共交通機関に目を向けると、鉄道の駅におけるエレベーターの設置やユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)の導入も進んでいる。

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「運転手さんの気持ちもわかる…」都内で増えるUDタクシーが“宝の持ち腐れ”に? 車椅子ユーザーが明かす“乗車無視”
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 しかし障害平等研修ファシリテーターで車椅子ユーザーの石川明代氏は「インフラ整備はすごく進んでいるけれど、じゃあそれを使いこなせているのかなっていうところは、まだまだ進んでないところが多いのかなというふうに思う」と指摘する。

 「私は4年くらい前から車椅子に乗っているが、当時は街を走っているだけで“邪魔だ”と言って蹴飛ばされたりすることもあった。しかし人々の態度はすごく優しくなってきた。やはりテレビなどで障害者やLGBTなど、いわゆるマイノリティといわれる人たちの話題が出てくるようになったということが変わるきっかけになっているじゃないかなと思っている。ただ、例えば電車に乗るまでに30、40分待たなきゃいけないようなことがあったり、UDタクシーの運転手さんと目が合ったと思っても、そのまま通り過ぎられてしまうということがあったり。

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 実は車椅子を使い出してから、今まで一度も停まってもらえたことがない。今日もパラリンピックの聖火ランナーとして走り終えた後、この番組に出るので早く帰ろうと思ってUDタクシーに向かって手を上げたが、なかなか停まってもらえなかった。ウインカーがチカチカしたので、“止まってくれる”と思っても、“あ、車椅子に乗ってんじゃん”という感じで素通りされた。“車椅子は乗せないよ”と“乗車拒否”されたこともあるが、それよりもむしろこういう“乗車無視”が多い。やはりトレーニングを受けていないということ、トレーニングを受けていたとしても、スロープを出すまでに15~30分ぐらいかかってしまうことがある。それなら、その時間は流していた方がお金になるかもしれないと思ってしまうこともあるだろう」。

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 UDタクシーに関しては、乗降時に使用するスロープを設置できる場所が少ないという問題もあるようだ。

 「タクシーの乗車拒否の問題について、トヨタがスロープを出しやすく改善してくださったりしたが、やはり街中に出せる場所が整っていないということもある。UDタクシー用の乗り場のある駅もあるが、そこまでわざわざ行くとなると、それこそタクシーに乗る意味もない。一方、道路では後続車もどんどん来るわけだし、運転手さんが乗車拒否したくなる気持ちも分かる。その意味では、UDタクシーという車体が“宝の持ち腐れ”になっていると思う。ベビーカーも乗車拒否に遭っているということなので、これは障害者だけの問題ではないと思う。実際に乗れない人がいるんだよ、ということをみんなに広く知ってもらって、とにかく街づくりに活かしてほしい」。

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 ライターの中川淳一郎氏は「私は2018年、乙武洋匡さんと一緒に京都旅行をした。安易な気持ちで、タクシーで移動すればいいですよね?と言ったら、彼はニヤっと笑って“結構難しいっすよ、むしろ地下鉄がいいですよ”と言った。実際、UDタクシーの運転手さんに、“トレーニングを受けていないから”と、3台続けて拒否された。そして4台目の運転手さんが“本当に申し訳ない。うちの会社に1人だけトレーニングを受けている者がいるから彼を呼びます”と言ってくれて、やっと乗れた。結局、40分かかった。現状はそういうことだ」とコメント。

 ジャーナリストの堀潤氏は「2016年リオのパラリンピックの取材に行ったが、ボランティアの方だけではなく、市民のみなさんが当たり前のように“一緒に乗ろうぜ”と言っていたり、バスもリフトで車椅子を上げるようなものが走ったりしていた。タクシーに関しても、後ろに乗れない車種の場合、他の車両がすぐに来て一緒に積んでいた。そういうところを見て、市民社会の成熟度が違うなと思った。今回、東京もバリアフリーだとか多様性だと旗を振っているが、やっぱりまだまだ追いついていない部分がある。オリンピックの盛り上がりに比べるとパラリンピックは取材者も少ないし、ここから挽回していかなければならない」と指摘した。

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 障害者にも優しいユニバーサルデザインのまちづくりの取り組みとしては、建築都市計画家の重松健氏が首都高速中央環状線などを緑化し、歩行者中心の公共空間にする「東京G-LINEプロジェクト」構想を提案している。銀座の上を通る東京高速道路、通称KK線。首都高、都心環状線に接続する全長およそ2kmの自動車道について東京都も検討を始めており、小池都知事も「ここを緑にして歩けるような“車から人を中心”とした新しい街の在り方、存在、それを象徴するようなかたちになれば」と述べている。

 重松氏は「今までの移動がAからBまで最短でどう行けるかという話だったところを、移動自体を楽しんだり人とのコミュニーションの場にしていったり、自分が自分らしくいられる時間としてその移動がある、という状態を作っていくのがこのG-LINEだ」と話す。

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 石川氏も「すごくいいと思う。高速道路ということは車椅子とかでも走りやすいはずだ。公園やバーベキュー場に行こうと言っても、車椅子だと難があって行き辛いことも多い。ここだったら安心して行けるなと思っているので、すごく期待している」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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